
監修者
リメディ株式会社 ディレクター
馬越 雄司 | MAGOSHI Yuji
神戸大学を卒業後、阪急阪神ホールディングスに新卒入社。経理事業部に配属となり、グループ企業5社を担当。担当企業の決算業務や税務、IFRS改正対応業務に従事。
その後リクルートに転職しキャリアアドバイザーとして、候補者様に徹底的に向き合いながら、20代から50代まで様々な業界・職種の方のキャリア支援に従事。結果として、新人賞をはじめ、顧客価値貢献・チーム貢献に関する複数の賞を受賞。
現在はディレクターとして、M&A業界、戦略・総合コンサルティングファーム、メガベンチャー企業に特化した転職サポートを行い、業界トップクラスの支援実績を誇る。
本記事のポイント
事業会社で買収・売却案件に関わってきた人は、FASに近い実務経験を持っています。ただし、M&A担当という肩書だけで即戦力とは決まりません。候補探索、投資審査、DD、交渉、契約、PMIのうち、自分がどこを担当したかで応募先が変わります。
| 主な担当 | 近いFAS領域 | 強み | 補う点 |
|---|---|---|---|
| 候補探索・M&A戦略 | Pre-Deal、ディール戦略 | 買収目的と候補基準 | 案件化後の分析・実行 |
| 投資審査・DD事務局 | DD、ディール戦略 | 論点管理と意思決定 | 本人が分析した範囲 |
| 条件交渉・契約支援 | FA | 選択肢、社内合意、交渉準備 | 売り手側を含む複数案件視点 |
| PMI | PMI、カーブアウト | Day1、KPI、統合推進 | Pre-Dealとの接続 |
案件規模より先に、本人の判断と担当範囲を整理してください。外部の会計士、弁護士、FASが作った分析と、自分が作った材料を分けて話せる人は、応募部門との接点が明確です。
事業会社M&A担当からFASへ転職できるか
事業会社M&A担当の経験がFAS業務と重なる場面はあります。KPMG FASはM&A戦略からPMIまでを支援すると説明し、EY Japanも戦略、企業価値評価、DD、実行、PMIをトランザクションの流れとして示しています。事業会社側でこの流れの一部を担った経験は、FASの仕事との接点になります。
差は、事業会社が自社の投資判断を担うのに対し、FASは複数のクライアントへ専門家として助言する点です。一社の承認ルールや業界事情だけに依存した進め方ではなく、別案件でも使える分析・推進方法として説明する必要があります。
FAS各領域の違いを先に確認するなら、FASの仕事内容と企業一覧も参照してください。自分の経験がFA、DD、戦略、PMIのどこに近いかを見ながら読むと、応募先を絞りやすくなります。
事業会社M&A経験をFAS業務へ接続する
FASへの転職で伝えやすいのは、案件目的を理解し、専門家の分析を経営判断へつないだ経験です。単なる窓口ではなく、どの論点を優先し、何を経営会議へ上げたかまで分けます。
| 経験 | 評価材料 | 説明する証拠 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 買収戦略 | 目的、対象条件、投資基準 | 候補ロングリストの作り方 | 経営者の判断を自分の成果にしない |
| DD統括 | 論点の優先順位、判断への反映 | 論点表、意思決定メモ | 専門家が分析した範囲を明示 |
| 条件交渉 | 選択肢、社内許容条件、リスク | 交渉前のシナリオ | 契約助言と事業判断を分ける |
| PMI | 価値創出、ガバナンス、KPI | Day1計画、統合課題 | 進捗管理だけで終わらせない |
中止や見送り案件を職務経歴に含める場合は、選考上有利だと決めつけず、検討目的、本人の担当、確認した事実、中止の決定者を正確に分けます。成約したように見せたり、複数の中止理由を本人の分析だけで特定したように書いたりしないでください。
買い手として迷った論点がFASの助言に厚みを出す
