
監修者
リメディ株式会社 ディレクター
馬越 雄司 | MAGOSHI Yuji
神戸大学を卒業後、阪急阪神ホールディングスに新卒入社。経理事業部に配属となり、グループ企業5社を担当。担当企業の決算業務や税務、IFRS改正対応業務に従事。
その後リクルートに転職しキャリアアドバイザーとして、候補者様に徹底的に向き合いながら、20代から50代まで様々な業界・職種の方のキャリア支援に従事。結果として、新人賞をはじめ、顧客価値貢献・チーム貢献に関する複数の賞を受賞。
現在はディレクターとして、M&A業界、戦略・総合コンサルティングファーム、メガベンチャー企業に特化した転職サポートを行い、業界トップクラスの支援実績を誇る。
KPMG FAS向けの職務経歴書は、会社全体ではなく応募部門の募集要項から逆算して作るのが基本です。経験者採用はCorporate Finance、Transaction Services、Turnaround & Restructuringなど8部門に分かれ、同じ経験でも強調すべき実績が変わります。
監査、経理・財務、金融、コンサル、事業会社M&Aの経験者は、業務名を並べるだけでは足りません。どの課題に対し、何を分析し、自分がどこまで判断・調整し、意思決定をどう支えたかまで分解すると、募集職務との接点が伝わります。
KPMG FASの職務経歴書は応募部門から逆算する
KPMG FASの経験者採用は8部門を案内しています。最初に決めるべきなのは書式ではなく、どの部門のどの職務に、自分の経験を接続するかです。
| 応募領域 | 公式情報で確認できる主な仕事 | 職務経歴書で先に見せる経験 |
|---|---|---|
| Corporate Finance | M&A助言、企業・事業価値評価、ストラクチャリング | 取引工程、価値評価、交渉、社内外の意思決定支援 |
| Turnaround & Restructuring | 戦略的選択肢、再生計画、実行、利害関係者調整 | 財務三表計画、資金、改善施策、金融機関等との調整 |
| Strategy & Value Creation | M&A前の戦略、価値創出、PMI、事業分離 | 課題設定、分析、経営提言、実行管理 |
| Forensic | 不正・不祥事調査、リスク対応など | 調査設計、会計・監査論点、証拠、報告、再発防止 |
| Client Value & Analytics | データ分析を用いた意思決定・価値向上支援 | 経営課題、使用データ、分析方法、判断への活用 |
この表は部門の優劣ではなく、書類の編集順を示しています。例えば監査経験は、Corporate Financeなら価値評価や財務論点へ、T&Rなら資金・再生計画へ、Forensicなら調査と証拠へつなげるのが自然です。同じ職務要約を8部門へ流用すると、接続点が薄くなります。
FAS全般の職務経歴書を先に整理したい人は、FAS向け職務経歴書の作り方も併せて確認してください。本記事では、その共通設計をKPMG FASの現行募集へ絞って具体化します。
採用担当者が確認できる形に経験を分解する
一つの実績は、課題、役割、分析・行動、意思決定、結果の5点に分けます。成果だけを大きく書くより、自分の担当範囲が見えるためです。
- 課題:会社・案件がどの判断を迫られていたか
- 役割:チーム全体ではなく、自分が受け持った範囲は何か
- 分析・行動:どの資料、仮定、関係者の情報を使ったか
- 意思決定:分析が承認、条件変更、投資判断、改善策のどれに使われたか
- 結果:決定・実行されたことと、その後の検証は何か
ここで大切なのは、本人が説明できる範囲に限ることです。「プロジェクトを成功に導いた」と書くなら、成功の定義と自分の行動が必要になります。チームの成果を自分一人の成果として見せると、面接で役割の境界を確認されたときに整合が崩れます。
