
監修者
リメディ株式会社 ヘッドハンター
飯田 貞大 | IIDA Sadahiro
早稲田大学を卒業後、三菱UFJ銀行に新卒入社。4年間の勤務期間でベンチャーから上場企業まで500社以上の法人を担当。また、オーナー社長の相続、事業承継提案や個人の資産形成提案等にも従事。その後、2020年4月にプルデンシャル生命保険に転職。2年半営業として社内表彰を受賞する等活躍。その後マネージャーに昇格し、新規の採用と育成に従事する中で、200名を超える転職相談を実施。現在は自身のキャリアチェンジの経験も踏まえ、ハイキャリア層への転職サポートを行う。
2026年8月時点の公式採用情報を比べると、M&A仲介の売り手担当はオーナーの意思と会社情報を案件に変え、買い手担当は成長戦略を候補探索と社内検討に変える役割です。両者とも、交渉が始まれば相手側の事情を理解し、専門家と連携しながら成約まで進めます。
ただし、この分け方は全社共通ではありません。譲渡側と譲受側を別部署にする会社があれば、一人のアドバイザーが両方を担う会社もあります。さらに、同じ会社内で一気通貫の職種と買い手探索の専門職が併存する例もあるので、応募先は会社名だけでなく募集ポジションの担当工程まで見て選ぶ必要があります。
M&A仲介の売り手担当と買い手担当の違い
最も大きな違いは、最初に解く問いです。譲渡側は「オーナーは会社の将来をどうしたいか」から始め、譲受側は「買収でどの事業課題を解くか」を候補条件にします。
| 比較軸 | 譲渡企業担当 | 譲受企業担当 |
|---|---|---|
| 主な顧客 | 会社の譲渡を考えるオーナー・株主 | 買収による成長を考える経営者・経営企画担当者 |
| 最初に聞くこと | 譲渡理由、守りたい条件、後継者、従業員への思い | 成長戦略、対象業界、地域、投資規模、買収後の運営方針 |
| 主な情報入力 | 会社の財務・事業・組織情報とオーナーの意向 | 買収目的、優先条件、社内稟議に必要な論点 |
| 主な成果物 | 企業概要書、企業価値評価、希望条件の整理 | 候補リスト、打診、想定される統合効果の提案、質疑応答 |
| 社内連携 | 譲受側担当と専門家へ、企業情報と譲渡条件を正確に渡す | 譲渡側担当から受けた情報を、買収戦略と検討手順に結び付ける |
| 注意するリスク | オーナーの希望と企業価値評価の差、開示情報の精度 | 買収条件の広さ、社内決裁者の多さ、候補先との優先順位のずれ |
表の差が出るのは、価格交渉の局面よりも前です。譲渡側が検討できる案件情報を作れなければ譲受候補は判断できず、譲受側が買収戦略を具体化できなければ良い案件も社内で前に進みません。両者は案件化の段階から相手の仕事を見越して動き、成約前には同じ交渉へ合流します。
案件の6工程で見ると、主担当の違いが分かる
譲渡側と譲受側は、案件の途中で一度だけ引き継ぐ関係ではありません。相談、資料化、候補探索、経営者面談、条件調整、契約の各工程で、相手が次に判断できる情報を渡します。どちらに応募するか迷う場合は、工程ごとの顧客と成果物を見てください。
| 工程 | 譲渡企業担当 | 譲受企業担当 | 両者の接点 |
|---|---|---|---|
| 1. 初期相談 | 譲渡理由、希望時期、残したい条件を聞く | 買収目的、対象領域、投資方針を聞く | 双方の前提が案件として接続するかを見る |
| 2. 情報整理 | 財務・事業・組織を調べ、企業概要書を作る | 買収基準と候補選定の優先順位を作る | 開示できる情報と検討に必要な情報を合わせる |
| 3. 候補探索 | オーナーが受け入れられる候補条件を確認する | 候補を選び、匿名段階から関心を確かめる | 実名開示へ進める候補と順番を合意する |
| 4. 経営者面談 | 譲渡後の希望と懸念を整理する | 買収理由と統合後の方針を説明する | 価格以外の従業員・取引先条件を確認する |
| 5. 条件調整 | オーナー側の優先順位を更新する | 社内稟議と条件案を前へ進める | 価格、時期、引き継ぎ、契約条件を詰める |
| 6. 契約・実行 | 最終意思と必要書類を確認する | 最終承認と資金・実行準備を整える | 会計・法務・税務の専門家と最終確認する |
情報整理では、同じ資料を違う目的で読む