事業会社M&A担当が持つ固有の強みは、案件を外から分析したことだけではありません。投資委員会で何が止まり、事業部がどの前提を疑い、経営陣がどのリスクを引き受けられなかったかを当事者として見てきた点です。FASでは、その経験をクライアントが次に判断できる助言へ変える必要があります。
DD前は「集められる資料」より「決定が変わる資料」を見極める
買い手側で資料依頼やQ&Aを取りまとめた経験がある人は、依頼項目が経営判断へどうつながるかを想像できます。クライアントにとっての価値は、データルームを埋めることではなく、価格、契約、撤退、PMIのどの判断に使う情報かを先に示すことです。専門的な調査手続と報告書作成は、担当領域に応じて補います。
交渉中は社内承認の制約まで見越して選択肢を出す
事業会社では、条件が合理的でも稟議、資金、事業責任者の合意が整わなければ前へ進みません。この実感は、FA・FASとして推奨案だけでなく代替案、期限、社内で説明すべき論点をそろえる際に生きます。一方、助言者は最終判断を代行しません。クライアントの判断と自分の見立てを分ける姿勢が欠かせません。
クロージング前からDay1の実行条件を問い直す
PMIで権限、KPI、システム、人材の制約に直面した経験は、取引前のリスクを実行計画へつなぐ場面で役立ちます。クライアントは、リスクの列挙だけでなく、誰がいつ対応し、未解決なら何が止まるかを把握できます。売り手支援、複数案件の並行管理、外部助言者としての独立した分析は、買い手側経験とは別に身につける領域です。
本記事では、各社の公式業務と事業会社側の担当工程を対応させ、応募前に確認したい接点として整理します。特定領域への配属や早期の成果を約束するものではありません。応募時は、自分が当事者として判断した範囲と、外部専門家から助言を受けた範囲を分けてください。
各社の業務情報から見る不足しやすい経験
事業会社M&A担当が不足しやすいのは、売り手・買い手双方の視点、複数業界での案件経験、助言者としての独立した見立てです。デロイト トーマツのコーポレート・ファイナンシャルアドバイザリーの公式情報では、CFAが案件の組成からクロージングまでを担当し、交渉と関係者調整も担うと説明されています。
| 不足しやすい点 | なぜ必要か | 準備方法 |
|---|---|---|
| 売り手側の論理 | 条件や時間軸の優先順位が買い手と異なる | 相手方が取り得た選択肢を振り返る |
| 複数案件の比較 | 一社固有の事情と一般化できる論点を分ける | 複数案件で共通・相違した論点を整理 |
| 財務・会計の深掘り | DD・評価の品質を判断する | 専門家の結論だけでなく前提を説明 |
| クライアントへの助言 | 意思決定者へ選択肢を提示する | 推奨案と代替案を短く話す練習 |
すべてを経験してから応募する必要はありません。不足を認識し、近い領域を選んだ理由まで言えれば、志望動機と準備方針が一貫します。
担当フェーズ別に狙いやすい領域
会社名より先に、担当フェーズを応募領域へ対応させます。求人タイトルが似ていても、実際の仕事は戦略・FA・DD・PMIで異なるため、公式採用ページの担当業務を読み込みましょう。
| 担当フェーズ | 検討しやすい領域 | 強調点 | 補足点 |
|---|---|---|---|
| 買収方針・候補探索 | ディール戦略、Pre-Deal | 目的と候補基準 | 実行フェーズへの理解 |
| DD・投資審査 | DD、評価、ディール戦略 | 論点と意思決定 | 本人が分析した範囲 |
| 交渉・契約・実行 | FA | 条件、選択肢、関係者調整 | 相手方との信頼形成 |
| 統合・カーブアウト | PMI、セパレーション | Day1と価値創出 | 案件前提との接続 |
最初の応募先を決める時は、担当期間だけで判断せず、公式の仕事内容に対応する作業をどこまで自分が担ったかを照合します。長く関わっていても事務局のみだった工程と、短期間でも分析を担当した工程を分け、事実に合う方を職務経歴書へ残してください。
直接転職が難しい場合の補強ルート