職務要約は経歴の短縮版ではありません。応募部門に関連する経験を先に置き、「何年いたか」より「どの論点を、どの立場で扱ったか」を読める状態にします。これはKPMG FAS共通の採用基準ではなく、資格や学習内容を実務経験と結び付けて書くための編集方針です。
前職別にBefore/Afterで書き換える
前職ごとに、KPMG FASへ接続する材料は異なります。以下のAfterは完成文のコピーではなく、本人の事実を加えるための分解例です。
監査経験者
Before:上場会社の監査を担当し、会計論点の検討に貢献。
After:担当勘定と重要論点を特定し、経営者・経理部門との協議に必要な根拠を整理。監査チーム内の判断と会社側の対応を接続し、論点の解消まで担当した。
監査経験では、基準名の列挙だけで終わらせません。どの財務情報を検証し、見解の違いをどう整理し、経営側の判断へ何を返したかを書きます。本人が確認できるなら、担当社数、対象拠点、論点数、期間も補えます。
経理・財務経験者
Before:月次決算と予実管理を担当。
After:担当事業の決算差異を要因別に整理し、事業部門と前提を確認。資金・利益への影響を複数の前提で示し、経営会議が対応策を選ぶための資料作成と説明を担った。
経理・財務では、締め作業そのものより、連結、予実、資金、会計方針が経営判断にどう使われたかを見せます。改善率を確認できないなら書かず、対象会社、担当科目、作成したシナリオ、利用した会議体で範囲を示せば十分です。
金融機関経験者
Before:法人融資と取引先支援を担当。
After:取引先の事業計画と資金繰りを検証し、下振れ要因と返済条件の選択肢を整理。社内審査部門、取引先、外部専門家の論点を調整し、与信判断に必要な根拠を整理した。
金融経験は、T&Rの利害関係者調整やCorporate Financeの資金・取引理解へつながります。融資額を開示できない場合でも、業種、検討期間、関係者、計画修正の論点は守秘義務に配慮しながら表現できます。
コンサル経験者
Before:成長戦略の立案を支援。
After:市場と自社能力の仮説を設定し、顧客・競合情報を検証。経営陣へ選択肢とリスクを提示し、採択後は関係部門の実行計画と確認指標の設計まで担当した。
Strategy & Value Creationへ応募するなら、提言資料を作った事実だけでは弱くなります。課題設定、分析、経営判断、実行のどこまで責任を負ったかを切り分け、M&A前後のどの局面へ転用できるかを示してください。
事業会社M&A経験者
Before:M&Aプロジェクトを担当。
After:投資仮説の整理から社内承認、外部助言会社との調整、調査論点の管理を担当。価値評価の前提差を事業部門と検証し、経営会議が条件を判断するための選択肢を提示した。
事業会社の経験は当事者としての意思決定を示せる点が強みです。一方で、案件全体を「担当」とまとめると役割が見えません。対象選定、社内承認、調査、価値評価、交渉、PMIのうち、自分が責任を持った工程を明らかにします。
募集要項と職務経歴書を一行ずつ対応させる
職務経歴書を直すときは、募集要項の語をそのまま貼るのではなく、自分の事実で裏づけられる一行へ変換します。次の表で空欄が残る項目は、経験がないのか、書き方が粗いのかを切り分けてください。
| 募集要項で求める経験 | 書く項目 | 成果指標 | NG表現 | 改善方向 |
|---|---|---|---|---|
| M&A助言 | 局面、担当、相手、成果物、判断 | 工程、案件、期間、関係者 | M&Aに幅広く貢献 | どの局面で何を判断可能にしたかを書く |
| 価値評価・財務分析 | 前提、モデル、検証、差異 | 対象事業、シナリオ、レビュー | 高度な分析を実施 | 入力、仮定、検証、用途を分ける |
| 事業再生 | 課題、計画、資金、関係者、実行 | 期間、拠点、施策、関係者 | 再生に尽力 | 合意形成と計画修正の役割を示す |
