
監修者
リメディ株式会社 ヘッドハンター
井上 晶斗 | INOUE Akito
大阪府立大学を中退後、教育系のベンチャー企業へ入社。新店舗の立ち上げと全店舗管理を担当し、2年間で1店舗から12店舗へ増やす。立ち上げ業務からサービスの平準化までの一連の業務に従事。その後、エス・エム・エスに転職しキャリアアドバイザーとして、候補者様に徹底的に向き合いながら、20代から50代までの方のキャリア支援を行う。社内のキャリアアドバイザーの中で上位の成績を収めた後に、リメディに参画。現在は、M&A・不動産・建設業界でエグゼクティブ採用・転職支援に従事。
2026年9月に確認したM&A仲介5社の募集要項では、成約までを担うアドバイザー職に税理士資格を必須にした会社はありません。M&A業務の経験を必須にしない募集では、学歴や営業での成果が必須要件の中心です。資格が必須になるのは、ストライクグループやM&Aキャピタルパートナーズが募集する税務の専門職です。
税理士に限らず、会計事務所や税理士法人で顧問先の事業承継相談に関わってきた人は、アドバイザー職・仲介会社の税務専門職・事業承継コンサルの3つを比べて応募先を選べます。まず「案件を最初から最後まで運ぶ役割」と「専門家として論点を解く役割」のどちらを担いたいかを決め、承継相談・株価評価・組織再編で担った実務を募集要項の言葉で説明できるかを確かめましょう。
本記事のポイント|応募先は「案件を運ぶ役割か、論点を解く役割か」で決まる
3つの入口の違いは担う工程にあり、その差は募集要項の必須要件に表れています。M&A仲介のアドバイザー職は案件探索から成約までを受け持ち、税務専門職は他の担当者が進める案件で税務やスキームの論点を解きます。事業承継コンサルや税理士法人のM&A業務は、M&Aを承継手段の一つとして比べる立場です。
| 入口 | 担う役割 | 募集要項の必須要件(例) | 向いている人 | 最初に確認すること |
|---|---|---|---|---|
| (a) M&A仲介のアドバイザー職 | 案件探索、企業評価、買い手探し、条件調整、クロージングまでを一貫して担当 | ストライク:大学卒業以上(M&A業務未経験者歓迎) fundbook:営業経験1年以上 | 経営者と向き合い、成約まで自分で運びたい人 | 案件の見つけ方と、インセンティブの比重 |
| (b) 仲介会社の税務専門職 | 論点相談、スキーム検討、DDのサポート、企業評価、書面レビュー、打ち合わせへの同行 | ストライクグループ:公認会計士または税理士の有資格者 M&Aキャピタルパートナーズ:税理士として組織再編やM&Aの案件サポート経験2年以上 | 税務の判断を軸にM&A案件へ関わりたい人 | 担当する工程と、関わる案件の範囲 |
| (c) 事業承継コンサル・税理士法人のM&A業務 | 親族内承継・役職員承継・M&Aの比較検討、スキームの実行支援、事業承継税制の論点整理 | 税理士法人山田&パートナーズ(中途・専門職):税理士合格者または税理士試験科目1科目以上合格者 | 承継手段を比べるところから顧問先に伴走したい人 | M&A案件に関われる割合と、担当できる工程 |
上の表は入口どうしの比較です。次の表は、自分のいまの経験から入口を選ぶための目安として使ってください。
| 現在の経験 | 検討しやすい入口 | 先に補うこと |
|---|---|---|
| 税理士として、組織再編やM&A案件の税務サポートを2年以上担ってきた | (b)に直接応募。(a)も選択肢 | (a)を選ぶなら、案件を自分で探す経験の見せ方 |
| 顧問先の事業承継相談が中心で、M&Aの実行は未経験 | (a)または(c)。有資格者は、資格を必須にする(b)の募集も候補 | 買い手探しや条件調整に関わった場面の有無 |
| 法人顧問と決算・申告が中心(科目合格者を含む) | (a)の未経験者を受け入れる募集(営業や経営者折衝の経験を必須要件に含む会社が多い)、または(c)。有資格者は、資格を必須にする(b)の募集も候補 | 営業や経営者と条件を詰めた経験、M&A関連の実務 |
| 事務所に残ってM&A・事業承継の業務を広げたい | (c)。事務所内でFA・仲介として関わる道もある | 担当できる案件の工程と、他の専門家との連携体制 |