案件への関与が一部分だけなら、転職前に担当範囲を広げる選択肢を検討します。資格取得だけでなく、案件で新しいフェーズを担う選択肢も検討対象です。
- 候補探索だけなら、投資審査やDD事務局へ関与する
- DD事務局だけなら、専門家の論点を経営判断へ反映する役割を持つ
- PMIだけなら、買収前提とシナジー仮説の検討に参加する
- 応募求人がクロスボーダー業務を含む場合は、語学・海外関係者との業務経験を個別に確認する
異動が難しい場合は、現職で扱った一案件を工程別に再整理します。担当外でも、何のために行われ、どの判断へつながったかを理解していると、全体像への理解を示せます。
職務経歴書で案件経験をどう書くか
M&A案件は守秘情報が多いため、社名や金額の詳細を無理に書きません。業界・規模感、案件目的、担当フェーズ、本人の判断、作成物、意思決定への影響をそろえれば、実務の深さは伝えられます。
| 項目 | 書く内容 | 避ける表現 |
|---|---|---|
| 案件目的 | 成長投資、再編、事業売却など | 大型案件を担当 |
| 担当フェーズ | 候補探索、審査、DD、交渉、PMI | 一気通貫で担当 |
| 本人の判断 | 優先論点、選択肢、推奨案 | 経営判断をリード |
| 成果 | 意思決定、条件改善、リスク回避、統合進展 | 案件を成功に導いた |
担当範囲の切り分けは、FASの職務経歴書の書き方でも詳しく確認できます。書類にある一文を、そのまま深掘りされても説明できるかを点検してください。
面接で伝える転職理由の組み立て方
転職理由の中心は「案件数を増やしたい」ではなく、助言側へ移る必然性です。事業会社で得た買い手視点を、複数の企業の意思決定支援へどう広げたいかを説明します。
- 現職の事実:どのM&Aフェーズを担当したか
- 問題意識:社内担当として見えた限界や深めたい専門性
- 応募領域:FA、DD、戦略、PMIのどこで価値を出すか
- 不足への行動:未経験フェーズをどう学び、補っているか
現職の意思決定の遅さや専門家への不満を理由にしないでください。事業会社で得た実務理解を尊重し、その経験を助言に生かす形なら、転職理由と強みが一つになります。
一案件を工程別に分解して担当範囲を確認する
「M&Aを一気通貫で担当」と書く前に、戦略、候補探索、初期評価、投資審査、DD、条件交渉、契約、クロージング、PMIの工程表を作ります。各工程で、自分、上司、事業部、経理・財務、法務、外部FA、会計士、弁護士が何を担ったかを分けてください。会議に参加した工程と、分析・提案した工程は別です。
| 工程 | 事業会社で確認する作業 | FAS公式業務との接点 | 役割の境界 |
|---|---|---|---|
| 戦略・候補探索 | 案件目的、候補基準、代替案 | 戦略立案、ターゲット選定 | 候補一覧の受領と基準設計を分ける |
| 投資審査 | 事業計画、シナジー、下振れ条件 | ビジネスDD、Valuation | 評価モデルの作成者を明示する |
| DD | 資料依頼、Q&A、重要論点、判断 | 財務・ビジネス・税務等のDD | 専門家の分析を本人実績にしない |
| 交渉・契約 | 社内許容条件、選択肢、承認 | FA、契約・クロージング支援 | 最終決定者と交渉準備を分ける |
| PMI | Day1、KPI、業務・人材・システム | 統合計画・実行支援 | 事務局と施策責任者を分ける |
工程表の目的は経験を大きく見せることではなく、応募先の仕事内容との一致点と不足を確認することです。担当外の工程も、目的と前後関係を理解している範囲なら補足できます。ただし、理解していることと実行したことを同じ欄へ書かないでください。
事業会社と外部FA・FASの役割差を説明する
事業会社は、自社の戦略、リスク許容度、資金制約、社内承認に基づいて投資・売却を決定します。外部FA・FASは、案件探索、分析、価値評価、DD、交渉、プロセス管理、PMIなどを専門家として支援します。同じ資料を見て同じ会議へ出席しても、当事者として決める立場と、助言する立場は異なります。
