
監修者
リメディ株式会社 ディレクター
馬越 雄司 | MAGOSHI Yuji
神戸大学を卒業後、阪急阪神ホールディングスに新卒入社。経理事業部に配属となり、グループ企業5社を担当。担当企業の決算業務や税務、IFRS改正対応業務に従事。
その後リクルートに転職しキャリアアドバイザーとして、候補者様に徹底的に向き合いながら、20代から50代まで様々な業界・職種の方のキャリア支援に従事。結果として、新人賞をはじめ、顧客価値貢献・チーム貢献に関する複数の賞を受賞。
現在はディレクターとして、M&A業界、戦略・総合コンサルティングファーム、メガベンチャー企業に特化した転職サポートを行い、業界トップクラスの支援実績を誇る。
本記事のポイント
銀行の不動産融資から不動産ファンドへ転職できる?
ノンリコースローン、REIT・ファンド向け融資、収益不動産融資の経験者は、デット調達やアクイジションを中心に直接応募を検討できます。DBJアセットマネジメントはノンリコースローン経験を取得担当の対象に含め、ファーストブラザーズも金融機関の不動産関連実務をAM職の応募要件にしています。
デット調達、取得、AMのどれを選ぶべき?
融資条件・契約・レンダー調整に強い人はデット、物件CF・評価・調査に強い人は取得、モニタリング・条件変更・借換えに強い人は期中AMが最初の候補です。同じ融資経験でも、本人が担った判断と実行で入口を選びます。
銀行の与信とファンドの投資判断は同じ?
同じではありません。レンダーは元利金回収と下方耐性を重視し、エクイティ投資家は損失を先に負担しながら上振れ施策と売却まで判断します。破綻条件を見抜く力を持ち込み、収益を作る判断を補うのが転職後の課題です。
銀行の不動産融資からファンドへ転職できるか
銀行の不動産融資から不動産ファンドへの転職は、融資構造と物件収益を自分で分析・実行した経験があるほど直接接続しやすいルートです。2026年7月22日に確認したDBJアセットマネジメントのアクイジション求人は、ノンリコースローン業務を対象経験の一つに挙げています。ファーストブラザーズも金融機関等の不動産関連部門での実務をAM職の応募要件に含めています。
特に接続しやすいのは、物件CFを中心に返済可能性を検証し、専門家レポートを含む調査を束ね、融資条件と契約を詰め、実行後もコベナンツを管理した人です。担保付き法人融資でも、収益不動産の評価や出口を深く見ていれば候補になります。一方、住宅ローンや一般的な担保評価が中心なら、まずストラクチャードファイナンスや収益不動産融資を経験した方が、応募職務との距離を縮めやすくなります。
転職で変わるのは、リスクを見る方向です。銀行では貸出金の回収を守ります。ファンドでは投資家の資本を使い、収益を増やす施策、借入、運用、売却を決めます。下振れを抑える力は強みですが、それだけで上振れを作る仕事を代替できません。
デット調達・アクイジション・AMで生きる経験は違う
| ファンド側の職種 | 主な仕事 | 銀行経験の接点 | 新たに負う判断 |
|---|---|---|---|
| デット調達 | レンダー選定、条件交渉、契約、借換え | 稟議、融資条件、コベナンツ、ドキュメンテーション | 借り手として調達コストと柔軟性を選ぶ |
| アクイジション | ソーシング、評価、DD、取得、ファンド組成 | 物件CF、担保、ストレス検証、専門家調整 | 取得価格、上振れ施策、エクイティ収益を決める |
| 期中AM | 予算、PM監督、資金、報告、売却 | モニタリング、条件変更、借換え、レンダー報告 | 物件運営と投資家分配、出口を管理する |
| ファンド投資 | 運用会社・商品DD、投資判断、モニタリング | 信用分析、契約、投資先モニタリング | 外部運用会社とエクイティ商品を選ぶ |
