
監修者
リメディ株式会社 ヘッドハンター
緒方 隆恭 | OGATA Takayuki
東京大学を卒業後、三菱UFJ銀行に新卒入社。国内支店でMUFGの各種金融ソリューションの法人営業に従事し、銀行表彰を受賞。入社3年目で海外拠点に異動・駐在し、現地進出日系企業への融資・預金・為替デリバティブ商品等の法人営業を担当。
その後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に出向し、投資銀行本部にてカバレッジ業務に従事。上場企業のM&A(TOB・経営統合等)やエクイティファイナンス(IPO・PO等)のオリジネーション(案件獲得活動)・エグゼキューション(案件執行)を経験。現在はハイキャリア層や金融プロフェッショナルを中心とした採用・転職支援を行う。
投資銀行やFAS、戦略コンサル、M&A仲介で案件を担ってきた人がPEファンドに出す職務経歴書では、案件の数よりどの工程で何を判断したかを先に示します。アドバンテッジパートナーズ(以下、AP)、J-STAR、インテグラルの3社の募集要項は、投資の実行や一連の業務に近い経験を、具体的な言葉で挙げているからです。
案件は応募先の募集要項の言葉に近い順に並べ、1件ごとに「案件概要」「自分の役割と関与度」「判断と根拠」「結果」の4行で書きます。「チームで担当」「サポート」のように関与の深さがぼやける言葉は、面接で問われたときに書類との食い違いを生みやすいため、主担当・分担・同席のどれかに言い切ってください。
想定しているのは、PEファンドの投資プロフェッショナル職(アナリスト~ヴァイス プレジデント、シニアアソシエイト・アソシエイト、マネジャー・プリンシパル)への応募を控えた人です。年収の水準や面接の質問集ではなく、書類の中身に絞っています。
本記事のポイント|案件は件数ではなく判断の中身で並べる
応募前に決めることは3つあります。先頭に置く案件、各案件に書く数字と伏せる数字、そして募集要項の言葉に当たらない経験の扱いです。
| 決めること | 答え | よりどころ |
|---|---|---|
| 書類で先に示す点 | 担当した工程と、自分が下した判断 | 3社の募集要項の職務内容と要件 |
| 先頭に置く案件 | 応募先の要件の言葉にいちばん近い案件。件数や規模の大きい順ではない | AP「PE業務に近い領域の経験者」、J-STAR「自らリードして投資を実行」 |
| 案件1件の書き方 | 案件概要 → 役割と関与度 → 判断と根拠 → 結果の4行 | リメディの見解(J-STARの要件とAPの社員インタビューをもとに作成) |
| 分量 | 本紙はA4縦1〜2枚程度、案件一覧は別紙 | 厚生労働省「職務経歴書の作り方」 |
| 避けたい表現 | 「チームで」「サポート」「関与」「多数」 | 関与の深さが読み取れず、面接の答えとずれやすい(リメディの見解) |
| 相談を考える時期 | 主担当の案件がなく、先頭案件を決められないとき | 後述の「相談すべきケース」 |
経歴別の早見表
前職によって、先頭に置きやすい案件も、3社の募集要項のどの言葉に当てはめやすいかも変わります。
| 現在の経歴 | 先頭に置きやすい案件 | 対応させやすい募集要項の言葉 | 書類で補う点 |
|---|---|---|---|
| 投資銀行(M&Aアドバイザリー) | 企業価値評価や条件交渉で、自分の分析が価格や条件の提案につながった案件 | AP「投資銀行業務(M&A、アドバイザリー)」、インテグラル「投資銀行業務(M&A、エクイティ・デット・ファイナンス等)」 | 助言にとどまらず、自分なら買うか見送るかの判断 |
| 戦略コンサル | 事業DDや成長戦略を経営層に提案し、採用された案件 | J-STAR「自ら経営層に提案して受諾された経験がある」、インテグラル「経営コンサルティング」 | 財務モデルや取引条件との接点 |
| FAS | 財務DDや企業価値評価の発見事項が、取引条件の論点になった案件 | AP「会計」、インテグラル「会計・税務(デューディリジェンス、監査等)」 | 発見事項を投資判断にどう使ったか |