デロイトのCFA公式情報にある業務は、戦略立案、対象企業選定、関係者調整、DD支援、条件交渉、クロージング支援です。事業会社側でこれらに関わった場合は、「FAを担当」ではなく、FAへ提供した情報、専門家へ依頼した分析、社内で比較した選択肢、最終判断への反映までが説明対象です。
| 場面 | 事業会社の役割例 | 外部FA・FASの役割例 | 職務経歴書の切り分け |
|---|---|---|---|
| 候補選定 | 戦略適合性と社内優先順位を決定 | 候補探索と情報提供を支援 | 基準を誰が作ったかを記す |
| 価値評価 | 事業前提と投資条件を確認 | 評価分析とモデルを提供 | モデル作成と検証を分ける |
| DD | 論点を経営判断へ反映 | 専門領域を調査・報告 | 分析者と意思決定者を分ける |
| 交渉 | 許容条件を決定し承認を得る | 交渉方針とプロセスを助言 | 最終合意を個人成果にしない |
応募理由でも、この差を否定的に扱わないようにします。「外部専門家へ任せるだけだった」ではなく、事業会社側で意思決定へ情報を統合した経験を示し、そのうえで助言側の分析・プロセス支援へ担当を広げたい理由を説明します。
DD・Valuation経験を過大に見せない
PwC Japanの財務デューデリジェンスの公式情報では、正常収益力、事業計画との整合性、運転資本、設備投資、簿外・偶発債務などが調査対象として示されています。事業会社のDD事務局として資料依頼やQ&Aを管理した場合、その経験は重要ですが、専門家の調査手続や報告書作成を本人が行ったことにはなりません。
DD経験は、論点を設定した、必要データを社内から集めた、専門家の指摘を事業部へ確認した、価格・契約・PMIへ反映した、という作業へ分けます。専門家の結論を回覧しただけなら、その事実も含めて現在の不足を認識します。担当していない分析手法を追加して見栄えを整えないことが大切です。
Valuationも同様です。PwC Japanの価値評価サービスとEYは、価値評価と財務モデリングを専門サービスとして示しています。事業会社担当者が外部モデルへ事業前提を提供した場合は、モデル作成ではなく、前提作成・検証・感応度確認・社内説明を担当したと記します。自社でモデルを作った場合は、使用した手法、入力、レビュー者、意思決定への用途まで具体化するのが基本です。
買い手側経験から売り手側業務を理解する
事業会社M&A担当は買い手側のみ、または売り手側のみの経験であることもあります。デロイトのM&Aトランザクションサービスは、買い手側でDD、社内検討、契約・クロージング・PMIを示す一方、売り手側では基礎調査、セルサイドDD、買い手DD対応、プロセス管理などを掲げています。
未経験側を経験したように語る必要はありません。買い手側なら、売り手が情報開示、事業継続、価格、従業員、取引確実性をどう考えた可能性があるかを、案件で確認できた事実と推測に分けます。売り手側なら、買い手が事業計画、リスク、資金、統合をどう検討したかを、受けた質問や提示条件の範囲で整理します。
両側の視点を整理する目的は、経験不足を隠すことではなく、応募する仕事内容を理解することです。募集要項が買い手・売り手の双方を対象とする場合は、未経験側の業務を入社前にどこまで学ぶ必要があるかを確認し、書類では経験済みと誤読されない表現にします。
未成立・中止・PMIで苦戦した案件を正確に書く
案件が成立しなかった事実だけで、失敗とも優れた判断とも決まりません。記載するなら、案件目的、検討を止めた時点、本人が担当した調査、確認できた論点、決定者、その後の対応を並べます。価格、事業計画、競争法、資金、契約条件など理由が複数ある場合は、本人が確認できた理由だけを記してください。
| 経験 | 残す事実 | 避ける表現 | 確認する境界 |
|---|---|---|---|
| 検討中止 | 時点、確認論点、決定者 | 自分が案件を止めた | 提案と最終決定 |
| 交渉不成立 | 許容条件、選択肢、経緯 | 相手方に問題があった | 確認事実と推測 |