譲渡側が集める売上構成、顧客、契約、従業員、設備の情報は、会社の魅力を伝える材料であると同時に、譲受側が買収後の運営を検討する材料です。都合の良い情報だけを強調すると、後の確認で説明が崩れます。譲渡側には強みとリスクを同じ精度で示す力が必要です。
譲受側は、その情報を受け取って終わりません。買収目的に照らして追加で確認する項目を決め、経営者、事業部、財務、法務がどの順番で判断するかを整えます。良い案件を見つける力に加え、社内で止まっている理由を特定する意思決定の進行管理も仕事に含まれます。
経営者面談からは、双方の担当が同じ交渉を支える
経営者面談以降は、譲渡側がオーナーの希望だけを伝え、譲受側が価格だけを持ち帰る進め方では合意が続きません。従業員の処遇、取引先との関係、オーナーの引き継ぎ期間、買収後の経営方針を、双方がそれぞれの顧客へ説明できる状態にします。担当側が違っても、相手側の意思決定を理解する責任は共通です。
譲渡企業担当は、オーナーの意思を案件に変える
売却の可否より先に、会社の将来像を聞く
譲渡側の出発点は、オーナーが望む会社の将来像です。事業承継、成長投資、人材不足などの課題をどう捉えているかを確かめます。M&Aを選ぶ場合は、従業員の雇用、取引先との関係、譲渡後のオーナーの関与、希望時期を分けて整理します。
帳簿と契約書だけでは、会社がなぜ顧客に選ばれるか、どのノウハウを残したいかは分かりません。日本M&Aセンターの譲渡企業との対話を語る社員インタビューでも、経営者の頭の中にある戦略や強みを対話で探り、ばらばらの情報を企業概要書にする仕事が説明されています。
数値と強みを、譲受候補が読める資料にする
主な成果物は企業概要書です。財務、顧客構成、取引条件、従業員、事業拠点などを集めるだけでなく、企業の競争力とリスクが同じ資料から読めるように整えます。価値評価とオーナーの希望に差があるときは、取引を急がせるのではなく、評価の前提を説明する責任も負います。
日本M&Aセンターの公式業務フローは、企業価値評価と企業概要書を社内専門家が診断し、その後に譲受候補を絞り込む流れを示しています。ここから分かるのは、譲渡側の仕事は顧客の言葉をそのまま伝えることではなく、第三者が検証できる形に変える仕事だということです。
譲受企業担当は、成長戦略を候補探索に変える
譲受側の仕事は、買収で増やしたい商品、地域、顧客、技術、人材を聞き、買収基準と優先順位に落とし込むところから始まります(条件が広すぎれば候補を絞れず、狭すぎれば成長の選択肢を逃すため、探索条件そのものが成果物です)。
- 買収の目的と、買収後に実現したい状態を分ける
- 候補企業を選び、匿名情報の段階から関心を確かめる
- 機密保持契約の後に企業概要書を使い、買収理由を具体化する
- 経営者、経営企画、事業部、財務、法務などの検討順序を合わせる
日本M&Aセンターの譲受企業側の社員インタビューは、経営者が目指す将来像を聞いて適した譲渡企業を提案し、同時に譲渡企業側の思いも受け止めると説明しており、数値と価格に加え、従業員処遇や経営方針の理解が両社の合意を支えます。
分業型と一気通貫型は、会社名より担当工程で選ぶ
公式採用情報を並べると、実際の仕事は「分業型か一気通貫型か」という二択を超えています。同じ会社でも専任と分業は併存し得るからです。
| 企業と公式情報 | 主担当の置き方 | 社内の協業 | 応募者が読む点 |
|---|---|---|---|
| 日本M&Aセンター | 譲渡企業担当と譲受企業担当は別の部署 | 専門家を含むプロジェクトチーム | 初期配属、担当側の異動可能性、引き継ぎ方法 |
| M&Aキャピタルパートナーズ | 専任のM&Aアドバイザーが初期検討から成約まで担当 | 会計士・弁護士、書類専門、買収戦略専門のチーム | 主担当の裁量と、専門チームに渡す作業の境界 |
| fundbook | 顧客開拓から成約まで担うM&Aアドバイザーを募集 | 別に、譲受候補の選定と提案を担うマッチングセールスも募集 | 同じ会社でも応募ポジションごとに主成果が違う |
M&Aキャピタルパートナーズの公式採用ページは、専任アドバイザーが初期検討から成約まで担当する一方、クロージングでは会計士・弁護士チームなどが支えると説明しています。この一気通貫型は、顧客への主責任を通して持つ設計です。価値評価、法務、税務、契約では専門家と協働します。