| 戦略・価値創出 | 課題、分析、提案、実行、検証 | 対象市場、部門、施策、会議体 | 戦略立案を支援 | 提言が使われた意思決定を書く |
| 不正調査・リスク対応 | 発見、調査設計、証拠、報告、再発防止 | 対象、資料、関係部署、改善項目 | 不正対応を経験 | 守秘義務を守り自分の判断を示す |
| データ分析 | 経営課題、データ、方法、示唆、活用 | 期間、対象項目、シナリオ、利用部門 | データ分析が得意 | 結果が変えた判断や行動を書く |
成果指標の欄は、すべてを埋めるチェックリストではありません。例えば再生案件なら、金額を出せなくても「複数の資金繰り前提を比較し、金融機関と会社側の論点を整理した」と書けます。重要なのは数字の多さではなく、読み手が担当範囲と判断の重さを再現できることです。
数字は作らず、範囲と判断で具体化する
職務経歴書の数字は、本人が記録や記憶から説明できるものだけに限ります。案件金額、削減額、改善率が不明なら、見栄えのために推定値を置いたり、数値を盛ったりしてはいけません。
- 範囲:担当会社、拠点、事業、勘定、データ期間
- 工程:仮説、調査、モデル、レビュー、交渉、承認、実行
- 複雑性:関係部署、国・地域、利害関係者、検討シナリオ
- 判断:採択、保留、条件変更、追加調査、計画修正
- 再現性:手順の標準化、引き継ぎ、レビュー方法の改善
このうち一つか二つを事実に沿って加えるだけでも、抽象表現は減ります。「利益改善に貢献」ではなく、「差異の要因を事業別に分け、経営会議が対策の優先順位を決める資料を作成した」とすれば、金額を出さずに役割を示せます。
守秘義務にも配慮が必要です。顧客名、未公表の取引条件、個人情報は伏せ、業種や案件局面で説明します。具体性は機密情報の多さではなく、判断過程の明瞭さから生まれます。
応募部門ごとに強調点を変える
完成した職務経歴書を応募部門ごとに並べ替えます。経歴そのものを変えるのではなく、職務要約、主要実績、専門スキルの順序を変える作業です。
Corporate Finance
M&Aの局面、価値評価の前提、交渉相手、経営判断への寄与を先に置きます。金融機関出身者なら融資業務の件数だけでなく、事業性評価や資金条件の判断を示す。事業会社出身者なら、外部助言会社へ依頼した立場だけでなく、自社内で何を決めたかが重要です。
Turnaround & Restructuring
財務三表を使った計画、資金繰り、改善施策、利害関係者との交渉を優先します。計画作成だけで終わらず、前提が崩れた際の修正、実行時の抵抗、合意形成まで書けると役割が見えます。
Strategy & Value Creation
課題設定から分析、提言、実行、検証までの連続性を示します。市場調査や資料作成だけを切り出さず、どの選択肢が経営会議へ上がり、採択後に何を動かしたかまで説明してください。
Forensic/Client Value & Analytics
Forensicでは調査設計、証拠の扱い、報告、再発防止を、CVAでは経営課題、データ、分析、示唆、活用先を前に出します。公式募集では、Forensicの一部職種についてKPMG FAS入社後にKPMG Forensic & Risk Advisoryへ出向する形が示されています。法人・配属の説明は応募する職種の現行ページで確認してください。
直接のFAS経験がなくても隣接経験を接続する
直接のFAS経験がない場合も、学習内容は記載できます。そのうえで、編集上は前職で既に担っている判断と、応募部門で新たに必要となる経験を分けると、募集職務との接点が伝わりやすくなります。
| 前職 | すでに接続できる経験 | 書類で補足する境界 |
|---|---|---|
| 監査 | 財務情報の検証、重要論点、経営者との協議 | 投資判断・交渉・実行を直接担当したか |
| 経理・財務 | 財務三表、予実、資金、経営報告 | 社外案件や取引条件の設計経験があるか |
| 金融機関 | 与信、資金繰り、事業性評価、関係者調整 | 助言者としての分析・提案範囲はどこか |