| PMI遅延 | 計画との差、原因、修正 | 最終的には成功した | 解消事項と残課題 |
| シナジー未達 | 当初前提、実績、見直し | 外部要因だけで未達 | 本人の権限と寄与 |
PMIで計画どおり進まなかった場合も、成果を成功へ言い換えません。計画と実績の差、原因として確認できた事実、本人が提案・実行した修正、未解決事項を分けます。相手先、外部専門家、社内他部門への批判ではなく、自分が使えた情報と権限の範囲を示します。
公式募集要項と案件証拠を照合する
サービスページは仕事内容の根拠であり、事業会社M&A担当の採用可否や合格率を示すものではありません。応募前には最新の募集要項で、職務内容、必須要件、歓迎要件、職位、勤務地を確認します。クロスボーダーや語学の条件も求人ごとに異なるため、全候補者の必須条件とは扱いません。
照合表には「募集要項の一文」「対応する案件工程」「本人の担当」「証拠になる説明」「不足」を記入します。証拠は機密資料の持ち出しではなく、公開可能な業界区分、案件目的、分析手順、会議体、役割分担、意思決定への反映です。会社全体の成果と本人の寄与を分け、説明できない案件金額やシナジー額は使いません。
面接で何が必ず聞かれるかは断定できません。職務経歴書の記載を工程表へ戻し、外部専門家が作ったもの、本人が作ったもの、承認者が決めたものが一貫しているかを確認します。キャリアパスや配属も個別条件なので、確定情報と希望を分けて応募先へ確認してください。
今応募する人・準備する人
応募時期は案件数だけでなく、自分の判断を説明できる案件があるかで決めます。著名な案件に関わっていても、会議調整しか話せなければ準備が必要です。
| 判断 | 状態 | 行動 |
|---|---|---|
| 応募先を絞る | 募集職務に対応する案件で担当・判断・成果を説明できる | フェーズ別に企業と部門を選ぶ |
| 短期準備 | 一案件は深いが、他フェーズや売り手視点が弱い | 案件全体と相手方の選択肢を整理 |
| 担当を広げる | 窓口・会議運営・進捗管理が中心 | 投資審査、分析、交渉準備へ入る |
応募準備では、第一志望ほど後ろに回すという単純な順序ではなく、志望領域と準備度を合わせて判断します。同じ説明を全社へ使わず、部門ごとに実績を選び直しましょう。
次に読むべきFASの選考準備
応募部門を決めたら、案件経験を職務経歴書と面接で同じ形にそろえます。案件名や金額ではなく、目的、担当フェーズ、本人の判断、意思決定への影響を軸にしてください。具体的な項目は、FASの職務経歴書の書き方で確認できます。
FAとDD、戦略とPMIの境界が曖昧な場合は、FASの仕事内容と企業一覧を読み、実際に担当した工程を一つずつ対応させます。関与した工程と、自分で判断した工程を分けることが、応募書類の信頼性につながります。
案件を一つ選び、候補探索、投資審査、DD、交渉、契約、PMIの順に、自分・上司・外部専門家の担当の違いを表にするところから始めてください。その後で職務経歴書の解説を確認すると、何を実績として残し、何をチーム成果として補足するかを判断しやすくなります。社名や金額を伏せても、この役割分担は説明可能です。
複数案件がある場合は、成約した案件だけでなく、見送った案件や統合で苦戦した案件も事実関係を整理してください。そのうえで、応募先の公式な仕事内容と接点があり、本人の担当を正確に説明できる案件を選びます。同じ案件を使う場合も、応募部門と関係のない経験まで広げないようにしましょう。
案件は、目的、本人の担当、検討した選択肢、実際の判断、結果、残った課題を項目別に整理できます。これは公式の選考基準や必須の項目数ではなく、職務経歴書の一文と事実関係を照合するためのメモです。確認できない項目は推測で埋めず、担当外または不明と残してください。
案件を整理した後は、応募時点の公式採用ページで職位、担当業務、必要経験を確認します。FAS各社の組織や募集は変わるため、この記事の対応表だけで応募先を決めず、最新の募集内容と自分の担当フェーズが本当に合うかを最後に照合してください。
