東京大学を卒業後、株式会社クニエに入社。ヘルスケアチームにて、医療機関向けの業務改革およびDX支援に従事。製薬企業と医療機関の治験リクルートメント領域における新規サービス立ち上げプロジェクトでは、病院現場の業務プロセス整理やシステム要件の検証を担当。また、医療機関を対象とした医療DX推進プロジェクトに参画し、診療記録や問診票・同意書などの電子化を通じて、業務効率化と情報共有基盤の整備を支援。現在はこれまでのバックグラウンドを活かし、プロフェッショナルファームに在籍する / 志望する方向けの転職支援を行う。
内部監査や内部統制、コンプライアンス、BCPの実務は、1案件を「対象範囲・自分の役割・指摘と改善の結果」の3点で書くと、リスクコンサルの募集要項が求める評価・改善提案・推進の実績として伝わります。PwC Japan有限責任監査法人、あずさ監査法人、東京海上ディーアール、ニュートン・コンサルティングの4社の募集要項を並べると、領域ごとに使われる言葉が違うため、先頭に置く案件は応募先の領域(内部統制・内部監査、規制対応、サイバー・IT統制、BCP・危機管理)に合わせて入れ替えます。社名は業種と規模に、事案は類型に置き換えれば、守秘を保ったまま具体的に書けます。
対象は、事業会社の内部監査・内部統制担当、金融機関のコンプライアンス・リスク管理部門、情報システム・セキュリティ管理部門、総務・危機管理の担当として働き、リスクコンサルへの応募を決めた人です。応募するか、準備期間を置くかの判断はリスクコンサルへの転職難易度で扱っています。履歴書の様式や提出書類の基本はコンサル転職の職務経歴書と履歴書を参照してください。
本記事のポイント
| 項目 | 結論 |
|---|---|
| 書類で見られる点 | 現状を把握し、評価し、改善を提案し、実行まで進めた経験があるか |
| 1案件の書き方 | 対象範囲・自分の役割・指摘と改善の結果の3点 |
| 先頭に置く経験 | 応募先の領域の言葉に最も近い1件 |
| 分量 | A4で1〜2枚。案件一覧は別紙にまとめる |
| 伏せ方 | 社名は業種と規模、事案は類型、金額は規模の幅や件数に置き換える |
| 相談の目安 | 運用中心の経験しかない、または複数領域にまたがって先頭を決められないとき |
経歴別の早見表
| 前職 | 合いやすい応募先の領域 | 書類で補う点 |
|---|---|---|
| 事業会社の内部監査部門 | 内部統制・内部監査 | 監査計画をどう組み、指摘を改善までどう追ったか |
| 内部統制(J-SOX)の担当 | 内部統制・内部監査 | 文書化の更新だけでなく、統制の見直しに関わった部分 |
| 金融機関のコンプライアンス・リスク管理部門 | 規制対応・非財務リスク | 態勢の企画や高度化に関わった範囲 |
| 情報システム・セキュリティ管理部門 | サイバー・IT統制 | 技術対応の先にある統制・規程の改善 |
| 総務・危機管理・BCPの担当 | BCP・危機管理 | 計画の策定から訓練・見直しまでの一連 |
同じ監査経験でも、応募先が内部統制の領域なら「監査計画と指摘の改善」、サイバー・IT統制の領域なら「IT内部統制の評価」と、先頭に置く案件が変わります。職務経歴書は1枚を使い回さず、応募先の領域ごとに冒頭の1件を選び直す前提で作ると、後の手順が楽になります。
リスクコンサルタントの職務経歴書で見られるポイント
書類で確かめられるのは、リスクを見つけて終わりではなく、評価し、改善を提案し、実行まで進めた経験があるかです。
4社の募集要項に共通するのは現状把握・評価・改善提案・推進
| 企業・募集 | 主な領域 | 業務内容に出てくる言葉 |
|---|---|---|
| PwC Japan有限責任監査法人 リスクコンサルタント【GRC】 | 金融機関・事業会社のリスク管理 | リスクマネジメントのフレームワークやツールを構築・高度化、リスクマップ整備、リスク評価手法整備、KPI/KRI設定、リスク管理態勢整備支援 |
| あずさ監査法人 リスクコンサルタント(有事再発防止支援、GRC) | 内部統制・内部監査・不正対応 | 有事対応後の再発防止支援、内部統制(J-SOX、US-SOX、IT監査)対応、内部監査の品質評価対応、セキュリティ管理フレームワークを用いた監査やリスク分析 |
