「今の年収を下げたくない」。転職の相談は、前向きな挑戦だけから始まるわけではありません。IT企業で法人営業を担っていたAさんの場合、現職の評価制度が改定され年収が大きく下がる見込みとなったことがきっかけでした。加えて、同じ商材を同じ顧客に提案し続ける日々に、成長の頭打ち感も感じていました。
最初のご希望は明確でした。「制度が安定した大手SaaS企業で、今の年収水準を維持したい」。担当したリメディの吉田 将貴は、その希望を否定せず、大手上場企業を比較の基準に据えました。そのうえで応募リストに1社だけ、Aさんが現職で深く関わってきたセキュリティ領域の成長企業を加えています。
最終的にAさんが入社を決めたのは、その1社でした。「条件を守るための転職」は、「自分の経験を活かして挑戦する転職」に変わりました。
| 転職前 | 当初の希望 | 決定した転職先 | |
| 企業・業界 | IT企業(情シス向け管理・セキュリティ関連) | 大手上場のSaaS企業 | セキュリティ領域のSaaS企業(成長フェーズ) |
| 役割 | 法人営業(既存顧客への深耕提案) | 安定した組織での営業職 | エンタープライズ営業(新規開拓・深耕) |
| 判断の軸 | 制度改定による年収ダウンへの不安 | 年収維持と組織の安定性 | 経験が活き、納得して活躍できる環境 |
出所:リメディの支援記録をもとに編集部作成。本人特定を防ぐため情報を一般化。
※本記事は候補者本人への公開用インタビューではありません。リメディに残る支援記録をもとに、個人が特定されないよう編集部で再構成しています。社名・時期・属性・経歴・数値の一部は一般化しています。
この記事が参考となる方
- 制度改定や事業方針の変更で、待遇に不安が出てきた
- 転職の軸が「安定」に偏り、大手企業の求人ばかり見ている
- 大手企業とスタートアップを、どう比べればよいか分からない
- 気になる企業はあるが、求められる要件や年収の実態が見えず動けない
- 自分で検索できる範囲だけで応募先を決めてしまっている
まずは希望どおり、大手を比較の基準にした
初回面談でAさんが挙げた条件は、年収水準の維持、安定した組織基盤、過度な残業がない環境の3つでした。関心はSaaS領域にあり、具体的な社名も挙がっていました。
吉田はこの希望をそのまま受け止め、大手上場SaaS企業を比較の基準に設定しました。希望を先に固定したのは、後から出てくる選択肢を「良い・悪い」ではなく「同じ物差しで比べられる状態」にするためです。そのうえで、Aさんの強みがそのまま活きるセキュリティ領域の成長企業も、選択肢として提示しました。
志望度が高い企業ほど、応募前に実態を伝える
Aさんが強い関心を寄せていた企業のうち1社は、語学力によって提示年収が大きく変わる実態がありました。
吉田は応募を促す前に、入社後にスキルを伸ばす道はあるものの、初期の提示年収は希望に届かない可能性があることを率直に共有しました。選考の途中でギャップに気づいて悩むことを防ぎ、正しい情報のうえで応募を判断してもらうためです。
入社希望時期から逆算して、やることを並べた
活動を本格化させる段階で、まず入社希望時期をすり合わせました。そこから逆算し、職務経歴書のブラッシュアップ、応募手続き、面接日程の調整を計画に落としています。
条件面で迷いが出たときも、判断軸を具体的に示しました。
- 年収の伸びしろを重視するなら、成長企業
- 福利厚生や制度の充実度を重視するなら、大手企業
迷いを「どちらが良いか」で止めず、「何を優先するか」に置き換えることで、活動が停滞せずに進みました。
応募リストに、経験が重なる成長企業を1社加えた
応募先を確定する面談では、大手上場SaaS企業を主軸に据えつつ、セキュリティ領域のスタートアップを1社追加しました。
求人を紹介する際は、企業名だけで比べないよう、インサイドセールス、エンタープライズ営業、パートナー営業といった役割の違いを明確にしました。入社後のミッションや担う業務内容でも比較できるように整理したのは、「どの会社か」より「何を任されるか」で納得感が決まるからです。
面接で問われたのは、経験と価値観の一致
追加したスタートアップの選考では、職務経歴の確認にとどまらず、これまでの意思決定の背景、困難をどう乗り越えたか、自分の強みと課題をどう捉えているかが深く問われました。実践的な模擬商談の選考もあり、その場で高い評価を得て通過しています。
Aさんは面接ごとに所感と気づきを吉田と共有しながら選考を重ね、最終面接では代表取締役から、これまでの歩みと価値観に強い共感を得ました。
大手ではなく、追加した1社を選んだ決め手
並行して誰もが知る大手SaaS企業の選考も進んでいました。それでもAさんが承諾を決めたのは、比較対象として加えたスタートアップでした。
決め手は3つです。選考を通じて実感した社風と社員の人柄、現職で培った知見をそのまま発揮できるイメージが描けたこと、そして待遇や就業環境にも十分納得できる条件が提示されたことでした。年収を守るために始まった転職活動が、最後は自ら選び取った挑戦になりました。
吉田の支援内容
- 希望条件を否定せず、大手企業を比較の基準として設定する
- 本人の経験が最も評価される領域の企業を、選択肢として1社加える
- 志望度が高い企業ほど、年収の実態やリスクを応募前に共有する
- 入社希望時期から逆算し、書類・応募・日程を計画に落とす
- 「伸びしろ重視か、制度重視か」など、迷ったときの判断軸を提示する
- 企業名ではなく、役割とミッションの違いで求人を比較できるよう整理する
- 面接ごとに所感を振り返り、次の選考に反映する
条件を守りたいときこそ、比べ方を変える
制度改定や環境の変化に直面すると、転職の軸は「今の条件を失わないこと」に偏り、知名度のある大手企業ばかりに目が向きます。それ自体は自然なことです。
ただ、守りたい条件を本当に満たせるかは、自分の経験が市場のどの領域で最も高く評価されるかを知らないと判断できません。大切なのは、大手か成長企業かを決めることではなく、その両方をフラットに比べられる状態をつくることです。
応募リストをつくるとき、そこに自分の可能性を広げる選択肢が1社でも入っているか。ぜひ確認してみてください。判断に迷う段階からのご相談でも構いません。
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