| M&A仲介 | オーナーとの条件調整から成約まで主担当で進めた案件 | AP「上記に限らずPE業務に親和性のあるご経験をお持ちの方」 | 買い手の立場で価格と条件を見た経験 |
| 事業会社の経営企画・M&A担当 | 自社の買収や再編で、検討から統合後の運営まで担った案件 | インテグラル「経営企画業務」 | 投資前の検討に関わった範囲 |
| PEファンド在籍 | 自分がリードした投資実行と投資後の施策 | J-STAR「自らリードして投資を実行したことがある」 | 前職ファンドとの投資領域の違い |
右端の列に共通するのは、助言した側から判断した側へ書き方を寄せる点です。前職の強みを削る必要はなく、同じ案件でも書く順番を変えるだけで要件との対応が見えてきます。
PEファンドの職務経歴書で見られるポイント
職務経歴書で先に示したいのは、担当した工程、自分がリードした範囲、該当業務の期間の3点です。3社の募集要項は同じ投資プロフェッショナル職の募集でも、3点のどこを重く問うかが違います。
3社の募集要項は工程・リード・期間を問う
| 企業 | 要件の見出し | 公式ページの記載(抜粋) | 書類で示すこと |
|---|---|---|---|
| アドバンテッジパートナーズ(ジャパンバイアウト投資グループ) | 活かせる経験 | 投資業務経験者、投資銀行業務(M&A、アドバイザリー)、その他コンサルティング、会計、リーガルなどのプロフェッショナルファームでPE業務に近い領域の経験者 | 案件開拓から投資回収までのどの工程に近いか |
| J-STAR | 必要なスキル・経験 | 自らリードして投資を実行したことがある/自ら経営層に提案して受諾された経験がある/専門領域にてリーダーとして秀でた成果を残したことがある | 自分がリードした範囲と、提案が受け入れられたか |
| インテグラル | 応募資格 | 以下のいずれか、並びにそれに準ずるご経験を3年以上有する方(PE投資等の投資業務、投資銀行業務/会計・税務/経営コンサルティング、起業、企業再生、経営企画業務、海外ビジネス等の実務経験) | 該当する経験の期間と、検討・実行・バリューアップのどこに関わったか |
APは職種を例示したうえでPE業務に近い領域と書き、肩書より経験の中身を問うています。J-STARの3項目は、どれも「自ら」「リーダーとして」と本人の行動を主語にしており、募集はマネジャーとプリンシパルです。インテグラルは経験の種類に加えて、3年以上という期間の条件を置いています。
助言した経験と、投資を判断した経験を書き分ける
アドバンテッジパートナーズの社員インタビュー(2024年7月取材)で、M&Aアドバイザリー出身のメンバーは、前職を「あくまでクライアントに助言する立場」だったと振り返り、同社では「常にプリンシパルとしての判断を求められます」と語っています。入社後1年ほどは、上司から「なかなかアドバイザー気質が抜けないね」と指摘されていたそうです。
1人の体験談なので一般化はできませんが、書類を見直す観点としては使えます。助言者として正確に作業した記録だけでは、投資する側の判断が見えません。「分析を担当」と書いた行には、その分析から自分が何を勧めたかを1文足してください。
APとJ-STARの最初の窓口は入力フォーム
公式サイトのフォームから応募する場合、両社とも最初に採用担当者へ届くのは職務経歴書ではなく入力フォームの数行です。アドバンテッジパートナーズの応募フォームは、氏名、ふりがな、現職・前職(会社名、役職・ポジション名など)、年齢、メールアドレスが必須で、自由記入欄は任意です。J-STARの採用ページにあるENTRYボタンは「その他のお問い合わせ」フォームにつながり、企業名とお問い合わせ内容が必須、役職は任意となっています。
どちらのフォームにもファイルの添付欄はありません。職務経歴書をいつ出すのかも公式ページには書かれていないため、入力欄の数行だけで経歴の要点が伝わるように準備しておくと安心です。
ここはリメディの見解ですが、任意の自由記入欄も空けずに、職務経歴書の冒頭に置く要約を3〜4行に縮めて入れておくのが得策です。「現職と在籍期間」「担当した工程」「代表案件で自分が下した判断」「応募する募集の名前」の順に書けば、書類を送る前の段階で経歴の要点が伝わります。
