東京大学を卒業後、株式会社クニエに入社。ヘルスケアチームにて、医療機関向けの業務改革およびDX支援に従事。製薬企業と医療機関の治験リクルートメント領域における新規サービス立ち上げプロジェクトでは、病院現場の業務プロセス整理やシステム要件の検証を担当。また、医療機関を対象とした医療DX推進プロジェクトに参画し、診療記録や問診票・同意書などの電子化を通じて、業務効率化と情報共有基盤の整備を支援。現在はこれまでのバックグラウンドを活かし、プロフェッショナルファームに在籍する / 志望する方向けの転職支援を行う。
フォレンジックへの転職は、監査・経理・内部調査とITのどちらを経験したかで応募職種が変わります。たとえばKPMGの会計士枠は、日本の公認会計士資格に加えて監査経験3年以上などを求めます。会計資料から不正を調べたい人と、電子データを保全・解析したい人では、比べる募集も準備も同じではありません。
応募先を選ぶ順序は、希望する調査、これまで担当した作業、職位ごとの条件です。KPMG、PwC、デロイトの公式募集をもとに、会計調査とデジタル調査の違いから確認しましょう。
会計・経理の調査か、電子データの調査かを選ぶ
最初に探す職種は、自分が調べた資料と担当した作業から絞れます。会計上の不一致を追う仕事と、データの収集・保全・分析を担う仕事を、職名の「フォレンジック」だけでまとめないでください。
| これまでの実務 | 検討する職種 | 先に照合する条件 |
|---|---|---|
| 監査・会計論点の検討 | フォレンジック会計士、不正調査 | 資格と監査経験、調査で担う作業 |
| 経理・内部調査・不正リスク対応 | 調査・予防を扱うコンサルタント | 対象となる勤務経験と、経理・分析等の条件 |
| IT・データ分析・デジタル調査 | デジタルフォレンジック、eディスカバリー | 技術実務と語学、希望職位 |
| 資格学習が中心で関連実務がない | 実務条件と例外が合う募集を個別確認 | 学習と仕事の経験を区別し、不足する作業を特定 |
会計士資格があっても、デジタル調査の経験を求める職種にそのまま当てはまるわけではありません。逆に、ITの実務を募集条件に含む職種もあります。資格名だけで候補を決めないことが、職種選びの出発点です。
不正対応の経験が複数の仕事にまたがり、会計調査とデジタル調査のどちらを希望するか決めきれない場合は、これまで扱った資料や作業を説明したうえで、応募職種について相談できる担当者を選べます。
フォレンジックは事実解明から予防・危機対応まで扱う
フォレンジックの仕事は、不正を見つけて終わりとは限りません。KPMGは事実解明の調査に加え、予防・発見体制の構築を挙げています。デロイトはF&CMについて、不正調査を起点に再発防止や危機対応まで支援すると説明しています。
デジタル分野では、デロイトが識別・保全・分析・開示という作業を示しています。PwCの今回の募集も、不正調査におけるデジタルフォレンジックと、eディスカバリー・訴訟支援が対象です。会計上の問題を検討した経験と、電子データを扱った経験は、担当作業を分けて説明する必要があります。
一つの会社の統制を継続的に運用・改善したい人は、外部の調査支援に絞る前に非ITのリスクコンサルで扱う仕事も比較してください。また、買収の財務調査や企業価値評価に関心があるなら、FASの部門比較で、取引支援との違いを確認できます。
KPMG・PwC・デロイトで応募条件を読み分ける
同じ不正対応でも、必須条件と歓迎条件は募集ごとに違います。以下は2026年10月17日に確認した公式募集の比較です。募集名が似ていても、職位や採用法人を省かずに読んでください。
KPMG FAS:会計士・コンサルタント・IT職は別条件
KPMG FASのForensic部門には、調査に関わる複数の職種があります。KPMGは今回のポジションについて、入社後に株式会社KPMG Forensic & Risk Advisoryへ全員出向し、本籍は株式会社KPMG FASと説明しています。