| 東京海上ディーアール ビジネスリスク部門 | 危機管理・BCM | 海外プロジェクトや新規事業のリスクマネジメント、ビジネスプロセス改革をはじめとする経営コンサルティング、危機管理、災害対策・BCM等のコンサルティング、調査研究活動 |
| ニュートン・コンサルティング リスクマネジメントコンサルタント | ERM・BCP/BCMS・危機管理など | 顧客ヒアリングによる現状把握、ニーズの分析、提案書の作成、プロジェクトマネジメント、ドキュメント作成 |
領域が違っても、4社とも業務を、現状を把握して評価し、改善を提案して進める側の言葉で書いています。社内で規程を守らせてきた経験は、そのままでは運用側の記述に見えます。どの段階で自分が判断したかを書き足すと、募集要項の言葉に近づきます。
領域は公的な枠組みの名前で示す
案件の領域は、社内の呼び名ではなく公的な枠組みの名前で書くのが基本です。BCPなら内閣府の事業継続ガイドライン(令和5年3月)、サイバーなら経済産業省が2023年3月24日に公開した「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」が代表的です。内部統制は、金融庁の企業会計審議会が2023年4月7日に評価・監査の基準の改訂意見書を公表しています。
たとえば「BCP見直しプロジェクト」と書くより、「事業継続ガイドライン(令和5年3月)を参照し、テレワーク下での意思決定手順を追加した見直し」と書く方が、何を基準に判断したかが伝わります。ガイドラインの名前は、自分が実際に参照した場合だけ書きます。
職位によって求められる書き方が変わる
PwC Japan有限責任監査法人のリスクコンサルタント【GRC】は、一般の応募要件に「金融機関等のリスク管理業務の経験」「事業会社等のリスクマネジメント関連業務の経験」を並べています。マネジャー以上で求めるのは、リスク管理の企画や高度化、グループ全体の内部統制の見直しを「リードした」経験です。
あずさ監査法人のオペリスク・コンプラリスク管理の募集も、アソシエイト〜シニアアソシエイト向けは関連経験を「有することが望ましい」とし、マネジャー〜シニアマネジャー向けは「有すること」と必須の扱いです。担当者として応募するなら関わった範囲の正確さ、管理職として応募するなら自分が率いた範囲と人数を、書類の中心に置きます。
担当者か管理職かで書類の中心が変わる以上、次に迷いやすいのは、手持ちの案件のうちどれを冒頭に据えるかです。代表案件と応募先の領域が一致していれば、自分で決められます。複数の領域にまたがって1件に絞れない場合は、応募先の領域と職位に照らして、最初に読まれる1件を転職支援の担当者と相談して決める方法もあります。
経歴別に強調すべき実績
PwC Japan有限責任監査法人やあずさ監査法人は、管理職に「リード」した経験や関連経験の保有を求めています。ここはリメディの見解ですが、手続を回した部分と見直した部分は分けて書くことを勧めます。見直しに関わった案件が少ない人は、件数を並べるより、その1件を深く書く方が要件の言葉に近づきます。
以下のAfterに入る「◯」は、読者自身の実績に置き換える前提の枠です。持っていない成果を書き足すためのものではありません。
事業会社の内部監査部門
あずさ監査法人の内部監査の募集は、応募条件を「内部監査業務あるいはコンプライアンス管理の実務経験者」とし、業態は問いません。業務内容にはリスクアセスメントプロセスの構築、監査プログラム作成、品質評価態勢の構築が並びます。監査の実施回数より、監査計画をどう組んだかを書く方が、この言葉と重なります。
- Before:内部監査部にて、年間監査計画に沿って子会社監査を実施。
- After:対象範囲は国内外子会社◯社の購買・販売プロセス。役割はリスク評価に基づく監査項目の選定、往査、指摘の取りまとめ。結果として指摘◯件のうち承認権限の重複など◯件について、規程改定の提案とフォローアップ監査を担当。
内部統制(J-SOX)の担当
J-SOXの経験と言葉が重なるのは、あずさ監査法人のリスクコンサルタント(有事再発防止支援、GRC)の募集です。業務内容に挙がるのは、「内部統制(J-SOX、US-SOX、IT監査)対応」と「デジタル技術を活用した最適な内部統制・モニタリングの構築支援」です。毎年の文書化の更新だけを書くと運用の記述で終わるため、統制を見直した年の案件を先に置きます。