2行目や3行目に当てはまる人は、実務年数を必須にする(b)の募集には、まだ届かない場合があります。それでも入口は1つに限りません。有資格者なら資格を必須にする(b)の募集も候補になり、(a)の未経験者を受け入れる募集や、(c)で承継案件の実務を積む道もあります。
(a)(b)(c)のうち、いまの実務がどの必須要件に近いかを先に担当者と整理しておくと、応募する会社を選びやすくなります。
税理士・会計事務所出身者はM&A仲介へ転職できるか
応募できる募集はあります。ただし入口ごとに必須要件が違うため、税理士資格があるから一律に有利とはいえません。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag「M&Aマネージャー、M&Aコンサルタント/M&Aアドバイザー」)でも、この仕事に就くために特に学歴や資格は必要とされず、前職の例には会計事務所が挙がっています。
募集要項の必須要件は入口で変わる
確認した7職種のうち資格を必須にしているのは税務専門職の2職種で、アドバイザー職の必須要件は学歴や営業・経営者折衝での成果が中心です。2026年9月14日に各社の公式採用ページで確認した内容は、次のとおりです。
| 会社・職種 | 入口 | 必須要件 | 歓迎・補足 |
|---|---|---|---|
| ストライクグループ 公認会計士・税理士 | (b) | 大学卒業以上、公認会計士または税理士の有資格者、顧客や社内コンサルタントと円滑にやり取りできること | M&A関連業務、中小企業及びオーナーの税務顧問や事業承継に関する業務 |
| M&Aキャピタルパートナーズ コーポレートアドバイザー(税理士) | (b) | 税理士として組織再編やM&Aの案件サポート経験2年以上(有資格者のみ) | 所属はコーポレートアドバイザリー部 |
| ストライク M&Aコンサルタント | (a) | 大学卒業以上(M&A業務未経験者歓迎) | 新規法人営業、金融・コンサルティング業界での提案営業、財務会計の基礎知識 |
| M&Aキャピタルパートナーズ M&Aアドバイザー | (a) | 大卒以上に加え、金融業界の営業経験、公認会計士・弁護士の資格保有で営業志向、トップセールス等の経験のいずれか | 資格の記載は公認会計士と弁護士 |
| 日本M&Aセンター M&Aコンサルタント | (a) | ソリューション営業、融資営業、新規開拓、経営者折衝などで高い成果を残してきたこと | 銀行での融資営業経験など |
| M&A総合研究所 M&Aアドバイザー | (a) | 営業経験(有形・無形、個人向け・法人向けは問わない) | 中小企業オーナー向けの営業経験。配属先の一つに、税理士法人や会計事務所と提携して案件を探す会計提携部 |
| fundbook M&Aアドバイザー | (a) | 営業経験1年以上 | 経営者向けの新規開拓営業など |
表のアドバイザー職では、ストライクを除く4社が、営業や経営者折衝の経験を必須要件かその選択肢に入れています。M&Aキャピタルパートナーズのアドバイザー職は資格保有者も対象にしていますが、挙げている資格は公認会計士と弁護士でした。税理士としての経験は、資格名ではなく担ってきた仕事の中身で伝える前提で準備しましょう。
中小M&Aガイドラインで見る「仲介者」と「士業等専門家」の違い
入口の違いは、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月)の用語で見ると明確です。ガイドラインは、譲り渡し側と譲り受け側の双方と契約して支援する者を仲介者、一方とだけ契約する者をFA、税理士などの資格を持つ専門家を士業等専門家と呼んでいます。
| 立場 | 契約の相手 | 主な役割 | ガイドライン上の注意 |
|---|---|---|---|
| 仲介者 | 譲り渡し側・譲り受け側の双方 | 双方の意向を一元的に把握し、M&Aの成立を目指した助言・調整 | 一方の意向が反映されやすいバリュエーションやDDの結論を決定しない。DDは自ら実施すべきでない |
| FA | 譲り渡し側か譲り受け側の一方 | 依頼者にとって有利な条件でのM&A成立を目指した助言・調整 | 手数料の支払を受けるのは契約した一方から |