要約の3〜4行でどの案件を代表に選ぶかは、3社が問う工程・リード・期間のうち、自分の経歴がどれに当たるかで変わります。候補が複数あって決めきれないときは、応募を考えている募集の要件と手元の案件を担当者と突き合わせて絞り込めます。
経歴別に強調すべき実績
前職が違っても、書き換えの方向は同じで、作業の記録を判断の記録に変えることです。次の例の〔 〕は自分の実績に置き換え、架空の数字や役割は足さずに、面接で説明できる事実だけを残してください。
| 前職 | よくある書き方 | 書き換えた書き方 | 対応させる募集要項の言葉 |
|---|---|---|---|
| 投資銀行 | 買収案件のFAとして、バリュエーション、DD対応、契約交渉を担当 | 〔業種〕の買収で買い手側FAの分担者として、〔前提〕を見直した評価レンジを提示し、価格条件の変更を提案。〔結果〕 | AP「投資銀行業務(M&A、アドバイザリー)」 |
| 戦略コンサル | 買収前の事業DDでプロジェクトを推進 | 〔業種〕の事業DDで市場の成長前提を主担当として検証し、〔前提〕を下げた計画を経営層に提示。提案は〔採用/不採用〕 | J-STAR「自ら経営層に提案して受諾」 |
| FAS | 財務DDを多数担当し、報告書を作成 | 〔業種〕の財務DDで収益力の調整項目を主担当として洗い出し、〔論点〕を価格調整の論点として依頼者に報告 | インテグラル「会計・税務(デューディリジェンス、監査等)」 |
| M&A仲介 | 年間〔件数〕件の成約に貢献 | 〔業種〕のオーナー企業の譲渡で主担当として〔論点〕をめぐる条件を調整し成約。買い手候補を〔理由〕で絞り込んだ | AP「上記に限らずPE業務に親和性のあるご経験をお持ちの方」 |
投資銀行のM&Aアドバイザリー出身
投資銀行の職務経歴書が弱く見えやすいのは、作業の一覧で終わるときです。バリュエーション、DD対応、契約交渉と並べると網羅的には見えますが、どの論点で自分が数字を動かしたのかが残りません。
書き換えでは、前提を見直した箇所を中心に置きます。成長率や売却時の想定をどう変え、その結果として価格や条件の何を提案したかまで書くと、APが挙げる「投資銀行業務(M&A、アドバイザリー)」の中身が具体的になります。売り手側の案件なら、買い手の懸念をどう読み、資料のどこを直したかも判断の記録です。
投資銀行からのルートや選考全体は、投資銀行からPEファンドへ転職するにはで扱っています。
戦略コンサル出身
戦略コンサルは、プロジェクト名と役職で経歴を書きがちです。PEに出す書類では、事業DDや成長戦略の提案が経営層に採用されたかを明記します。J-STARが必要な経験に挙げる経営層への提案と受諾は、コンサルの実績と重ねやすい要件です。
ただし、財務モデルや取引条件との接点が見えないと、事業分析だけの経験に読まれます。売上の前提を下げた結果、どの数値がどう動いたかを財務の言葉で1行添えると、投資判断の材料として読める記述になります。ルート全体は戦略コンサルからPEファンドへ転職するにはを参照してください。
FAS出身
FASは、財務DDや企業価値評価の件数を並べるより、発見事項が条件に効いた案件を先に置きます。インテグラルの応募資格には「会計・税務(デューディリジェンス、監査等)」が明記されており、DDの経験そのものは要件の言葉に当たります。
差が出るのは、発見事項のその先です。価格調整や契約条項の論点として依頼者に報告したのか、報告書を納品して終わったのかで、投資判断との距離は変わります。Big4側での書き方はBig4コンサルの職務経歴書、FASからのルートはFASからPEファンドへ転職するにはで確認できます。
M&A仲介出身
M&A仲介の経歴では、成約件数や売上の実績が目立ちます。とはいえ、3社の募集要項が並べているのは件数ではなく工程です。オーナーとの条件調整、買い手候補を絞り込んだ理由、価格の根拠をどう説明したかを書くと、APの「PE業務に親和性のあるご経験」との対応が見えてきます。
気をつけたいのは、買い手側で判断した経験が薄い場合です。書き方で補える範囲には限りがあるので、ルートの選び方はM&A仲介からPEファンドへ転職できるかを解説した記事で判断材料を確かめてください。