- Before:J-SOX対応として、文書化の更新と評価を担当。
- After:対象範囲は連結子会社◯社の決算・財務報告プロセス。役割は不備の原因分析と統制の再設計の提案。結果として手作業の確認◯件を自動チェックへ置き換え、翌年度の評価手続を◯割減らした。
金融機関のコンプライアンス・リスク管理部門
あずさ監査法人のAML/CFTの募集は、応募条件に「コンプライアンスオフィサー、当局検査対応等」を例示しています。オペリスク管理の募集が関連経験として例示する範囲は広く、企画業務、子会社管理業務、内部監査業務、金融庁対応業務まで含みます。PwC Japan有限責任監査法人のプロジェクト例に、オペレーショナルリスクなどの管理手法の高度化支援が含まれる点も同じです。
- Before:コンプライアンス統括部で、当局検査の対応と社内規程の管理を担当。
- After:対象範囲は国内銀行の顧客保護・苦情管理態勢。役割は検査での指摘事項を受けた改善計画の策定と、各部署の進捗管理。結果として苦情の分類基準を見直し、報告までの日数を◯日から◯日へ短縮した。
情報システム・セキュリティ管理部門
情報セキュリティ監査・アドバイザリーを募集するあずさ監査法人では、応募条件の一つが「情報システム部門、内部監査部門でのIT内部統制評価」です。東京海上ディーアールのサイバーセキュリティ分野は、ネットワーク構成や規定類を預かって調査報告書を作り、あるべき姿を提言する業務です。技術的な対処に、規程や統制をどう変えたかを書き添えると、この業務に重なります。
- Before:情報システム部で、サーバー運用とアクセス権限の管理を担当。
- After:対象範囲は基幹システム◯本の権限管理。役割は棚卸しの手順設計と、不要権限の削除基準の策定。結果として退職者アカウントの残存を四半期ごとの点検で検出できる運用に変え、監査での指摘をなくした。
総務・危機管理・BCPの担当
東京海上ディーアールのビジネスリスク部門は、募集職務に「危機管理、災害対策・BCM等のコンサルティング」を挙げています。同社のサイバーセキュリティ分野でも、BCP規定作成などの実務が歓迎条件の一つです。計画書を作った事実だけでなく、訓練の結果を受けて何を直したかまで書くと、BCMの一連として読めます。
- Before:総務部で、BCPの策定と年1回の防災訓練を担当。
- After:対象範囲は本社と◯拠点の地震・システム障害を想定した事業継続計画。役割は重要業務の選定、初動手順の策定、訓練の企画。結果として訓練で見つかった連絡網の不備◯件を手順に反映し、安否確認の回答完了までの時間を短縮した。
書類選考で落ちやすい書き方
落ちやすいのは、経験が足りない書類より、判断した場面が読み取れない書類です。表現ごとに、伝わりにくい理由と直し方を並べます。
| 書類でよく見る表現 | 伝わりにくい理由 | 直し方 |
|---|---|---|
| 規程を整備した | 何を問題と見て、どこを変えたかが分からない | 改定前の問題、変えた条項の種類、改定後の運用を書く |
| 監査に対応した | 監査を受けた側か、実施した側かが分からない | 「被監査部門として資料を準備」「監査人として往査」と立場を明記する |
| リスク管理全般を担当 | 範囲が広すぎて、得意な領域が見えない | リスクの種類(信用・オペレーショナル・コンプライアンスなど)と対象組織を絞る |
| 体制を構築した | 自分の役割と関わった人数が分からない | 主担当か支援か、関与した部署数、自分が決めた事項を書く |
「規程を整備した」「監査に対応した」で止まる
この二つは、社内では十分に通じる言い方です。それでも採用側から見ると、整備の前に何が問題で、整備の後に何が変わったかが抜けています。改定前と改定後を一文ずつ足すだけで、改善提案の実績に変わります。
運用した立場と評価・設計した立場が混ざる
同じ案件の中に、規程を運用した部分と、統制を評価・設計した部分が混ざっていることは珍しくありません。両方を一つの文で書くと、評価した側の経験まで運用の記述に埋もれます。案件ごとに「運用」「評価」「設計」のどれに当たる作業かを分けて書くと、職位の要件と照らしやすくなります。