ノンリコースローン組成者でも、全職種へ同じ強さで接続するわけではありません。銀行で借入人やスポンサーと条件を詰めた人はデット調達、物件調査とCFモデルに深く関わった人は取得、実行後のモニタリング経験はAMとの接点が明確です。
レンダーの問いを投資家の判断へ広げる
銀行員がファンド側へ移ると、同じ数字への問いが変わります。空室率が上がったとき、レンダーは元利金の支払いと契約条件への抵触を確認します。エクイティ投資家は、リーシング費用を増やすか、用途や運営を変えるか、保有を続けるか、売却するかまで選びます。
| 論点 | レンダーでの問い | ファンド側で加わる問い | 補完する学習 |
|---|---|---|---|
| 賃料・空室 | 返済余力は保てるか | 何に投資してNOIを戻すか | リーシング、PM、テナント戦略 |
| 修繕 | 担保価値と返済に影響するか | 支出が賃料・稼働・売却価格を高めるか | CAPEX採算、工事実行 |
| 借入 | 条件を守り回収できるか | 収益と柔軟性に合うか | 資本構成、複数レンダー比較 |
| 売却 | 元本を確実に返済できるか | 保有継続より投資回収が高いか | 買主層、出口価格、投資期間 |
面接で「銀行ではリスクしか見られなかった」と前職を下げる必要はありません。下方耐性を検証し、契約で規律を作る仕事はファンドにも不可欠です。その上で、リスクを見つけた後に、どの施策へ資本を配分するかまで担いたいと話す方が、転職理由は一貫します。
取得から売却までで価値を出しやすい局面
銀行経験が入社後に生きるのは、融資契約を読めることだけではありません。一つの案件の中で、前提の脆さを見つけ、承認条件を先回りし、資金面の選択肢を残す場面に価値があります。
- 初期検討: 物件CFの下振れ条件を置き、深掘りする前提を絞る。
- 調査: 専門家レポートとDDの論点を融資・取得条件へ反映する。
- 資金調達: 必要資料と承認条件を早くそろえ、取得日程の遅延を減らす。
- 保有: コベナンツ、返済、資金残高の兆候を捉え、借換えを前倒しする。
- 売却: 売却と返済の未処理論点を整理し、決済を確実にする。
ここで生む価値は、顧客やチームが「金融に詳しい人を得る」ことではありません。案件が止まる資金・契約上の論点を早く見つけ、選択肢を残すことです。入社後は、PMや仲介会社と協働し、収益改善と出口の実務を補います。
公式求人4社から見る入口と不足
| 公式求人 | 銀行経験との接点 | 担当業務 | 不足が出やすい点 |
|---|---|---|---|
| DBJアセットマネジメント | ノンリコースローンを対象 | 取得、投資家営業、組成、借入調達 | 買主としての取得価格と上振れ施策 |
| みずほ銀行 リアルアセット投融資 | 銀行・証券・リースの融資経験を歓迎 | 投融資、DD、契約、モニタリング | メザニン・エクイティのリスク負担 |
| ファーストブラザーズ | 金融機関の不動産実務を対象 | バリューアップ、期中、資金、PM監督 | テナント・工事・物件運営 |
| 野村アセットマネジメント | 金融運用との接点はある | ファンド投資DD、判断、モニタリング | ポジションによりファンド投資実務が必要 |
同じ会社でも募集ポジションごとに要件は異なります。公開求人の一例を職種全体の採用基準と受け取らず、応募時点の必須経験を確認してください。不動産ファンド全体の職種を把握するなら不動産ファンド転職ガイドも参照できます。
融資経験別の直接・迂回ルート
転職ルートは銀行名や役職ではなく、担当した融資の返済原資、ストラクチャー、本人の工程で分けます。法人信用だけでなく物件CFを見たかが、大きな分岐です。
| 銀行での主経験 | 直接狙う候補 | 迂回候補 | 応募時の証拠 |
|---|---|---|---|
| ノンリコースローン組成 | デット調達・取得 | 投融資、ファンド組成 | CF、条件、契約、実行の本人範囲 |