書類選考で落ちやすい書き方
書類で損をしやすいのは、関与の深さが読み取れない書き方です。3社とも選考の基準や結果を公開していないため、ここで挙げるのは、募集要項の言葉と照らしたときにずれやすい表現に限っています。
| 表現 | 伝わりにくい理由 | 直し方 |
|---|---|---|
| チームで〔社名〕の買収を完遂 | 自分の担当範囲が見えない | 主担当・分担・同席のどれかと、担当した工程を書く |
| 〔論点〕の検討をサポート | 作業の中身と判断の有無が見えない | 「〔論点〕の分析を分担し、〔提案〕を上長に進言」のように行動で書く |
| 多数の案件に関与 | 深く説明できる案件がどれか分からない | 先頭の2〜3件を4行で書き、残りは別紙の一覧に回す |
| LBOモデルを作成 | 作業量は伝わるが、判断が見えない | 「〔前提〕を変えた結果、〔結論〕を提案」と書く |
| 経営陣と議論し戦略を策定 | 提案が受け入れられたか分からない | 提案の相手、提案内容、受諾の有無を書く |
| 〔社名〕(非公開)の買収 | 伏せたつもりでも、条件を重ねると特定されうる | 業種の大分類、規模の帯、取引の種類で表す |
関与度をぼかす言葉
「チームで」「サポート」「関与」は、どれも嘘ではありません。ただ、読み手はそこから本人の範囲を判断できません。J-STARが投資の実行を「自らリードして」と本人の行動で問うている以上、書類でも主語を自分に戻しておきたいところです。
関与度は主担当・分担・同席の3段階で書き分けるのが実務的です。主担当は論点の設定から結論まで自分で進めた案件、分担は特定の工程を任された案件、同席は会議や交渉に加わったものの判断は担っていない案件です。同席の案件は削らなくてかまいませんが、先頭には置きません。
モデルや資料を「作った」で止める
LBOモデルやバリュエーションの作成は、書類に書きやすい実績です。作った事実だけでは他の応募者と並んでしまうため、前提を変えた理由と、その結果として何を勧めたかを書き足しましょう。
インテグラルは職務内容に「財務モデリング、ストラクチャリング、契約交渉」を挙げ、J-STARは歓迎条件に「ドキュメンテーションスキルがある」を置いています。モデルは「〔前提〕を下げた場合に〔指標〕がどう動くかを示し、見送りを進言」、資料は作成とレビューを分けて書くと、同じ作業でも判断の記録として読めるようになります。
伏せたつもりで案件が特定できる
案件名を伏せても、業種・地域・時期・規模を細かく重ねると、読み手は対象会社を推測できてしまうでしょう。書く前に、所属先の規程や契約で開示できる範囲を確認してください。
表し方は、業種は大分類、規模は幅を持たせた帯、時期は年単位にとどめるのが無難です。取引金額やマルチプルが公表されていない案件でも、数値そのものではなく「どの前提を動かしたか」で具体性は出せます。
募集要項の言葉から決める成果指標
成果指標は、応募先の募集要項の言葉から逆にたどって決めると迷いません。職種ごとに数字の種類を増やすより、要件の言葉1つに指標1つを対応させます。
| 募集要項の言葉 | 職務経歴書で書く項目 | 成果指標の例 | 避けたい表現 | 改善の方向 |
|---|---|---|---|---|
| AP「案件開拓や提案~投資実行に至るまでのプロセス設計と実行」 | 自分が起点になった案件と、実行まで進めた工程 | 提案先のうち検討・実行に進んだ案件の有無と件数 | 一気通貫で担当 | 工程名を並べ、工程ごとに主担当か分担かを書く |
| AP「経営戦略策定やオペレーション改善の実行支援を通じて投資先の価値向上に関する業務」 | 投資後・統合後に担った施策 | 施策の前後で動いたKPIとその期間 | PMIを支援 | 施策、担当範囲、KPIの変化を1文にまとめる |
| J-STAR「自らリードして投資を実行したことがある」 | リードした範囲と実行した取引 | 取引の種類、規模の帯、自分が決めた条件 | チームで実行 | 主担当として決めた条件を書く |
| J-STAR「自ら経営層に提案して受諾された経験がある」 | 提案の相手、提案内容、受諾の有無 | 受諾された提案と、実行後の結果 | 経営陣と議論 | 受諾されたかどうかまで書く |
