
監修者
リメディ株式会社 ヘッドハンター
井上 晶斗 | INOUE Akito
大阪府立大学を中退後、教育系のベンチャー企業へ入社。新店舗の立ち上げと全店舗管理を担当し、2年間で1店舗から12店舗へ増やす。立ち上げ業務からサービスの平準化までの一連の業務に従事。その後、エス・エム・エスに転職しキャリアアドバイザーとして、候補者様に徹底的に向き合いながら、20代から50代までの方のキャリア支援を行う。社内のキャリアアドバイザーの中で上位の成績を収めた後に、リメディに参画。現在は、M&A・不動産・建設業界でエグゼクティブ採用・転職支援に従事。
融資営業や法人営業、保険営業で経営者と向き合ってきた人が、30代・40代でM&A仲介への応募を迷ったときに先に見るべきは、募集要項の経験条件です。M&A仲介5社のアドバイザー職などの中途募集要項(2026年9月確認)は、応募条件や歓迎要件を営業経験・経営者折衝・新規開拓などの経験で書いており、年齢の条件は書かれていません。
判断の分かれ目は、経営者層との折衝実績、自力で顧客を開拓してきた量、成果連動の報酬に家計ごと適応できるか、の3点です。上場3社の有価証券報告書に載る平均年齢はいずれも30代前半〜半ばですが、これは在籍者の平均で、採用の上限を示す値ではありません。年代によって確かめる論点は変わっても、年齢そのものが応募の可否を決めるわけではないのです。
対象は、銀行・証券・保険の営業、メーカーや商社・IT企業の法人営業、会計事務所など士業の周辺で経験を積んだ30代・40代の人です。部下を率いてきた営業管理職の方も含みます。
結論:年齢より3つの経験で応募先と時期を決める
30代・40代からM&A仲介を目指すなら、3つの経験を実績で示せるかどうかで「今応募する」「準備してから動く」「別の入口を選ぶ」を決めるのが近道です。年代で可否を考え始めると、募集要項に書かれていない条件を自分で足してしまいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 応募できるか | 確認した5社の中途募集要項に年齢の条件はなく、要件の中心は経験の中身 |
| 判断の3要素 | 経営者層との折衝実績/自力の新規開拓量/成果連動の報酬への適応 |
| 平均年齢の読み方 | 有価証券報告書の平均年齢は在籍者の平均。採用の上限を示す値ではない |
| 入口の選択肢 | 仲介会社のアドバイザー職、提携先の開拓職、金融機関のFA(フィナンシャル・アドバイザー) |
| 先に確認したい制度 | 入社時の等級、固定部分とインセンティブの内訳、支給基準、初成約までの期間 |
| 相談を考える時期 | 3要素のうち説明できない要素が残るとき、管理職経験をどの会社のどの募集で生かすか迷うとき |
3要素のうち、応募先によって差がつきやすいのは報酬です。前職の給与水準を考慮して固定給を決める会社もあれば、未経験者の基本年収を一律で示す会社もあるため、現年収との差は応募先で変わります。
次の表は、前職の経験ごとに狙いやすい入口と、足りなくなりやすい経験を並べたものです。表の入口は募集要項の要件から見た目安で、選考結果を保証するものではありません。
| 前職の経験 | 狙いやすい入口 | 足りなくなりやすい経験 | 書類・面接での見せ方 |
|---|---|---|---|
| 銀行・信用金庫の融資営業、法人営業 | 仲介会社のアドバイザー職(融資営業を必須・歓迎要件に挙げる会社がある)、金融機関のFA | 自分から面談を取りにいく新規開拓 | 担当先の経営者と話した論点(後継者、資金繰り、事業の引き継ぎ)と件数 |
| 証券・保険の個人営業、法人営業 | 仲介会社のアドバイザー職 | 中小企業オーナーとの継続的な折衝、決算書の読み込み | 新規開拓の件数と期間、オーナー向け提案の実績 |