| 士業等専門家 | 顧問先などの依頼者 | 税務・会計・法務などの本来業務。マッチング支援等を行う者もいる | 仲介者やFAと同様の業務を行う場合は、仲介者・FAとしてガイドラインが適用される |
ガイドラインは、仲介者が評価やDDの結論を決めない場合、必要に応じて士業等専門家の意見を求めるよう依頼者へ伝えることも求めています。税務の論点を仕事の中心に置きたいなら、(b)か(c)の入口と相性がよいでしょう。ただし(b)は仲介会社の社内で案件の担当者を支える立場で、(c)は依頼者から直接相談を受ける専門家として関わる立場です。
会計事務所は仲介会社の案件の紹介元でもある
日本M&Aセンターは採用ページで、M&Aコンサルタントの業務に「会計事務所/金融機関の開拓及びフォロー」を挙げ、成約案件の6割は提携先経由だと説明しています。M&A総合研究所にも、税理士法人や会計事務所と提携して案件を探す会計提携部があります。仲介会社から見ると、会計事務所は案件の紹介元でもあるわけです。
ガイドラインも、M&Aを考える経営者は、まず顧問の士業等専門家、特に顧問税理士に相談することも多いと記しています。ここはリメディの見解ですが、紹介する側の事務所が何に迷い、どの段階で外部へつなぐのかを知っていることは、(a)で案件探索の進め方を話すときに使える経験です。
税理士・会計事務所で積んだ経験のうち評価されやすいもの
評価につながりやすいのは、経営者の迷いを税務の論点に分けて説明してきた経験です。ガイドラインが税理士に期待する支援には、株式や事業用資産の整理、経営者保証の解除に向けた助言、課税関係を踏まえたスキームの提案、税務DD、バリュエーションが並びます。
顧問先の事業承継相談を受けてきた経験
中小M&Aでは、名義株や所在不明株主、役員貸付金、簿外債務等が問題になりやすいと、ガイドラインは指摘しています。顧問先にこうした問題があれば弁護士などと連携して事前に整理しておくことが望ましい、というのがガイドラインの立場です。気づいた論点と、つないだ相手を具体的に話せれば、(a)でも(b)でも実務の中身が伝わります。
注意したいのは、顧問先で知り得た秘密を転職先の案件探しに使えない点です。税理士法第38条は、税理士業務に関して知り得た秘密を洩らしたり窃用したりすることを禁じ、税理士でなくなった後も同様と定めています。面接では顧問先の名前や案件の中身ではなく、相談を受けてから専門家へつなぐまでの進め方を話してください。
株式譲渡と事業譲渡の課税を経営者に説明してきた経験
ガイドラインによると、株式譲渡では、経営者個人の譲渡益は分離課税(税率20.315%)で課税関係が終わります。事業譲渡では対価が法人に入り、経営者へ配当などで還流させると総合課税(税率15.105%〜55.945%)の対象です。
この違いを経営者の手取りの問題として説明してきた経験は、ストライクグループの募集要項にある「M&Aスキームの検討及びリスク分析」と重なります。中小企業庁が2025年4月に公表した中小M&A専門人材向けのスキルマップでも、事前相談の段階でスキームに係る税務の知識を持つことが挙がっています。
株価評価や税務DDに関わった経験
ガイドラインは、中小M&Aの場合は時価純資産法で算定されるケースが多いとしたうえで、財産評価基本通達の純資産価額方式はこれに類似しており、税理士の業務知識でも対応可能と考えられると述べています。ただし判断が難しい場合は、M&Aを専門とする公認会計士などとの連携が必要です。評価の前提と、委ねた範囲を分けて話せるようにしておきましょう。
税務DDで行う手続として挙がるのは、経営陣や顧問税理士へのインタビュー、過去の税務申告書のレビュー、税務調査の把握、組織再編・資本取引の税務処理の把握などです。顧問税理士には資料の提供やインタビューへの協力が望まれるとされており、DDを受ける側で対応した経験も、出した資料と説明した内容まで話せば実務として伝わります。
税務実務と募集要項の言葉の対応表
次の表は、会計事務所での実務を、各社の募集要項に出てくる言葉に置き換えたものです。書類や面接では、左の列の経験を中央の列の言葉で説明してください。
| 税理士・会計事務所での実務 | 募集要項に出てくる言葉 | 書類・面接での伝え方 |
|---|---|---|
| 顧問先の事業承継相談 | 中小企業及びオーナーの税務顧問や事業承継に関する業務(ストライクグループ・歓迎要件) | 相談を受けた段階、比べた選択肢、つないだ専門家 |