| J-STAR(歓迎条件)「ドキュメンテーションスキルがある」 | 作成・レビューした契約書や投資検討資料 | 作成かレビューかの別と、扱った論点 | 資料作成を担当 | 作成とレビューを分けて書く |
| インテグラル「財務モデリング、ストラクチャリング、契約交渉」 | 前提を置いたモデル、検討したストラクチャー、交渉した論点 | 前提の変更とIRRやレバレッジへの影響、条件変更の有無 | LBOモデルを作成 | 前提の変更と提案を組にして書く |
| インテグラル「並びにそれに準ずるご経験を3年以上」 | 該当する経験の期間 | 在籍期間と、そのうち該当業務に就いた期間 | 長年従事 | 年月で期間を書く |
| インテグラル「投資先様の経営支援全般」 | 現場に入って実行した施策 | 実行した施策とKPIの変化 | 経営支援に携わる | 現場で自分が動かした業務を書く |
表の成果指標は、どれも自分が変えたものを数える形です。成約件数や担当社数のように自分の判断と切り離せる数字は、別紙の一覧に回すと本紙が読みやすくなるでしょう。
案件1件を4行で書く
ここはリメディの見解ですが、ディール実績を1件ずつまとめる記述(いわゆるディールシート)は、下の表の4行にそろえることを勧めます。この形にすると、J-STARの「提案して受諾された」のように行動と結果を組にした要件の言葉と、1対1で対応させられます。APの社員インタビューで語られた「プリンシパルとしての判断」を、書類の上で見える形にする書き方でもあります。
| 行 | 書くこと | 記入例(〔 〕は自分の実績に置き換える) |
|---|---|---|
| 1. 案件概要 | 業種、規模の帯、取引の種類、時期 | 〔業種〕・売上〔規模の帯〕の事業承継案件(〔年〕) |
| 2. 役割と関与度 | 主担当・分担・同席の別と、担当した工程 | 分担:事業DDと財務モデルの前提設定 |
| 3. 判断と根拠 | 買う・見送る・条件を変える、のどれを勧めたかと理由 | 〔前提〕が崩れた場合の下振れを示し、〔条件〕の変更を進言 |
| 4. 結果 | 提案が採用されたか、取引や施策がどうなったか | 条件の変更が採用され〔結果〕 |
見送りになった案件も、判断の記録として使える材料です。「投資しない」と勧めた理由が書けていれば、成約した案件とは別の角度から投資の考え方を示せるからです。
書く数字と伏せる数字
数字は、判断に使った指標を優先して載せます。EV/EBITDAマルチプル、レバレッジ、IRRの感度、提案の採否は、いずれも投資の判断と直接結びつく項目です。
| 区分 | 具体的な数字 |
|---|---|
| 書く | 前提を変えたときの指標の動き(例:成長率を〔幅〕下げた場合のIRR)、自分が示した評価レンジの幅、投資後の施策で動いたKPI |
| 伏せる・ぼかす | 公表されていない取引金額、対象会社や相手先を特定できる数字、社内の非公開の計画値 |
伏せる数字があっても、何を動かしたかは書けます。面接で聞かれて答えられない値は、書類にも載せないほうが安全です。
本紙はA4縦1〜2枚、案件一覧は別紙にする
厚生労働省の「職務経歴書の作り方」は、職務経歴書をA4縦1〜2枚程度の自由様式の書類と説明しています。あわせて、「開発担当プロジェクト一覧」などを別紙として付ける場合は、枚数が若干増えても差し支えないとしています。
PEへの応募に当てはめると、本紙には職務要約と先頭の案件だけを4行型で載せ、残りのディール実績は別紙の案件一覧にまとめる形がとりやすいでしょう。記載スタイルは、同パンフレットが挙げる編年体式・逆編年体式・キャリア式などから選べます。案件を工程ごとにまとめるキャリア式にするなら、時系列の略歴を付けるとわかりやすくなる、というのが同パンフレットの説明です。
企業タイプ別の見せ方
同じ経歴でも、応募先によって先頭に置く案件を入れ替えるのが基本です。厚生労働省のパンフレットも、職務経歴書の内容は応募先企業によって異なるものとし、同じ内容を複数の応募先に使い回すことは適当でないと書いています。