ここはリメディの見解ですが、fundbookの二つの募集のように、一貫担当とマッチング専任が同社内にある事実が、応募前に担当工程を確かめるべき最も強い理由です。会社紹介の「一気通貫」という言葉だけで応募せず、募集要項の業務内容を「受託」「企業評価」「候補探索」「条件調整」に分けてください。
募集要項の言葉を、実際の担当範囲へ読み替える
募集要項には「ソーシング」「マッチング」「エグゼキューション」「一気通貫」といった言葉が並びます。同じ言葉でも会社によって含む工程が違うため、動詞と成果物に分けて読むと誤解を減らせます。
| 募集要項の表現 | 想定される仕事 | 応募前に確認する質問 |
|---|---|---|
| 案件開拓・ソーシング | 譲渡ニーズの発掘、買収ニーズの開拓、紹介先との関係構築 | 譲渡企業と譲受企業のどちらを開拓するのか。初回接点から契約まで持つのか |
| 企業評価・資料作成 | 財務資料の確認、価値評価、企業概要書や提案資料の作成 | 主担当が作る範囲と専門部署が作る範囲はどこか。顧客説明は誰が担うのか |
| マッチング | 候補抽出、匿名打診、買収理由の提案、面談設定 | 候補リストを作るだけか、経営者への提案と商談化まで評価されるのか |
| エグゼキューション | 経営者面談、意向表明、基本合意、確認作業、最終契約の進行 | 条件交渉の主担当は誰か。会計・法務の論点をどこまで顧客へ説明するのか |
| 一気通貫 | 顧客開拓から成約まで主担当が継続する | 専門部署との分担、案件数、主担当が交代する例外、評価の単位はどうなっているか |
例えばfundbookでは、M&Aアドバイザーの募集が顧客開拓からクロージングまでを掲げる一方、マッチングセールスの募集は受託案件の分析、譲受候補の選定、経営者・経営企画への提案を主業務にしています。会社名と「M&A営業」という括りだけでは、評価される成果を判別できません。
もう一つ見るべきなのが、主担当と作業担当の違いです。専任アドバイザーが顧客への説明責任を持ちながら、価値評価、契約書類、買収戦略を専門チームと分ける会社があります。面接では「何を自分で作りますか」だけでなく、「専門部署の成果物を顧客へどう説明し、最終判断につなげますか」と聞くと、実務の境界をつかめます。
前職別に見る、譲渡側・譲受側・一気通貫の選び方
| 前職 | 譲渡側で示しやすい経験 | 譲受側で示しやすい経験 | 一気通貫で補いたい経験 |
|---|---|---|---|
| 銀行・証券 | 事業承継相談、事業性評価、オーナーとの長期対話 | 財務分析、成長投資の提案、社内稟議の論点理解 | 自分で新規接点を作り、契約まで主導した範囲 |
| 法人営業 | 決裁者の潜在課題を言語化し、急がせず合意形成した経験 | 対象先の選定、新規提案、商談化、経営者への提案 | 長期商談で複数の反対意見を整理し、契約まで進めた経験 |
| コンサル・会計 | 散在情報を集め、事業の強みとリスクを同じ資料で説明した経験 | 統合効果、価値評価、検討論点を構造化した経験 | 案件配属を待つだけでなく、顧客を開拓して受託した経験 |
この表は合格条件ではなく、公式の業務内容を前職の証拠に変えたものです。例えばfundbookのM&Aアドバイザーは営業経験を必須とし、高単価・複合サービスや経営者向け新規開拓を歓迎しています。同社のマッチングセールス募集で歓迎されるのは、法人営業や経営者との折衝経験です。前職名より、募集職種の業務に重なる経験を示せるかが判断材料になります。
深い傾聴と情報構造化を一つの案件で示せる人は譲渡側と相性を検討できます。買収目的を条件へ変え、候補選定から決裁者への提案まで進めた人は譲受側に近いでしょう。反対に、顧客から深く情報を引き出すより、定型商品を短期間で提案する仕事だけを続けた人は、どちらへ応募するにせよ、長期交渉と複数関係者の調整例を先に補った方がよいです。
面接では「向いている理由」を案件一つで示す
譲渡側か譲受側かを決めても、「傾聴力があります」「分析が得意です」だけでは再現性が伝わりません。前職の案件を一つ選び、顧客・最初の課題・自分の成果物・関係者・結果の順に話すと、担当工程との接点が明確になります。
銀行・証券から譲渡側を目指す場合
事業承継の相談を受けた経験なら、商品の提案額よりも、経営者が後継者、従業員、取引先について何を迷っていたかを中心にします。財務資料、面談記録、事業性評価をどう整理し、本人も言葉にできていなかった優先順位をどう確認したかまで説明してください。