| 名義株や役員貸付金などの整理 | 会計・税務等の論点の相談対応及びアドバイス(ストライクグループ) | 見つけた論点と、解消までに取った手順 |
| 株式譲渡・事業譲渡の課税の説明 | M&Aスキームの検討及びリスク分析(ストライクグループ) | 経営者に手取りの違いをどう示したか |
| 株価評価(純資産価額方式など) | 企業評価(M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク) | 評価の前提と、専門家に委ねた範囲 |
| 税務DDへの資料提供と説明 | デューディリジェンスにおけるチームサポート(M&Aキャピタルパートナーズ) | 出した資料、受けた質問、説明した内容 |
| 組織再編の税務 | 組織再編やM&Aの案件サポート経験(M&Aキャピタルパートナーズ・必須要件) | 担当した年数と、担った工程 |
| 弁護士や金融機関との連携 | 外部専門家チームとの連携(M&Aキャピタルパートナーズ) | 誰と、どの段階で、何を分担したか |
左の列で具体的に書ける行が多いほど、(b)の業務内容や歓迎要件に近い経歴です。行が少なくても、資格を必須にする(b)の募集は、学歴を含むほかの必須要件を満たす有資格者なら応募できます。経営者と条件を詰めた場面を語れるなら、(a)の選考で話せる経験もあります。
書き出した実務が応募先の必須要件と歓迎要件のどちらに当たるかは、候補の会社を挙げたうえで担当者と照らし合わせられます。
各社の募集要項から見る不足しやすい経験
不足しやすいのは、(a)なら案件を自分で探す工程、(b)ならM&A案件そのものの実務年数です。ガイドラインも、DDやバリュエーションといった中小M&Aの業務は直接的には税理士の業務に含まれず、中小M&Aに積極的に携わる税理士は限られるとの見方を示しています。
アドバイザー職で足りなくなりやすいのは案件探索と買い手探し
ストライクのM&Aコンサルタントの業務は、セミナーや提携先からの案件探索に始まり、秘密保持契約と企業評価による案件化、買収候補先の探索とトップ面談の調整、基本合意から譲渡契約までの支援へと続きます。M&Aキャピタルパートナーズはアウトバウンド営業で譲渡を検討する企業を探し、クロージングまで1人のアドバイザーが担う体制です。
顧問税理士は、相談が顧問先から持ち込まれる立場です。自分から経営者との接点をつくり、買い手候補に打診した経験がなければ、どう補うかを説明する準備が要ります。スキルマップも事前相談の業務として、潜在ニーズの掘り起こしや提携先との連携、ソーシング方法の提案を挙げています。
税務専門職で問われるのは組織再編・M&A案件の実務年数
M&Aキャピタルパートナーズのコーポレートアドバイザー(税理士)は、案件サポート経験2年以上を必須にしています。ストライクグループの公認会計士・税理士職は資格を必須とし、M&A関連業務や事業承継の業務は歓迎要件の扱いです。実務年数を必須にするか歓迎にとどめるかで、同じ税務専門職でも応募できる人の幅は変わります。
仲介担当に求められる「まとめ役」の力
仲介者は評価やDDの結論を自分では決めず、専門家を含む関係者の間で案件を進める立場です。スキルマップでも対関係者のスキルとして、他の機関や士業等専門家を含むチームの「ハブ」としての役割を担う力が挙がっています。
ここはリメディの見解ですが、顧問先に自分で税務判断を示してきた税理士ほど、仲介担当になると結論を専門家に委ね、双方の調整に回る場面が増えます。この変化を受け入れられるかを応募前に考えておけば、入社後の期待とのずれを小さくできます。
| 募集要項の要件 | 税務の経験で補いやすい部分 | 不足しやすい部分 | 補い方 |
|---|---|---|---|
| 案件探索、提携先の開拓(ストライク、日本M&Aセンター) | 経営者が会計事務所に相談を持ち込む流れの理解 | 自分から接点をつくる新規開拓 | 事務所内で承継相談の窓口やセミナーを担う |
| 企業評価、案件概要書(ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ) | 株価評価と財務諸表の読み込み | 買い手に向けて事業の魅力を伝える資料づくり | 評価の前提を経営者向けに説明した経験を書き出す |