| 職種 | 原文で確認した条件 | 読み違えやすい点 |
|---|---|---|
| フォレンジック会計士 | 日本の公認会計士資格、監査経験3年以上、4年制大学卒以上 | 資格取得だけではない |
| フォレンジックコンサルタント | コンサルティングファーム経験者、または大手IT系事業者・メーカー・金融機関等に在籍し特に業務遂行能力の高い人。加えて下記の経験等のいずれかと、4年制大学卒以上 | 経理の年数だけで全条件を満たしたと判断しない |
| ITコンサルタント | 指定されたIT等の企業・領域での勤務経験に加え、インフラ、アプリケーション、サイバー、IT監査・調査のいずれかの経験と、4年制大学卒以上 | デジタル調査以外のITDD・PMI等も業務に含む |
コンサルタント枠で追加して求める経験等は、次のいずれかです。前段の勤務経験と併せて照合してください。
- 込み入った議論やレポート作成に対応できる高度な英語力
- データ分析・統計
- 業界特有の不正リスク発見に役立つ高度な専門知識
- 上場企業や大企業での経理業務3年以上
IT職では高度な英語力を優遇条件にしています。同じページでも条件の位置づけは一律ではありません。また、記載する職務は雇入れ直後の範囲で、業務変更の可能性も注記されています。
PwC:デジタル調査の経験と英語を確認する
PwCリスクアドバイザリー合同会社の当該募集は、デジタル調査の職種です。PwCはアソシエイト~シニアアソシエイトの条件に、フォレンジックまたはIT関連分野で2年以上の実務経験を挙げ、アソシエイトには第2新卒も可という注記があります。
マネージャー以上はフォレンジック関連分野6年以上に加え、EDRMと関連プロセス、eディスカバリーツールの知識・実務を求めます。プロジェクト管理や関係者対応、リーダーシップ、日英の業務対応なども条件です。年数だけで職位を選ばないようにしましょう。
PwCは応募資格欄に、学士学位または同等のものと、TOEIC850相当以上のビジネスレベル英語を記載しています。さらに、Forensicを希望する具体的な理由を書いた志望動機書が必須です。デジタル分野の資格は優遇として挙げており、実務経験の条件と分けて確認できます。
デロイト:歓迎経験と英語不問の範囲を押さえる
合同会社デロイト トーマツ/ファイナンシャルアドバイザリーのF&CM募集は、応募資格欄に歓迎条件として経験を列挙しています。会計士またはUSCPA、監査業務3年以上が望ましいとする記述のほか、コンサルティングやコンプライアンス、デジタル調査などの経験も挙げています。
当該募集は英語力不問です。ただし、この条件をPwCの技術枠へ当てはめたり、歓迎経験の記載から自分の応募可否を確定したりはできません。希望する調査領域とこれまでの実務を、この募集の仕事に照らして確認してください。
年収は職位と年俸・業績賞与の内訳で比べる
待遇を比べる基準は、提示される職位と内訳です。KPMGの公式募集は年俸制に業績賞与を加える形で、処遇は経験・能力を考慮して応相談と記載しています。
同じ調査分野でも、実作業を担当するのか、案件を管理して顧客へ説明するのかで、求める経験は別です。リメディの見解として、金額を比べる前に担当範囲と職位を確かめることを勧めます。面談や条件提示で聞きたいのは、次の項目です。
- 初年度の固定部分と業績賞与の見込額を、分けて示してもらえますか。
- 提示された職位では、調査実務とプロジェクト管理をどこまで自分が担いますか。
- 不正調査、予防支援、テクノロジー支援の担当割合はどう決まりますか。
職位や待遇を自分で比較する際は、下の検索でコンサル・専門職の求人を確認できます。初期条件は広い職種区分のため、フォレンジックの募集があるか、扱う調査や応募条件が合うかを、遷移先の求人票で確かめてください。
調査の目的、担当した作業、自分の判断を職務経歴書に書く
応募書類には、担当した作業と判断を書きます。「監査に従事」「データ分析を担当」だけでは、不正調査のどの作業を任せられるかを読み取れません。以下は公式募集の業務から考えた、リメディの準備提案です。