伏せたつもりで会社や事案が特定できる
あずさ監査法人のAML/CFTや内部監査の募集が扱うのは、当局検査対応や金融犯罪対策といった機微な領域です。東京海上ディーアールは応募の秘密を厳守するとしつつ、職務経歴書には専門性をできるだけ詳しく書くよう求めています。ここはリメディの見解ですが、詳しさと守秘を両立させるため、固有の情報を類型に置き換える書き方を勧めます。
| 書きたい情報 | 置き換え方 | 例 |
|---|---|---|
| 勤務先・取引先の社名 | 業種と規模 | 東証プライム上場の製造業、地方銀行 |
| 問題が起きた事案の内容 | 事案の類型 | 経費の不正、情報の持ち出し、システム障害 |
| 損失額・取引金額 | 規模の幅や件数 | 数億円規模、対象取引◯件 |
| 発生時期 | 年単位 | 2024年度 |
| 関係者 | 役職や部署 | 担当役員、海外子会社の管理部門 |
置き換えた後は、業界の人が読んで1社に絞り込めないかを確認します。報道された事案の時期と業種がそろうと特定できるため、その場合は業種の粒度を一段粗くしてください。勤務先の就業規則や守秘規程で開示できない情報は、置き換えても書きません。
募集要項から決める成果指標
成果指標は、応募先の募集要項に書かれた業務の言葉から選びます。領域ごとに、書く項目と指標、避けたい表現をまとめました。
| 募集要項で求められる経験 | 職務経歴書で書く項目 | 成果指標 | 避けたい表現 | 改善方向 |
|---|---|---|---|---|
| 内部監査(IT監査含む)、内部監査の品質評価対応(あずさ監査法人) | 監査計画の立て方、指摘の取りまとめ、フォローアップ | 監査対象の範囲、指摘件数、改善完了までの期間 | 監査を実施した | リスク評価から項目を選んだ根拠を書く |
| 内部統制(J-SOX、US-SOX)対応、モニタリングの構築支援(あずさ監査法人) | 不備の原因分析、統制の再設計 | 見直した統制の数、評価手続の削減幅 | 文書化を担当した | 見直した統制と、その後の評価結果を書く |
| コンプライアンスオフィサー、当局検査対応(あずさ監査法人) | 指摘を受けた改善計画、各部署の進捗管理 | 改善項目数、対応部署数、報告までの日数 | 当局対応を担当した | 自分が決めた改善の優先順位を書く |
| リスク評価手法整備、KPI/KRI設定(PwC Japan有限責任監査法人) | 評価項目の設計、指標の定義と報告の仕組み | 設定した指標の数、報告の頻度、利用部署 | リスク管理を担当した | 経営への報告にどう使われたかを書く |
| IT内部統制評価(あずさ監査法人) | 評価範囲、手続の設計、改善提案 | 対象システム数、指摘の解消件数 | システム監査に関わった | 評価した統制の種類と結果を書く |
| 危機管理・BCM(東京海上ディーアール) | 重要業務の選定、手順の策定、訓練と見直し | 対象拠点数、訓練回数、見直した手順の数 | BCPを策定した | 訓練の結果を受けて直した点を書く |
1案件を3点で書く
厚生労働省のパンフレット「職務経歴書の作り方」は、職務内容欄に「仕事の具体的内容、処理方法、責任の範囲など」を書くよう示しています。ニュートン・コンサルティングの仕事内容も、現状把握から提案書の作成、プロジェクトマネジメントまでを一続きで並べています。
ここはリメディの見解ですが、この二つを合わせると、1案件は「対象範囲」「自分の役割」「指摘と改善の結果」の3点にまとめるのが書きやすい形です。対象範囲ではどの組織・プロセス・リスクを扱ったか、役割では評価・設計・推進のどれを担ったか、結果では何を見つけて何が変わったかを書きます。運用中心の案件でも、役割の行に判断の場面を1つ入れると、改善提案の実績として読めます。
数字にしにくい成果の書き方
リスク管理の成果は「事故が起きなかった」ことが多く、売上のように数字で示しにくいものです。その場合は、件数・範囲・期間・前後の変化のどれかで示すのが現実的です。指摘の件数、対象拠点の数、改善完了までの月数、手作業の確認が自動化された割合などが使えます。