| 条件調整、クロージング(ストライク、fundbook) | 課税関係を踏まえた手取りの説明 | 売り手と買い手の利害の調整 | 承継相談で関係者の意見をまとめた場面を振り返る |
| 組織再編やM&Aの案件サポート経験2年以上(M&Aキャピタルパートナーズ) | 組織再編税制の知識 | M&A案件での実務年数 | 事務所や事業承継コンサルでM&A案件に関わる |
狙いやすい企業タイプとポジション
税務の判断を強みとして使い続けたい人は(b)か(c)、成約まで自分で担いたい人は(a)が候補です。(a)の中では、会計事務所との提携を部署で持つ会社が、事務所側での経験を話につなげやすい応募先といえます。
仲介会社のアドバイザー職
ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ、fundbookのアドバイザー職は、案件探索から成約までを一貫して担う募集です。M&A総合研究所の会計提携部は税理士法人や会計事務所との提携で案件を探し、日本M&Aセンターは売り手企業と買い手企業を別の担当者が支援する「FA体制」を採っていると説明しています。
必須要件の表に挙げた5社のアドバイザー職の募集は、M&A業務の経験を必須にしていません。ただしM&Aキャピタルパートナーズは経験者向けの募集も別に出しており、主任や課長〜部長の採用では投資銀行(IBD)やFAS業界での経験かM&A仲介での成約実績を、提携先開拓のポジションではM&Aアドバイザーの経験を必須にしています。M&A業界へ未経験で移るときの準備は、M&A転職は未経験でも可能?有利な経験・採用状況・選考対策を解説でも確認できます。
仲介会社の税務専門職
ストライクグループの公認会計士・税理士職は、論点の相談対応、M&Aスキームの検討とリスク分析、提案書のレビュー、打ち合わせへの同行、案件の共同担当、社内コンサルタントの育成までを受け持ちます。M&Aキャピタルパートナーズのコーポレートアドバイザー(税理士)の業務は、論点相談、DDのチームサポート、企業評価や案件概要書の作成、外部専門家との連携です。
M&Aキャピタルパートナーズは、アドバイザー1人でソーシングからクロージングまで完結する体制で要所を外部専門家に頼ってきたものの、案件の増加に合わせて内製化のチームを立ち上げたと説明しています。税務専門職は、案件を運ぶ担当者を専門知識で支える役割だと理解しておくと、入社後の仕事を想像しやすいはずです。
事業承継コンサル・税理士法人のM&A業務
山田コンサルティンググループの事業承継コンサルは、親族内承継、役職員承継(MEBO)、第三者承継(M&A)を比べて実行を支援し、事業承継税制の論点も扱います。同社の事業承継型M&Aの募集では、承継プランの策定、ストラクチャーの検討、クロージングまでの支援、M&A後の資産承継の助言が業務に並びます。
事務所に残ってM&Aに関わる道もあります。中小企業庁の公表によると、M&A支援機関登録制度に登録されたFA・仲介業者は3,287件で、そのうち区分が「士業等専門家-税理士」の登録は484件でした(2026年8月20日時点)。税理士法人山田&パートナーズも採用ページでM&A業務を拡充していると説明し、職種紹介に「税理士 M&A・FA」を載せています。
募集要項に書かれた報酬の仕組み
年収は金額だけでなく、固定部分と成果で変わる部分の組み合わせで比べると入口の違いが見えてきます。各社の募集要項に書かれた報酬の仕組みを、金額を除いて並べると次のとおりです。
| 会社・職種 | 入口 | 固定部分 | 成果で変わる部分 | 確認したい点 |
|---|---|---|---|---|
| ストライク M&Aコンサルタント | (a) | アドバイザーの固定年収 | 個人業績に基づく上限なしのインセンティブ | インセンティブの算定基準と支給の時期 |
| M&Aキャピタルパートナーズ M&Aアドバイザー | (a) | 初年度の最低保証(月給と、賞与の前倒し支給) | KPIインセンティブ、M&A成約インセンティブ、決算賞与(いずれも保証なし) | 前倒し支給は入社後の年数に応じて縮小する |
| ストライクグループ 公認会計士・税理士 | (b) | 月額固定給(固定残業手当を含む) | 業績連動と人事評価による賞与 | 年収の幅のうち、月額固定給と賞与の配分 |