会計・内部調査の経験は、何を疑い、どう確かめたかを示す
会計資料の照合や内部調査を経験した人は、調査の目的と、説明の不一致を確かめた手順を振り返ってください。資料を集めた作業と、調べる順序を決めた判断を区別すると、本人が担当した内容を具体的に示せます。
監査経験を不正調査の経験として書き換える必要はありません。監査で検討した会計論点、その検討に使った資料、報告した内容を説明し、調査業務で新たに身につけたい作業を添えます。事業会社の経理経験者も、決算処理と不正対応に関わった作業を分けて記載しましょう。
IT経験は、使用ツールより保全・処理・分析の担当を明確にする
デジタル調査の経験は、担当した工程まで書くと具体的です。使用したツールと、どこから専門家や上位者へ引き継いだかをまとめてください。開発やシステム運用の経験しかない場合は、電子証拠の調査実務と混ぜないことが前提です。
調査対象の社名や機密資料を示す代わりに、調査の目的、採った手順、自分が迷って判断した点を説明しましょう。チーム全体の成果と本人の担当を区別すれば、機密を伏せたまま経験を具体化できます。
面接では希望する調査と守秘の範囲を説明する
志望理由は、希望する調査の作業まで具体的に準備します。PwCの技術枠はForensicを希望する理由を記した志望動機書を求めています。「不正をなくしたい」という関心に加え、電子データを扱う仕事を選んだ理由と、それまでの経験を説明してください。
デロイトのように危機対応まで扱う募集なら、事実を確認する工程と、その後に関係者へ説明する工程のうち、どの仕事を担いたいかを言葉にします。応募先に伝える内容は、経験済みと未経験に分けて用意すると、業務の希望も伝えやすくなります。
面接用には、開示できる一つの案件を選び、目的から報告までを話せるように準備しましょう。実際の出題を示すものではなく、募集業務に沿って経験を振り返る方法です。FAS全般の準備を確認したい場合は、FAS業界の面接対策も利用できます。
フォレンジック転職でよくある質問
公認会計士資格はどの職種でも必須ですか?
職種ごとに違います。KPMGは日本の公認会計士資格を求める会計士枠と、コンサルタント・IT枠を分けています。自分が応募する職種の条件を確認してください。
英語が得意でなくても応募先を探せますか?
デロイトF&CMの当該募集は英語不問と記載しています。他社の技術職などには異なる語学条件があるため、英語不問の説明をフォレンジック全体へ当てはめないでください。
デジタルフォレンジックだけを担当できますか?
今回の募集名だけでは専任配属までは分かりません。KPMGのIT職はITDD・PMI等も扱います。希望する作業の割合と、配属後の業務変更の範囲を確認しましょう。
不正調査そのものの経験がなくても検討できますか?
監査・経理やITなどの関連実務を条件に含む募集があります。「調査は未経験でも関連実務はある場合」と「関連実務も未経験の場合」を区別し、該当する経験と例外、共通条件を一つずつ照合することから始めてください。
自分で応募する人と、職種選びから相談する人
希望する調査と経験・資格・語学の条件が一致し、守秘を保って担当実務を説明できる人は、公式募集から応募準備を進められます。会計資料を調べたいのか、電子データを扱いたいのかが定まれば、候補の職種名も具体的になります。
社内の統制を継続運用したい人には、内部監査やGRCも比較対象です。外部調査を希望していても、経験が複数領域にまたがる場合や管理職の担当範囲が読めない場合は、職種・職位の選択から整理するとよいでしょう。
相談相手を選ぶ前に、希望する調査、説明できる実務、確認したい職位の条件をまとめてください。会計調査とデジタル調査のどちらを中心に考えるかを伝えると、担当者との面談で確かめる内容が具体的になります。



同じ部門の募集でも、条件を横につなぎ合わせないでください。経理経験で検討する職種と、会計士資格・監査経験を求める職種を別々に読み、応募書類には該当する実務を先に書くと、確認すべき不足条件が分かります。