厚生労働省のパンフレットも、実績欄には「可能であれば営業成績などの成果指標の数値を記載」と書き、エピソードの付記も認めています。数字を出せない案件は、誰の判断が変わったか、どの会議体で採用されたかといった経過で補えます。
分量はA4で1〜2枚、案件一覧は別紙にする
同じパンフレットは、職務経歴書をA4縦1〜2枚程度とし、プロジェクト一覧などを別紙で付ける場合は枚数が若干増えても差し支えないとしています。本紙で3点の形に詳しく書くのは応募先の領域に合う3件ほどで、残りの監査・プロジェクトは別紙の一覧で十分です。
東京海上ディーアールの職務経歴書の指定は「書式自由、専門性についてはできるだけ詳しく」です。専門性を詳しく書く指定がある応募先では、別紙の一覧に各案件の対象範囲と役割を1行ずつ添えると、本紙を長くせずに詳しさを出せます。
企業タイプ別の見せ方
本記事で確認した募集の採用元は、監査法人系のリスクアドバイザリー、保険グループ系のリスクコンサル会社、リスクマネジメントの専門ファームの3タイプです。先頭に置く経験も、この3タイプで変わります。
| 企業タイプ | 例 | 先頭に置く経験 |
|---|---|---|
| 監査法人系のリスクアドバイザリー | PwC Japan有限責任監査法人、あずさ監査法人 | 統制の枠組みと規制の名前が入る案件 |
| 保険グループ系のリスクコンサル会社 | 東京海上ディーアール、MS&ADインターリスク総研 | 危機管理・BCPの策定から訓練までの案件 |
| リスクマネジメントの専門ファーム | ニュートン・コンサルティング | 現状把握から提案・プロジェクトマネジメントまで一続きで担った案件 |
監査法人系のリスクアドバイザリー:領域と統制の枠組みを先に書く
あずさ監査法人は、内部監査、AML/CFT、オペリスク管理、情報セキュリティ監査と、領域ごとに募集が分かれています。応募する募集の業務内容にある言葉を、職務要約の1行目にそのまま入れると、どの募集に向けた書類かが一目で分かります。Big4各社のユニットごとの書き分けはBig4コンサルの職務経歴書で扱っています。
保険グループ系のリスクコンサル会社:危機管理・BCMの実務と文章力を書く
東京海上ディーアールのビジネスリスク部門が歓迎する知識の一つは、「分析力・表現力(文章や資料作成、プレゼンテーション)」です。MS&ADインターリスク総研も、求める人物像に文章作成やプレゼンテーションの能力を挙げています。策定したBCPや報告書の種類、説明した相手(経営会議、取引先など)を書くと、この要件に応えられます。
東京海上ディーアールの勤務地は現時点では東京のみですが、今後は国内外を含めて転居を伴う異動の可能性があると明記しています。応募前に、勤務地の条件を自分の事情と照らしておくと安心です。
リスクマネジメント専門ファーム:現状把握から提案までの一連を書く
ニュートン・コンサルティングの応募条件は、大学または大学院卒業後に事業会社で3年以上の社会人経験です。仕事内容には現状把握、提案書の作成、プレゼンテーション、プロジェクトマネジメントが並ぶため、社内で課題を見つけ、関係部署に提案し、実行まで進めた案件を1件、時系列で書くと伝わります。
金融規制や内部統制など特定の枠組みを深めたい人は、監査法人系の募集から照らすと要件の言葉が合いやすいでしょう。業種を問わず危機管理やBCPを扱いたい人、現状把握から提案・プロジェクトマネジメントまで一続きで担う働き方を優先する人は、保険グループ系や専門ファームの募集の方が合います。
企業タイプと先頭の経験の対応が見えたら、次は自分の経験に合う領域の募集が今どれだけ出ているかを、実際の募集要項で読み比べる段階です。業務内容と応募条件の言葉を、手元の職務経歴書と照らしながら確認してください。
未経験・隣接経験者の補強方法
リスク管理部門に在籍した経験がなくても、応募の入口を示す募集はあります。ただし職位が上がるほど条件は厳しくなるため、書き方で補える部分と、経験を積んでから応募する部分を分けて考えます。
リスク管理部門に在籍していない場合