| M&Aキャピタルパートナーズ コーポレートアドバイザー(税理士) | (b) | 月額固定給と、固定インセンティブ | 業績連動インセンティブ、360度評価 | 業績連動部分の幅と、標準とされる水準 |
| 山田コンサルティンググループ コンサルタント(事業承継) | (c) | 年俸(経験・能力・前職給などを考慮して決定) | 会社業績に応じた特別賞与 | 提示される年俸の幅と評価の仕組み |
(a)の2社は、固定部分に成果で変わる部分を上乗せする設計です。M&Aキャピタルパートナーズのアドバイザー職では、初年度の最低保証に含まれる賞与の前倒し支給が、入社後の年数に応じて縮小すると書かれています。成約インセンティブが立ち上がる時期を面談で確かめておくと、入社後の収入の見通しを立てられるでしょう。
(b)も業績連動の部分を持つ点は同じで、税務専門職だから報酬が固定されるわけではありません。業界全体の年収水準や役職ごとの差はM&A業界の年収はいくら?仲介大手の平均年収と役職・在籍年数別レンジを解説で、応募先の候補はM&A仲介会社一覧|上場企業・ランキング・主要会社の特徴を比較で比べられます。
入口ごとの報酬の組み立て方が見えたら、次は実際の募集で条件を確かめる段階です。下のフォームでM&A仲介の求人を条件から絞り込み、候補にした募集ごとに必須要件と、成果で変わる部分の比重を見比べてください。
直接転職が難しい場合の迂回ルート
直接応募が難しいのは、実務年数を必須にする(b)の募集を狙うのに、M&A案件のサポート経験が年数に届かない場合です。そのときは、事務所内や事業承継コンサルで承継案件の実務を先に積むルートを検討します。(a)を狙う人も、経営者と条件を詰めた経験が少なく応募に迷うなら、同じルートを選べます。
| 前職での代表経験 | 直接/迂回 | 狙う職種 | 狙う企業タイプ | 足りない経験 | 書類・面接での見せ方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 税理士として、組織再編・M&Aの税務サポートを2年以上 | 直接 | 税務専門職 | 税務専門職を募集する仲介会社 | 仲介の案件進行への理解 | 担った工程と年数、専門家どうしの分担 |
| 事業承継相談と、経営者との条件のすり合わせ | 直接 | アドバイザー職 | 一気通貫型、会計事務所との提携部署を持つ仲介会社 | 新規開拓、買い手探し | 相談を受けてから外部につなぐまでの進め方 |
| 法人顧問と決算・申告が中心(科目合格者を含む) | 応募先の必須要件を満たせば直接も可(営業や経営者折衝の経験を必須要件に含む会社が多い)。迷うなら迂回 | アドバイザー職(M&A業務の経験を必須にしない募集) | 未経験者を受け入れる仲介会社 | 経営者との交渉、M&Aの工程の理解 | 経営者に提案し、判断を支えた場面 |
| 承継相談はあるがM&Aの実行はなく、実務年数を必須にする(b)を狙いたい | 迂回(学歴などの必須要件を満たす有資格者は、資格を必須にする(b)の募集へ直接応募も可) | 事業承継コンサル、事務所内のM&A業務 | 事業承継コンサル、M&A業務を持つ税理士法人 | M&A案件での実務年数 | 承継手段を比べた経験と、将来担いたい工程 |
| 株価評価やDDの判断を深めたい | 別ルート | FAS | FAS・会計系ファーム | 財務DD、バリュエーションの実務 | 評価の前提と、検証した論点 |
事務所内で事業承継・M&A案件に関わってから動く
ガイドラインは、税理士が仲介者やFAとして主導する中小M&Aで、日本税理士会連合会が運営する「担い手探しナビ」などを活用することも期待しています。担い手探しナビは、顧問税理士が関与先企業の窓口となって引継ぎ先を探すマッチングサイトで、利用申請をした税理士が無料で使える仕組みです。
所属する事務所がこうした業務やFA・仲介の業務を持っていれば、在籍したまま承継案件の工程を経験できます。M&A案件で担った工程と期間は、(b)の募集が必須にする「案件サポート経験」を書類で示すときの具体的な中身です。
事業承継コンサルで承継手段の比較を経験してから動く