| コンサル | 課題設定、分析、提言、実行管理 | 財務・取引・価値評価の実務経験があるか |
| 事業会社M&A | 投資判断、社内承認、外部専門家との協働 | 自分が作成・検証した分析は何か |
この境界を明記すると、未経験部分を隠さず、転用できる力も示せます。資格取得や学習内容を記載する場合は、前職経験との接点を併記するのが本記事の編集方針です。実務経験がない領域を「経験あり」と読める表現に変えてはいけません。
弱い表現と誤解を招く表現を修正する
推敲では、抽象語、主語の欠落、検証できない数字、機密情報を重点的に見直します。次の表現が残っている箇所は、事実へ戻してください。
- 「幅広く貢献」「尽力」「高く評価された」だけで終わる
- チーム全体の成果を、自分一人が実現したように書く
- 本人が確認できない改善率、削減額、案件金額を書く
- 顧客名、未公表の取引条件、個人情報を開示する
- 保有していない資格や、補助しただけの業務を担当経験として書く
- 募集要項の言葉を、自分の事実なしに貼り付ける
例えば「関係者調整に尽力」は、「会社側と金融機関で異なっていた資金前提を論点別に整理し、合意に必要な追加資料を作成した」と直せます。何をしたかが見えれば、評価語を足す必要はありません。
書類全体では、同じ成果を職務要約と案件欄で繰り返していないかも確認します。職務要約は強みと対象領域、案件欄は根拠となる具体例、と役割を分けると読みやすくなります。
面接の深掘りから逆算して仕上げる
職務経歴書の最終確認は、文章の見栄えではなく再現性で行います。各実績について、次の問いへ自分の言葉で答えられるかを確かめてください。
- なぜその課題が重要だったのか
- どの情報と仮定から判断したのか
- 自分が決めたことと、上司・他部門が決めたことは何か
- 見解が割れたとき、何を基準に調整したのか
- 他の選択肢を採らなかった理由は何か
- 最終的に何が決まり、実行後に何を学んだのか
答えられない実績は、表現が大きすぎるか、チーム成果と個人役割が混ざっている可能性があります。書き直すときは成果を消すのではなく、自分の担当へ戻すのが要点です。FASの面接準備全体は、FASの面接対策で整理できます。
Corporate Financeの公式募集では、履歴書・職務経歴書に加えてA4一枚程度の志望動機書を求め、現年収と希望年収は応募書類に記載しないよう案内しています。これは同部門の現行案内です。他部門へ応募する場合は、その職種の提出書類を確認してください。志望動機はKPMG FASの志望動機の作り方で、職務経歴書との重複を避けながら準備できます。
自分で進めるか、個別相談を使うかを判断する
応募部門が定まり、募集要項の各項目に自分の実績を対応でき、すべての数字と役割を説明できるなら、自分で推敲を進められます。まず自分で職務要約と主要実績を部門別に並べ替え、第三者が読んで担当範囲を再現できるか確認してください。
一方で、Corporate FinanceとT&Rのどちらへ寄せるか決められない、監査や金融の経験をFAS業務へ接続できない、機密を伏せると実績が抽象的になる場合は、個別相談が役立ちます。相談時は「添削してほしい」だけでなく、応募部門、迷っている実績、開示できない情報の範囲を伝えると論点が明確です。
報酬や制度を別に確認したい場合は、KPMG FASの年収・待遇情報を参照してください。職務経歴書には公式の提出指示に従い、条件情報と実績の説明を混在させないのが安全です。
次に読むべき記事
- 書類全体の型を整える:FAS向け職務経歴書の作り方
- 記載内容を口頭で説明できる状態にする:FASの面接対策
- 応募理由と経験の重複を整理する:KPMG FASの志望動機の作り方
あなたの経歴で狙える非公開求人と想定年収レンジを受け取る
業界特化のヘッドハンターが、公開求人に出ない選択肢と次の一手をご案内します。