| 企業 | 募集職位 | 公式ページの業務範囲 | 先頭に置く案件 |
|---|---|---|---|
| アドバンテッジパートナーズ(ジャパンバイアウト投資グループ) | アナリスト~ヴァイス プレジデントレベル | 案件開拓、投資実行、価値向上活動、エグジット、投資家へのレポーティング | 工程がもっとも近い案件 |
| J-STAR | マネジャー/プリンシパル(Investment team) | 投資案件の発掘、投資実行、Value Creation、Exit(中小企業に投資) | リードした投資実行、または経営層への提案が受諾された案件 |
| インテグラル | シニアアソシエイト・アソシエイト | 投資の検討、実行、バリューアップ(財務モデリング、ストラクチャリング、契約交渉、投資先様の経営支援全般) | 投資前の検討と投資後の支援の両方に触れた案件 |
ここはリメディの見解ですが、先頭案件の選び方は募集職位の書き方で決まります。APはアナリストからヴァイス プレジデントまでと幅が広く、工程の近さで選べる募集です。J-STARはマネジャーとプリンシパルの募集なので、本人がリードした経験を最初に示さないと、要件と照らし合わせにくくなります。
アドバンテッジパートナーズ:工程の近い案件から並べる
ジャパンバイアウト投資グループの募集ページは、仕事を「バリュエーションや資金調達、ビジネス分析といったプロフェッショナルファーム的な側面」と、投資先経営陣と並走してオペレーションや人事組織をマネジメントする側面の2つで説明しています。先頭案件には工程名を明記し、2つの側面のどちらに近いかを一目で分かる形にしましょう。
上場企業を投資対象とする上場企業成長支援プライベートソリューションズ投資グループは、活かせる経験に「株式アナリスト、資金調達等のキャピタルマーケット経験者」も挙げています。株式調査や資金調達に携わってきた人は、応募するグループに合わせて先頭案件を差し替えるとよいでしょう。
J-STAR:リードした実行と提案の受諾を先頭にする
J-STARは中小企業への投資を掲げ、投資後も「投資前の施策案を、投資先経営陣とともに試行錯誤/ブラッシュアップしながら実行支援します」と説明しています。書類では、提案が受け入れられたあと現場で何が実行されたかまで書くと、この説明と重なります。
反対に、リードした投資実行も経営層への提案の受諾もない場合は、書き方を工夫してマネジャー・プリンシパルの要件に寄せるより、職位の幅が広い募集を先に検討するほうが自然です。
インテグラル:投資前後の両方と現場での実行を書く
インテグラルの採用ページは、投資プロフェッショナルは「特定の役割のみを担うのではなく」、一人一人が投資業務に一気通貫で取り組むと説明し、投資後は常駐でのハンズオン支援も行うとしています。求める人物像にも「汗をかくことを厭わず臨機応変に基本・現場から仕事が出来る方」とあります。
そのため先頭には、投資前の検討と投資後の実行の両方に触れた案件を置きます。現場に入って業務を変えた経験があれば、分析だけの案件より前に置いても不自然ではありません。応募資格の「3年以上」に対しては、職務要約で該当業務の期間を年月まで書いておきます。
募集要項を確認できないファンドに出すとき
2026年9月の確認では、ほかの日系ファンドの一部は採用ページを表示できませんでした。外資系ファンドの採用サイトからも、東京拠点の投資職の募集要項は見つけられていません。
こうした応募先に出すときは、要件を推測して書き足すより、3社に共通する工程・関与度・判断の3点がそろった版を用意するのが無難です。応募先の投資領域が分かる範囲で、先頭案件だけを入れ替えます。
この共通版を、3社向けに先頭を入れ替えた版と並行して出す場合は、何版を用意し、どの募集から出すかを先に決めておく必要があります。版の数と提出の順番、各版の先頭に置く案件は、募集職位と自分の関与度を並べながら担当者と決められます。
投資経験が浅い人・隣接経験者の補強方法
投資の実行に関わった経験が少なくても、募集要項の言葉に当たる経験があれば書類で示せます。インテグラルの応募資格は、投資業務や投資銀行業務に加えて経営企画業務や企業再生、起業、海外ビジネスの実務経験も挙げています。