事業承継コンサルでは、M&Aを最初から前提にせず、親族内承継や役職員承継と比べるところから関わります。山田コンサルティンググループの採用ページも、事業承継税制の論点検討や持株会社体制の構築支援を業務に挙げています。M&A以外の承継手段を選ぶ場面にも立ち会う点が、仲介会社との違いです。
迂回ルートを選ぶ場合も、将来どの入口へ応募するかを先に決めておけば、社内で希望する案件の種類をはっきり伝えられます。
FASでDDや企業評価を深めるルートとの違い
株価評価や財務DDを仕事の中心にしたい人は、仲介ではなくFASも比較の対象です。FASで見られる経験や出身別のルートは、会計士からコンサル・FASへ転職できる?出身別の転職ルートと評価される経験を解説で扱っています。仲介会社の税務専門職との違いは、どちらの立場で論点を解くかにあります。
なお、専門職として入社した後にアドバイザー職へ移る制度があるかどうかは、確認した募集要項には書かれていません。気になる場合は「専門職からアドバイザー職へ移る例や制度はありますか」と面談で尋ねてください。
職務経歴書で前面に出す実績
職務経歴書では、顧問先数や申告件数より先に、M&Aや承継の場面で担った工程を書きます。仲介会社の募集要項に並ぶのは「論点の相談対応」「スキームの検討」「案件サポート経験」といった、案件の中での役割だからです。
| 募集要項で求められる経験 | 職務経歴書に書く項目 | 数字の置き方 | 避けたい書き方 |
|---|---|---|---|
| 事業承継に関する業務(ストライクグループ・歓迎要件) | 相談の内容、比べた承継手段、つないだ専門家 | 担当した承継相談の件数と期間 | 顧問先の社名や、特定につながる業種・地域を書く |
| 組織再編やM&Aの案件サポート(M&Aキャピタルパートナーズ・必須要件) | 担当した再編の種類、担った工程、期間 | 担当年数、関与した案件数 | 「組織再編に精通」とだけ書く |
| M&Aスキームの検討及びリスク分析(ストライクグループ) | 比べたスキーム、示した論点、経営者が下した判断 | 比べた選択肢の数 | 税率や制度の解説だけで終わる |
| 新規法人営業・経営者折衝(アドバイザー職の歓迎・必須要件) | 経営者との面談、提案、合意までの流れ | 提案した件数と、合意に至った件数 | 「顧問先との信頼関係」と抽象的に書く |
顧問先を特定できる情報を書かないのは、税理士法第38条の守秘義務とも関わるためです。規模感は、件数や期間など自分の実績に置き換えられる数字で示しましょう。
入口別の書き換え例
同じ経験でも、応募する入口によって前に出す部分が変わります。◯の部分は、架空の数字ではなく自分の実績に置き換えてください。
| 応募する入口 | 伝わりにくい書き方 | 伝わりやすい書き方 |
|---|---|---|
| (a) アドバイザー職 | 顧問先を約◯社担当し、事業承継の相談にも対応 | 顧問先の事業承継相談を年◯件受け、株式譲渡と事業譲渡で経営者の手取りがどう変わるかを示したうえで、弁護士や金融機関へつなぐまでを担当 |
| (b) 税務専門職 | 組織再編税制に強い | グループ会社の合併・会社分割の税務を◯年担当し、税務上の論点の洗い出しと、複数のストラクチャーを比べる資料の作成を担った |
書類全体の構成や、面接で深掘りされやすい表現は、M&A仲介の職務経歴書の書き方|評価される実績・NG例・面接で突っ込まれる表現を解説で詳しく確認できます。
面接で伝える転職理由の組み立て方
転職理由は、担ってきた範囲・広げたい範囲・補い方の3つで話すと筋が通ります。「税理士の仕事に限界を感じた」のように前職を下げる言い方は避け、承継相談で関われた工程と、関われなかった工程の差から説明しましょう。
| 要素 | (a) アドバイザー職で話す内容 | (b) 税務専門職で話す内容 | 避けたい言い方 |
|---|---|---|---|
| 担ってきた範囲 | 承継相談で経営者の迷いを聞き、選択肢を示した場面 | 組織再編やM&A案件で担った税務の工程 | 「税務はひととおりできる」 |
| 広げたい範囲 | 相手探しから成約まで自分で運ぶこと | 案件の早い段階からスキームと論点に関わること | 「待遇を上げたい」だけで終える |
| 足りない部分の補い方 | 新規開拓の経験をどう補い、入社後に何を学ぶか | 仲介の進め方をどう理解してきたか | 「資格があるので問題ない」 |