| メーカー・商社・ITの法人営業 | 仲介会社のアドバイザー職、提携先の開拓職 | 経営者本人との折衝、財務の基礎知識 | 決裁者を相手にした提案、新規顧客の獲得件数 |
| 会計事務所など士業の周辺 | 提携先の開拓職(ストライクのM&A推進営業職は、社会人経験3年以上で営業経験があり、大学卒業以上であることが応募条件)、会計士・弁護士資格を応募条件の一つに挙げる仲介会社 | 自分で案件を取りにいく営業 | 顧問先の経営者との関係づくり、税務や決算の論点を平易に説明した経験 |
| 部下を率いてきた営業管理職 | 仲介会社のアドバイザー職(管理職向けの採用区分は、M&A仲介での成約実績か、IBD(投資銀行部門)・FAS(財務アドバイザリーサービス)業界での経験を必須にする会社がある) | 直近の自分自身の開拓実績 | チームの成果と、自分が担当した成果を分けて示す |
前職別の詳しいルートは、銀行員からM&A仲介へ転職するルートの記事と証券営業からM&A仲介へ転職するルートの記事で扱っています。業界未経験でM&Aの仕事に入る全体像は、M&A転職は未経験でも可能かを解説した記事で確認できます。
前職別の表で自分の経歴が複数の行にまたがる人や、「足りなくなりやすい経験」に心当たりがある人ほど、どの入口から応募するかで迷うところでしょう。表の目安だけで決めきれないときは、経歴を担当者に見せながら判断できます。
30代・40代からM&A仲介へ転職できるか|募集要項と法律で確認できること
応募は可能です。確認した5社の中途募集要項は要件を経験中心に書いており、法律も募集・採用で年齢を理由に制限を設けることを原則として禁じています。
公式募集要項の要件は経験を中心に書かれている
5社の要件に共通して登場するのは営業の経験です。表に挙げた5社の募集要項はいずれもM&A業務の経験を必須にしておらず、ストライクは必須条件を大学卒業以上としたうえで「M&A業務未経験者歓迎」と明記し、営業経験は望ましいスキルに挙げています。
| 企業 | 職種 | 応募条件(必須) | 歓迎する経験 |
|---|---|---|---|
| 日本M&Aセンター | M&Aコンサルタント | ソリューション営業、融資営業、新規開拓(テレアポ・DM等)、高単価商材や無形商材の営業、プロジェクトマネジメント、経営者折衝のいずれかで高い成果 | 銀行の融資営業、専門商社の新規ビジネス創出、証券会社の新規口座開拓など |
| M&A総合研究所 | M&Aアドバイザー | 営業経験(有形・無形、toC・toBを問わない) | 中小企業オーナー向けの営業経験 |
| M&Aキャピタルパートナーズ | M&Aアドバイザー | 大卒以上で、金融業界(銀行・証券・保険等)の営業経験、公認会計士・弁護士の資格と営業志向、指定業界でのトップセールス等の経験のいずれか | 記載なし |
| ストライク | M&Aコンサルタント | 大学卒業以上(M&A業務未経験者歓迎) | 新規法人営業、金融・コンサルティング業界での提案営業、財務会計の基礎知識 |
| fundbook | M&Aアドバイザー | 営業経験1年以上 | 高単価商材などの営業、経営者向けの新規開拓営業 |
目を向けたいのは、必須要件に経験年数がほとんど書かれていない点です。表に挙げた5つの募集の必須要件で年数を書いているのは、fundbookの「営業経験1年以上」だけです。日本M&Aセンターは「高い成果」、M&Aキャピタルパートナーズ(以下MACP)は選択肢の一つに「トップセールス等のご経験」と、成果の中身を要件に書いています。ただしMACPには、この募集とは別に、M&A仲介での成約実績などを必須にする「経験者採用」の募集もある点に注意してください。
募集・採用で年齢を理由に応募を断ることは原則禁止されている
労働施策総合推進法は、事業主が募集・採用で年齢を理由とした制限を設けることを禁じています。平成19年の法改正で義務化されたルールで、厚生労働省は、求人票を年齢不問にしながら年齢を理由に応募を断ることや、書類選考・面接で年齢を基準に採否を決めることも法の規定に反すると説明しています。