経営企画・事業会社のM&A担当
事業会社の経営企画やM&A担当は、自社の買収や事業再編の検討に社内から関わってきた立場です。書類では「社内の意思決定資料を作成」で止めずに、意思決定の場に何を提案したかと、どう決まったかまで書きます。J-STARの要件にある経営層への提案と、その受諾の経験に当たる部分です。
投資先企業やPMIでの実行経験
買収後の統合や事業改善を現場で進めた経験は、APの「経営戦略策定やオペレーション改善の実行支援」や、インテグラルの「投資先様の経営支援全般」に当たります。施策と動いたKPIを組にし、自分が決めたことと現場に任せたことを分けて書いてください。
投資前の検討に関わっていない場合は、その空白を認めたうえで、統合計画の前提をどう見直したかなど、投資判断に近い部分を1件は書き添えます。
該当する工程がほとんどない場合
案件開拓、投資検討、実行、投資後の支援のどれにも当たる経験がほとんどないなら、書き方の工夫だけで埋めるのは難しくなります。経験を盛らずに、FASや投資銀行、投資先企業などを経由するルートも含めて比べるほうが現実的です。前職別のルートは、記事末尾の関連記事から確認できます。
面接で深掘りされる項目
面接では、職務経歴書に書いた内容が質問の起点になりがちです。厚生労働省のパンフレットも、面接では職務経歴書の内容に基づいて質問されることが多いとして、どんな質問が来てどう答えるかまで想定して記載をまとめるよう勧めています。
なお、3社とも公式ページでは選考の段階や面接の回数を公開していません。下の表は特定のファンドの質問例ではなく、書類に書いた内容から準備しておく項目をたどったものです。
書類の記載ごとに準備しておく答え
| 書類の記載 | 答えられるようにしておく点 | 準備しておく材料 |
|---|---|---|
| 主担当と書いた案件 | 自分が決めた論点と、上長に委ねた判断の境目 | 意思決定の流れを時系列にしたメモ |
| 前提を変えたと書いたモデル | 変更前後の前提と、それが価格や条件に与えた影響 | 前提の比較と感度の結果 |
| 見送りを進言した案件 | 何が崩れたら投資しないと判断したか | 判断に使った指標と、見送り後の経緯 |
| 経営層に受諾されたと書いた提案 | 反対意見と、それをどう扱ったか | 提案資料の要旨と実行後の結果 |
| 投資後の施策 | 施策を選んだ理由と、動かなかったKPI | 施策前後のKPIと自分の担当範囲 |
右列の材料を書類の仕上げ前に手元でそろえておくと、書類と答えの食い違いを防げます。書いた関与度より小さい話しかできない案件は、書類の側で表現を控えめに直しておきましょう。
案件の数字とPaper LBOの回答をそろえる
書類に「IRRの感度を示した」「レバレッジの前提を見直した」と書いたなら、Paper LBOの練習で置いた前提と数字の考え方がずれていないかも確かめます。練習の進め方は、Paper LBOの面接対策をまとめた記事で解説しています。
次に読むべき記事
書類の方向が固まったら、次に読むべき記事は面接側の2本です。
- 前職別の評価ポイントと想定される面接質問:書類に書いた案件が、前職ごとにどう問われるかを確かめられます
- Paper LBOで問われる手計算の論点:書類に書いた数字の前提を、練習問題でもう一度たどれます
条件面談につながる実績の書き方
3社の募集要項は、給与を具体的な金額では示していません。APは「詳細は別途」、J-STARは「応相談」です。インテグラルは「当社規定による」とし、年俸と賞与からなる報酬を「経験、能力、前給等を考慮の上優遇」すると記載しています。インテグラルが挙げる経験、能力、前給は、どれも職務経歴書と面談で伝える情報です。
職位・期間・担当範囲を正確に書く
条件の話し合いに進む前に見直したいのは、職位の呼び方と在籍期間です。社内の職位名はそのまま書き、社外で通じにくい場合は担当範囲を括弧で添えます。在籍期間は年月まで書き、兼務や出向があれば期間ごとに分けてください。
現在の報酬の内訳(基本給、賞与、手当)も手元で整理しておくと、「前給等を考慮」するインテグラルのような会社との面談で説明がぶれません。