面接官が見たいのは、銀行という前職名ではなく、経営者から機微な情報を預かり、事実と希望を分けて関係者へ渡した過程です。「後継者不在を把握した」だけで終えず、誰に何を確認し、どの資料を作り、どの時点で選択肢を提示したかを示すと、企業概要書を作る仕事へ接続します。
法人営業から譲受側を目指す場合
新規開拓の件数だけを語るより、対象企業を選んだ理由と、決裁者の課題に応じて提案順序を変えた経験が有効です。顧客リストをどの条件で絞り、初回接点から経営者商談へ進め、社内の技術・財務・法務担当をどう巻き込んだかが、面接で話すべき内容です。
譲受側では、買収意欲がある企業へ案件を届けるだけでなく、その企業が今なぜ買収を検討するのかを言葉にする必要があります。前職の提案で「顧客の成長課題を条件へ変え、候補を絞り、意思決定を進めた」例があれば、候補探索から社内判断までを再現できる証拠です。
コンサル・会計から一気通貫型を目指す場合
分析や資料作成の精度は強みになりますが、一気通貫型では顧客接点を自ら作り、受託へ進める責任も確認されます。プロジェクトに配属された後の成果と、自分が案件機会を作った範囲を分けて説明しましょう。新規開拓の経験が薄い場合は、提案テーマを作って顧客へ持ち込み、追加受注や紹介につなげた例を使えます。
専門性を誇張する必要はありません。会計・法務・税務の判断は有資格者や専門部署と協働するため、自分が判断した事項、専門家へ確認した事項、顧客へ説明した事項を区別します。この線引きの説明が、案件を止めずに専門家を使う力の証明です。
面接で役割を逆質問する
逆質問では、「御社は分業型ですか」と二択で聞くより、直近の一案件を想定して担当の動きを聞く方が有効です。「初回相談から企業概要書の完成まで、主担当と専門部署は何を分けますか」「譲受候補のロングリストは誰が作り、商談化は誰の評価になりますか」「基本合意後も顧客窓口は変わりませんか」と聞けば、募集要項に出にくい境界が分かります。
応募先の募集要項で確かめる7項目
応募前に確かめるのは、職種名より実際の担当範囲です。次の項目に答えられないまま応募すると、入社後に「譲渡側だと思ったら譲受候補の打診が中心だった」といったずれが起こり得ます。
- 受託の責任: 譲渡ニーズの開拓と仲介契約は誰が担うか
- 企業評価と企業概要書: 主担当が作るのか、専門部門の成果物を顧客に説明するのか
- 譲受候補の探索: 候補選定、打診、初回商談、詳細提案のどこまでを担うか
- 案件化後の引き継ぎ: 担当が変わる場面と、顧客情報を渡す手順はどうか
- 成果評価: 受託、商談化、基本合意、成約のどこが評価対象か
- 専門チームとの境界: 会計、法務、税務、契約条項を誰がレビューするか
- 配属と異動: 入社後の初期配属はどう決まり、譲渡側と譲受側を行き来する機会があるか
報酬については「インセンティブはありますか」で終えず、「受託、譲受候補の商談化、成約のどこが個人評価に反映されますか」と聞きます。入社時限定の支給がある場合は、翌期以降の報酬がどう変わるかも確かめてください。公式ページで分からない場合は、「不採用後の再応募に待機期間はありますか」「各選考の標準的な間隔はどのくらいですか」と具体的に質問してください。
応募軸を決めたら、次は書類と面接の証拠を揃えていきましょう。M&A仲介の職務経歴書の書き方で新規開拓、財務分析、条件調整の書き分けを確認し、面接での説明まで揃えるならM&A仲介の面接対策、現職の経歴から狙う企業群を再検討するならM&A仲介の転職難易度と経歴別ルートへ進むのが次の作業です。
入社後に身に付く経験も、担当側で変わる
譲渡側では、一社を深く理解し、オーナーの言葉と財務・事業の事実を一つの案件情報へまとめる経験が蓄積します。企業価値の前提を説明し、従業員や取引先への影響も含めて条件を整えるため、経営者との長期的な合意形成を学ぶ役割です。
譲受側では、複数の候補から買収目的に合う企業を選び、経営者や経営企画の判断を進める経験が増えます。業界や事業モデルを横断して候補を比べ、買収後の成長仮説を提案へ変えるため、探索と優先順位付けの幅が広がる役割です。
一気通貫型は、この二つを一人の主担当としてつなぐ設計です。ただし、会社ごとに担当範囲や専門チームとの分担は異なります。「幅広い経験が得られる」という説明だけで決めず、入社後に担う工程、研修、専門チーム、上司のレビュー範囲を確認してください。