あずさ監査法人のオペリスク管理(アソシエイト〜シニアアソシエイト)の募集は、関連経験の例に企画業務、子会社管理業務、プロジェクト管理業務を挙げる点が特徴です。業務経験がなくても、強い希望を持つ人を応募対象に含めています。同法人の情報セキュリティ監査・アドバイザリーの募集にも、監査未経験から入ったメンバーが多いという説明があります。
経営企画や子会社管理の出身なら、子会社の管理規程や報告ルールを作った案件を、統制の設計として書けるはずです。情報システム部門の出身なら、権限管理や障害対応の手順を作った案件が、IT内部統制の言葉に重なります。
運用だけで見直しに関わっていない場合
決められた手続の運用だけで、見直しに関わった案件がない人もいるでしょう。その場合は、運用の中で見つけた問題を上長に報告した記録や、手順書の改善案を出した経験を探します。採用されなかった提案でも、何を問題と考え、どう直すべきだと考えたかは書けます。
マネジャー以上で応募する場合
管理職での応募は条件が一段厳しくなる点に気をつけてください。あずさ監査法人のリスクコンサルタント(有事再発防止支援、GRC)は、マネジャー以上に概ね計5年超の経験とプロジェクト等のマネジメント経験を求めています。同法人のオペリスク管理(マネジャー〜シニアマネジャー)は、関連経験を必須とし、複数のプロジェクトの同時履行や業務変化への耐性が高いことも条件です。
この条件に届かないまま管理職で応募すると、書類の段階で要件との差が目立ちます。率いたチームの人数、同時に進めた案件の数、予算や期限の管理範囲を書けない場合は、担当者の職位で応募するか、準備期間を置くかを比べてください。その判断はリスクコンサルへの転職難易度で詳しく扱っています。
応募先ごとに書き分ける手順
厚生労働省のパンフレットは、職務経歴書を複数の応募先に使い回すことは適当でないという立場です。そのうえで、経験をすべて書き出したマスターシートを作り、応募先ごとに必要な事項を選ぶ方法を勧めています。
マスターシートから案件を選ぶ
- これまでの監査・プロジェクト・規程改定を、3点の形ですべて書き出す
- 各案件に、内部統制・内部監査、規制対応、サイバー・IT統制、BCP・危機管理のどの領域に当たるかを付ける
- 各案件で担ったのが「運用」「評価」「設計」「推進」のどれかを付ける
- 応募先の募集要項の業務内容と応募条件から、言葉が重なる案件を3つ選ぶ
IT内部統制の評価とサイバーセキュリティの体制づくりのどちらに出すか決めきれない人は、IT監査とサイバーGRCコンサルの違いで仕事内容と成果物の違いを確かめてから、案件の選び方を決めると迷いが減ります。
先頭の案件と職務要約を入れ替える
応募先が変わったら、まず職務要約の3行と先頭の案件を入れ替えます。職務要約の1行目に応募先の領域、2行目に代表案件の対象範囲と役割、3行目に結果を置く形が基本です。資格・スキル欄は、応募する募集の優遇条件に挙がる資格を先に並べます。たとえばあずさ監査法人のオペリスク管理の募集では、歓迎するスキルにCIA、CISA、CFE、CISM、USCPAが挙がっています。
書類の指定を確認する
提出方法は企業ごとに違います。東京海上ディーアールは、履歴書(JIS規格、写真貼付、希望する職務内容を明記)と職務経歴書を郵送で提出する方法を示しています。応募書類は返却されません。Webフォームで応募する企業と同じ感覚で準備すると、履歴書の希望職務欄を書き漏らしやすいので注意してください。
面接で深掘りされる項目
厚生労働省のパンフレットは、面接では職務経歴書の記載内容に基づいて質問されることが多いと説明しています。書類に書いた3点は、そのまま面接の質問の起点です。
書類の記載ごとに確認されやすい点
| 書類の記載 | 確認されやすい点 | 準備する材料 |
|---|---|---|
| 対象範囲 | なぜその範囲を選んだか、範囲外のリスクをどう扱ったか | リスク評価の考え方を説明する1分の話 |
| 自分の役割 | どこまで自分で決め、どこから上長・他部署の判断だったか | 判断した場面と、その根拠 |
| 指摘と改善の結果 | 改善が定着したか、反対した部署をどう説得したか | 改善後の運用状況と、説得の経緯 |
| 伏せた情報 | 守秘の範囲でどこまで話せるか | 置き換えた表現のまま話せる説明 |