PEファンドの職務経歴書を相談すべきケース
書類づくりの大半は、自分で進められます。相談を考えたいのは、案件の選び方や関与度の書き分けで手が止まったときです。
自分で進めてよいケースと相談すべきケース
| 確認すること | 自分で進めてよいケース | 相談すべきケース |
|---|---|---|
| 先頭案件 | 主担当の案件があり、応募先の要件の言葉に当てはまる | 主担当の案件がなく、分担・同席の案件しかない |
| 関与度 | 主担当・分担・同席を案件ごとに言い切れる | チームの成果と自分の担当の境目を説明しにくい |
| 応募先 | 募集職位と、自分の経験年数・役割が合っている | J-STARのようにリードした投資実行を求める募集か、職位の幅が広い募集かで迷っている |
| 守秘 | 所属先の規程で開示できる範囲を確認済み | どこまで書けるか判断がつかない案件がある |
| 応募経路 | 公式の応募フォームから直接出す準備ができている | 直接応募かエージェント経由かを決めかねている |
エージェントを使うなら、PE案件の扱いや書類添削の範囲を最初に確かめておくと、比べる軸がはっきりします。確認する質問の立て方は、不動産ファンドに強い転職エージェントの選び方で紹介している見極めの質問が参考になります。
応募前に確認したい質問
3社とも、提出書類や選考の流れを公式ページに書いていません。応募前の面談やエージェントとの打ち合わせでは、次のように具体的に聞いておけば、準備の手戻りを防げるでしょう。
- 職務経歴書とは別に、案件一覧の提出や様式の指定はありますか
- 書類の提出は、応募フォームを送った後ですか、面談の後ですか
- 同じファンドの別の投資グループにも並行して応募できますか
- 選考の開始から結果が出るまで、どのくらいの期間を見ておけばよいですか
表の「相談すべきケース」に当てはまる行があれば、会社名を伏せた先頭案件の4行と、応募を考えている募集の名前を用意しておきます。金融領域の担当者から相談相手を選んで予約すれば、当てはまった行を面談の最初の議題にできます。
よくある質問
案件名や取引金額を書けない場合はどうすればよいですか
所属先の規程や契約で開示できる範囲を確認し、案件名は業種の大分類と規模の帯、取引の種類に置き換えます。金額が書けなくても、どの前提を動かしたかと何を勧めたかを書けば、判断の中身は伝わります。
主担当の案件がなく、分担した案件しかありません
分担の案件でも、任された工程の中で自分が決めたことがあれば先頭に置けます。担当した工程と、その工程で上長に進言した内容を分けて書き、判断を担っていない部分まで主担当のようには書かないでください。J-STARの募集はマネジャーとプリンシパルで、リードした投資実行を必要な経験に挙げています。分担の案件が中心なら、アナリストからヴァイス プレジデントまでを募集するAPのジャパンバイアウト投資グループのように、職位の幅が広い募集も並べて検討すると、要件との差を無理に埋めずに済みます。
語学力は職務経歴書のどこに書けばよいですか
書く場所は、案件の4行のうち「役割と関与度」と「判断と根拠」の行です。募集要項では、J-STARが歓迎条件に「ビジネス英語ができる」を挙げ、インテグラルが応募資格の対象に「英語の他、他言語ネイティブレベル」またはそれに近い水準の人を含めています。たとえば「分担:海外の売り手との契約交渉を英語で担当」「英文の契約書で〔論点〕を洗い出し、条件の変更を進言」のように、その言語で担った業務と判断を書き込みます。語学の水準を並べるだけでは、その力を投資の判断にどう使ったかまでは伝わりません。
応募するファンドごとに書き分けたほうがよいですか
書き分けたほうが要件と照らしやすくなります。厚生労働省のパンフレット「職務経歴書の作り方」も、同一の内容を複数の応募先に使い回すことは適当でないとしています。アドバンテッジパートナーズは工程の近さ、J-STARはリードと提案の受諾、インテグラルは投資前後の両方と経験の期間を問う書き方なので、先頭の案件を入れ替えるだけでも要件との対応がはっきりします。
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