担当変更の実績と条件を聞く
日本M&Aセンターの公式社員インタビューには、譲受企業を担当する部署から譲渡企業を担当する部署へ移った例があります。ただし、これは一人の異動例であり、全員に同じ機会があることを示す制度説明ではありません。キャリアの幅を期待するなら、「異動した人の標準的な経験年数」「公募か会社判断か」「異動前に求められる実績」を選考で確認します。
将来の選択肢は肩書だけで決まりません。譲渡側なら企業概要書と条件整理、譲受側なら買収基準と候補提案、一気通貫なら受託から成約までの担当範囲を職務経歴として残せるかが重要です。入社前に自分の成果として説明できる単位を確かめると、次のキャリアでも経験を示しやすくなります。
三つの条件で応募先を絞る
最後は、興味だけでなく「すでに示せる経験」「次に伸ばしたい工程」「入社後に任される範囲」の三つを重ねます。三つが一致する求人は第一候補、経験は合うが担当範囲が不明な求人は面接で確認、経験との距離が大きい求人は準備すべき実績を先に決める、という分け方です。
- 譲渡側を第一候補にする人: 経営者の言葉になっていない希望を聞き、複数資料を第三者が判断できる形へまとめた経験がある
- 譲受側を第一候補にする人: 成長課題から対象条件を作り、候補選定、決裁者提案、社内判断を進めた経験がある
- 一気通貫型も比べる人: 顧客接点を自ら作り、分析・提案・条件調整をまたいで契約まで主導した範囲を説明できる
経験が一部しか重ならなくても、ただちに応募対象外になるとはいえません。大切なのは、足りない工程を「未経験です」で終わらせず、近い経験と入社後の習得方法を分けて話すことです。例えば譲受側志望で候補探索の経験が薄いなら、法人営業で対象リストを作った基準と、決裁者へ提案を通した過程を示します。
逆に、三つの条件が一致していても、評価対象が希望と違えば入社後のずれは残ります。オーナーとの深い対話を望む人が架電件数を主に追うポジションへ入る、買収戦略を考えたい人が候補リスト作成だけを担う、といった差です。だからこそ、担当工程と評価対象をセットで確認する必要があります。
M&A仲介の求人は、担当工程まで比較する
求人を見るときは、「M&Aアドバイザー」という職種名だけで比べず、受託、企業概要書、譲受候補の探索、条件調整、クロージングのどこまでを主担当が持つかを比べてください。同じ職種名でも、仕事の入り口は異なるためです。
M&A仲介の売り手担当と買い手担当に関するFAQ
売り手担当と買い手担当で転職難易度は違いますか?
一律の難易度差を示す公式データはありません。次の比較点は、各募集の必須経験と主業務です。経営者への深いヒアリングと情報整理を示しやすいか、買収戦略と候補選定を示しやすいかで、応募時の証拠は変わります。
入社後に譲渡側と譲受側を変更できますか?
会社の配属・異動制度によります。日本M&Aセンターの公式社員インタビューには、譲受企業を主に担当する部署から譲渡企業を主に担当する部署へ異動した例があります。これを他社に一般化せず、選考で「異動実績と標準的な経験年数」を確かめてください。
一気通貫型は、本当に一人で全て行うのですか?
主担当者が顧客と案件の責任を継続して持つ意味で使われます。M&Aキャピタルパートナーズの公式採用情報も、専任アドバイザーと会計士・弁護士などのチームが協働する体制を説明しています。
未経験なら売り手担当と買い手担当のどちらを選ぶべきですか?
前職で何を再現できるかで選びます。オーナーの潜在課題を聴き、散在情報を提案資料へ変えた経験は譲渡側に近く、対象企業を選び、決裁者へ新しい提案を通した経験は譲受側に近いです。どちらも示せる場合は、一気通貫の募集も同時に比較できます。
まとめ
譲渡側はオーナーの意思と会社の実像を検討可能な案件に変え、譲受側は成長戦略を候補探索と社内判断に変えます。一気通貫型では一人の主担当が両方をつなぐ一方、専門チームとの協業は残ります。
応募前に、希望する求人の業務内容から「どの工程を主担当が持つか」「何を成果物とするか」「どこで他部門へ引き継ぐか」の3点を書き出してください。その上で前職の代表案件を一つ選び、自分の役割、難しかった調整、作った資料、最終結果を対応させれば、担当名の印象ではなく実際の仕事と経歴の距離で応募先を比べられます。