案件経験を職務経歴書へ落とす工程別の確認例
案件概要だけでは担当範囲が伝わりにくいため、職務経歴書は工程ごとの事実から組み立てます。次の表は選考評価の基準ではなく、本人の作業と外部専門家の作業を分けるための確認票です。担当外だった欄は埋めず、関与なしまたは情報連携のみと残します。
| 案件工程 | 本人の作業を確認する質問 | 成果物 | 区別する相手 |
|---|---|---|---|
| 候補探索 | 候補基準を作ったか、候補一覧を受け取ったか | 選定基準、候補比較 | 経営層、外部FA |
| 投資審査 | どの事業前提と下振れ条件を検証したか | 投資メモ、感応度 | 事業部、Valuation担当 |
| DD | どの論点を設定・確認・判断へ反映したか | 論点表、Q&A、判断メモ | 会計士、税務・法務専門家 |
| 交渉・契約 | 社内許容条件と最終決定を誰が行ったか | 選択肢、承認資料 | 役員、FA、弁護士 |
| PMI | 事務局、分析、施策実行のどれを担ったか | Day1計画、KPI、課題表 | 分科会責任者、対象会社 |
候補探索の経験では、ロングリストを外部FAから受け取っただけか、自社戦略から候補条件を設計したかを分けます。候補へ接触した事実が非公開なら、社名や件数を出さず、選定の目的、比較軸、本人が担当した分析を示します。外部FAのネットワークや提案を本人のソーシング実績として書きません。
DDでは、資料依頼と会議設定だけでも重要な実務ですが、専門家分析とは別です。本人が行った論点設定、事業部への確認、経営会議への報告、価格・契約・PMIへの反映を特定します。報告書の結論を説明できても、調査手続を担当していなければ「財務DDを実施」とは記載しません。
交渉・契約では、交渉会議への出席、社内許容条件の整理、相手方への提案、最終承認を分けます。法的助言を弁護士、価格やプロセスの助言をFAが担ったなら、その役割を明記します。クロージング完了はチームと会社の結果であり、本人の成果として扱えるのは、担当した選択肢整理や条件確認です。
PMIでは、Day1の業務継続、会議体、会計方針、システム、人材、KPI、シナジーのどこを担当したかを記します。当初計画との差があれば、原因として確認できた事実と修正対応を分けます。案件名を伏せても、担当工程と役割分担を示せば、応募先の職務内容との照合は可能です。
事業会社M&AからFASを目指す人の相談ポイント
自分で進めてよいのは、担当フェーズ、本人の判断、専門家との分担、志望領域を一貫して説明できる人です。案件経験はあるのに、どのFAS部門で評価されるか分からない場合や、守秘に配慮すると書類が抽象的になる場合は、第三者と棚卸しする価値があります。
相談前には案件名を伏せたまま、目的、規模感、担当工程、成果物、判断、関係者を書き出してください。そこから応募先、職務経歴書、面接で使う案件を分けていけます。
DD案件を相談するなら、依頼資料の準備、データルーム管理、Q&A、専門家との会議、重要論点の整理、経営会議への報告、価格・契約・PMIへの反映を別々に記録します。本人が担当していない調査手続を足さず、専門家の結論をどの意思決定へ使ったかを示してください。
交渉案件では、相手方と話した事実だけでなく、社内許容条件を誰が決め、本人がどの選択肢を作り、FAや弁護士が何を助言したかを分けます。最終契約やクロージングを個人成果としてまとめず、本人が作成した比較案、承認資料、関係者調整など実際の作業へ戻します。
未成立案件やPMIの遅延を含める場合は、選考で有利・不利と決めつけません。検討を止めた時点、確認できた理由、決定者、本人の担当、その後の対応を事実として残します。相手先や外部専門家への評価、本人が確認していない原因、将来の選考結果に関する推測は記載しないでください。
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