| 立場の理解 | 仲介者は双方と契約するため利益相反に注意が要り、評価やDDの結論を決めないこと | 案件を運ぶ担当者を支える専門職としての役割 | 「顧問先を紹介できる」 |
仲介を選ぶ理由を話すときは、ガイドラインの定義を踏まえておくと説明がぶれません。双方の意向を一元的に把握して成立を目指す仲介者と、一方の依頼者にとって有利な条件を目指すFAのうち、自分がどちらを担いたいかを自分の言葉で話してください。
選考の流れは会社で異なります。ストライクとストライクグループの募集では、書類選考、一次面接、WEBの適性検査と最終面接の順です。M&Aキャピタルパートナーズのコーポレートアドバイザー(税理士)は面接3〜4回で、応募から内定まで1か月程度を想定していると記載しています。
今動くべき人・準備してから動くべき人
今応募してよいのは、応募先の必須要件と、対応表で具体的に書ける経験が重なっている人です。重なりが少ない場合は応募を急がず、足りない工程を1つ埋めてから動くと、選考で話せる内容が増えます。
| 入口 | 今応募してよい人 | 準備してから動く人 |
|---|---|---|
| (a) アドバイザー職 | 経営者と条件を詰めた経験があり、成果で変わる報酬を受け入れられる | 新規開拓の経験がなく、変動部分の比重に不安がある |
| (b) 税務専門職:資格を必須にする募集(ストライクグループ) | 大学卒業以上で、税理士資格がある。M&A関連業務の経験がなくても応募できる(歓迎要件の扱い) | 資格がまだない |
| (b) 税務専門職:実務年数も必須にする募集(M&Aキャピタルパートナーズ) | 税理士として、組織再編やM&Aの案件サポートを2年以上担ってきた | 資格はあるが、M&A案件のサポート経験が2年に届かない |
| (c) 事業承継コンサル・事務所内のM&A業務 | 承継相談の経験があり、承継手段の比較から関わりたい | 応募先がM&A業務を持つかどうかを確かめていない |
成約までの工程と成果連動の報酬を自分で引き受けたい人には、(a)が合います。一方、税務の論点を専門に扱う仕事を続けたい人は、(a)より先に(b)や(c)を検討したほうがよいでしょう。
ここはリメディの見解ですが、(a)と(b)で迷う人は、報酬の仕組みを比べた表で見た変動部分の比重をどこまで受け入れられるかを先に決めてください。(b)にも業績連動の部分があるため、税務専門職を選んでも変動がなくなるわけではありません。応募する順番は、この比重から決まります。
税理士からM&A仲介を目指す人が相談前に整理したいこと
相談の前に決めておきたいのは、入口の第一希望、対応表で説明できる経験、応募する会社の順番の3点です。3点が決まっていれば、応募先の比較や書類の準備を短い時間で進められます。
| 自分で進めてよいケース | 相談したほうが早いケース |
|---|---|
| 入口が決まり、応募先の必須要件を満たしている | (a)と(b)のどちらを先に受けるか決められない |
| 職務経歴書に、担った工程と年数を書ける | 担った工程を職務経歴書でどう書くか迷う |
| 報酬の仕組みを募集要項で比べ終えている | 成約インセンティブの算定や前倒し支給の扱いを複数社で比べたい |
面談や選考で確かめたい質問は、次のとおりです。
- 成約インセンティブは、案件規模、担当した工程、チーム内の配分のどれで決まりますか
- 賞与の前倒し支給が縮小する年以降、固定で受け取る部分はどう変わりますか
- 税務専門職は、案件のどの工程から関わることが多いですか
- 担当する案件は、自分の開拓、会社からの配分、提携先からの紹介のどれが中心ですか
- 専門職からアドバイザー職へ移る例や制度はありますか
表の右列に当てはまるケースがあるなら、上の質問を手元に置いて面談を使うと、(a)と(b)を受ける順番や、職務経歴書で前に出す工程を具体的に決めていけます。下のカードではM&A仲介の転職を担当するエージェントから相談相手を選んで予約でき、相談の進め方はM&A仲介・コンサルティングファーム特化型エージェントであるリメディのご紹介でも確認できます。
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