| REIT・ファンド向け融資 | デット調達、期中AM | ファンド投資 | 借換え、コベナンツ、モニタリング |
| 収益不動産融資 | 取得補助、デット | 専門金融会社、AM補助 | 物件CFと法人与信を分けた判断 |
| 法人融資+担保不動産 | 金融機関対応、デット補助 | ストラクチャード金融を経由 | 不動産評価、契約、専門家連携 |
| 住宅ローン中心 | 周辺職から検討 | 法人収益不動産融資 | 法人CF、SPC、信託、案件実行 |
職務経歴書は稟議の結論より判断過程を書く
「不動産融資○億円を実行」「大型案件を担当」だけでは、案件構造と本人の役割が分かりません。守秘義務に配慮した上で、物件種別、返済原資、スポンサー、本人の担当工程、主要論点、選択肢、最終判断への寄与を書きます。
| 銀行での記載 | 誤解される点 | ファンド向けに足す内容 |
|---|---|---|
| 物件評価を担当 | 鑑定の確認だけか不明 | CF前提の検証を書く |
| 融資条件を交渉 | 本人の裁量と相手が不明 | 争点、代替案、承認条件、合意までの動きを書く |
| 案件モニタリング | 定例報告の受領だけに見える | 兆候と条件変更を書く |
| 関係者を調整 | 誰を何のために動かしたか不明 | 関係者と専門家の役割を分ける |
自分がエクイティ投資判断をしていないなら、その経験があるように見せません。「レンダーとして下方耐性を検証した」と正確に書き、入社後に補う上振れ施策、取得価格、投資家報告を示します。職務経歴書の組み方は不動産ファンド職務経歴書ガイドでも確認してください。
面接では与信とエクイティの違いを語る
面接で準備したいのは、銀行の経験が生きる点より、違いを理解している証拠です。物件CFを見た案件を一つ選び、銀行では何を守り、ファンド側なら何を追加で決めるかを話します。同じ案件を両側の責任から説明すると、転職理由と学習課題がつながります。
- 銀行での判断目的を、回収・担保・契約条件に分ける。
- ファンド側で加わる取得価格・分配・売却を示す。
- CF・DD・契約・稟議の経験を、応募職種の具体業務へ対応させる。
- 未経験のPM監督、リーシング、投資家報告の学び方を答える。
- 応募企業のアセット、投資方針、担当工程を公式情報から説明する。
「融資する側より投資する側の方が面白そう」という関心だけで終えず、銀行で融資後の運営や売却まで見た経験から、なぜ資本配分の判断へ責任を広げたいのかを示してください。想定される準備論点は不動産ファンド面接対策でも確認できます。
応募前に作る案件メモと学習項目
職務経歴書と面接回答で共通材料にするのは、匿名化した一枚の案件メモです。融資前・実行・保有・返済の四局面に分け、本人が見た資料、作った分析、動かした関係者、判断、結果を書きます。
学習の起点は資格の数ではなく、応募先で不足する知識です。取得職ならエクイティCFと投資採算、AMならPM月次報告と年間運用計画、デット調達なら借り手側の資本構成と複数レンダー比較を優先します。学んだ用語ではなく、担当案件で問いがどう変わったかを説明できれば、準備は実務に近づきます。
銀行から不動産ファンドを目指す人の相談ポイント
相談前に、担当した融資をノンリコース、REIT・ファンド向け、収益不動産、一般法人融資へ分けてください。その上で、本人が担った工程を整理します。デット調達、取得、AMのどこへ最初に応募するかは、その一覧から決めます。
企業を比べる際は、想定年収だけでなく、担当アセット、自己勘定かファンドか、取得と期中の分業、投資委員会への関与、未経験工程の育成を確認してください。銀行で培った下方分析を核にしながら、収益を作る仕事をどこで学ぶかが企業選びの中心です。不動産AM全体の選択肢は不動産アセットマネージャー転職ガイドも参照できます。
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