伏せた情報は、面接でも同じ置き換えのまま話します。書類で業種と規模に置き換えた会社名を面接で口にすると、守秘の判断が甘いと受け取られかねません。書類と同じ言い方で説明できるよう、事前に声に出して確認しておきます。
選考の流れを公開している企業
ニュートン・コンサルティングは、書類選考の後にオンライン一次面接(60分)、オンライン二次面接(90分)、対面の最終面接(60分)を経て内定とし、二次面接の前に適性検査があると公開しています。東京海上ディーアールは、書類選考、筆記試験、面接を実施すると記載しています。PwC Japan有限責任監査法人のリスクコンサルタント【GRC】は、選考の結果に関わらず10日間以内に連絡するとしています。
本記事で確認したあずさ監査法人の募集要項には、面接の回数の記載がありません。回数の分からない応募先では、どの段階でも同じ代表案件を深く話せるよう、書類の3件それぞれに5分程度の説明を用意しておくと安心です。
リスクコンサルタントの職務経歴書を相談すべきケース
ここまでの手順で書き上げられる人もいれば、先頭の案件や伏せ方で手が止まる人もいるはずです。提出前の5項目で書類を点検したうえで、自分で進めてよいケースと、相談したほうが早いケースを表で見分けてください。
提出前に確認する5項目
- 職務要約の1行目に、応募先の募集要項にある領域の言葉が入っているか
- 案件ごとに、運用・評価・設計・推進のどの立場かが読み取れるか
- 各案件が対象範囲・自分の役割・指摘と改善の結果の3点で書けているか
- 社名・事案・金額を置き換えた後に、1社に特定できる情報が残っていないか
- 書式・枚数・提出方法など、応募先の書類の指定に合っているか
自分で進めてよいケースと相談したほうが早いケース
| 自分で進めてよいケース | 相談したほうが早いケース |
|---|---|
| 応募先の領域と、自分の代表案件の領域が一致している | 経験が複数の領域にまたがり、先頭の案件を決められない |
| 評価・設計・推進のいずれかに当たる案件が3つある | 運用中心の案件しかなく、判断の場面を書き出せない |
| 伏せ方の判断に迷う情報がない | 当局検査や有事対応など、伏せ方の判断が難しい案件が中心 |
| 担当者の職位で応募する | マネジャー以上で応募し、率いた範囲の書き方に迷う |
表の「相談したほうが早いケース」に一つでも当てはまるなら、書き直しを重ねるより、コンサル領域の転職を扱う担当者に案件の選び方と伏せ方を見てもらう方が早く仕上がります。下の担当者から、経歴の近い人を選んで相談を予約できます。
よくある質問
社外秘の監査報告書や改善計画の内容は、職務経歴書に書いてよいですか?
報告書そのものの内容や数値は書かず、対象範囲・自分の役割・結果を、業種や事案の類型に置き換えて書きます。勤務先の就業規則や守秘規程で開示できない情報は、置き換えても書きません。置き換えた後に1社へ特定できないかも確認してください。
規程の運用だけを担当してきた場合、どう書けばよいですか?
役割の行は、たとえば「役割:月次の権限点検を担当。不要権限の残存を上長へ報告し、削除基準の改定案を提出」のように、運用の中で自分が判断した場面を1文で書きます。点検の対象や報告の内容は、読者自身の記録に置き換えてください。
CIAやCISAなどの資格はどこに書けばよいですか?
資格欄に正式名称と取得年月を書き、応募する募集の優遇条件に挙がるものを先に並べます。あずさ監査法人の情報セキュリティ監査・アドバイザリーでは、システム監査技術者、情報処理安全確保支援士、CISA、CISMが優遇条件です。資格は案件の3点の代わりにはならないため、案件の記述と分けて書きます。
英語の経験は書いたほうがよいですか?
英語を使った業務があれば書きます。あずさ監査法人の内部監査の募集は「英語を使った業務の経験」を優遇条件に挙げ、AML/CFTの募集では英語が応募条件の一つです。海外子会社の監査や英文の規程作成など、英語で何をしたかを案件の中で書くと伝わります。
内部統制とBCPなど、複数の領域にまたがる経験はどう並べますか?
厚生労働省のパンフレットが示す「キャリア式」のように、職務内容の類型ごとにまとめる書き方が使えるでしょう。応募先の領域に合う類型を先頭に置き、他の領域は後ろにまとめます。時系列で並べる場合も、職務要約では応募先の領域の案件を先に書きます。