例外もあります。代表的なのは、長期勤続によるキャリア形成を目的に、若年者等を期間の定めのない契約で募集する場合です。厚生労働省の資料では、この例外の「若年者等」は基本的に35歳未満を想定する(必ずしもそれに限られない)としたうえで、対象者の職業経験を不問にすることを要件にしています。「○○の経験者募集」「経験者優遇」のように経験を条件に加えることは、この例外では認められていません。
営業経験や経営者折衝を必須にしている中途の募集要項は、若年者を育成する例外とは求める人材の形が違います。年齢に不安を感じたら、応募を検討している募集要項が経験で書かれているかを最初に確かめてください。
有価証券報告書の平均年齢は在籍者の平均で、採用の上限ではない
有価証券報告書の「従業員の状況」に並ぶ値は、どれも決算日時点で在籍している従業員についての値です。何歳まで採用するかを示す項目は含まれていません。
| 記載項目 | 何を示す値か | 転職判断での読み方 |
|---|---|---|
| 平均年齢 | 決算日時点で在籍する従業員の年齢の平均。上場3社とも30代前半〜半ば | 採用の上限ではない。気になるなら入社時の等級や採用区分を確かめる |
| 平均勤続年数 | 在籍する従業員が勤めてきた年数の平均 | 短さの理由は書かれていないため、定着の良し悪しと結び付けない |
| 従業員数 | 提出会社の人数。日本M&Aセンターはホールディングスの最大人員会社の人数を記載 | 決算期が会社ごとに違い、同じ時点の比較にはならない |
記載の時点は、日本M&Aセンターが2026年3月31日、MACPとストライクが2025年9月30日です。3社の平均勤続年数は2.5〜4.6年に収まりますが、決算期が違うため、この幅で会社同士の優劣はつけられません。日本M&Aセンターの採用サイトは中途884名・新卒153名(2025年3月末時点)と公表しており、在籍者の大半は中途入社です。
厚生労働省のQ&Aは、「スタッフ全員が20代」のような会社の現状を示す表示は直接には年齢制限に当たらないとしつつ、その年代でなければならないという誤解を与えないよう求めています。M&A総合研究所の募集要項にある「若いメンバーが多く」という社風の記載も、在籍者の現状を示す情報として読むのが自然でしょう。同社を傘下に持つクオンツ総研ホールディングスは純粋持株会社で、有価証券報告書に平均年齢の記載はありません。
M&A仲介業界への転職の流れや、求められるスキル全般はM&A仲介業界への転職を解説した記事にまとめています。
30代・40代の経験で評価されやすい3つの要素
募集要項の要件を分解すると、評価されやすい経験は「経営者層との折衝」「自力の新規開拓」「成果連動の報酬への適応」の3つにまとまります。財務の基礎知識は、3つを支える補助の要素です。
| 経験の要素 | 募集要項での書かれ方 | 経験年数が長い人が補足したい点 |
|---|---|---|
| 経営者層との折衝 | 「経営者折衝経験」(日本M&Aセンター・必須)、「中小企業オーナー向けの営業経験」(M&A総合研究所・歓迎) | 担当者として折衝した場面と、管理職として同席した場面を分ける |
| 自力の新規開拓 | 「新規開拓経験(テレアポ、DM等)」(日本M&Aセンター・必須)、「経営者向けの新規開拓営業」(fundbook・歓迎) | 直近数年の開拓実績があるか |
| 成果連動の報酬への適応 | 「上限のないインセンティブ」(日本M&Aセンター)、KPIや成約のインセンティブは「保証された金額ではない」(MACP) | 固定給が下がる期間の家計の見通し |
| 補助:財務の基礎知識 | 「簿記2級取得が正社員登用の条件」(日本M&Aセンター)、「財務会計に関する基礎知識」(ストライク・望ましいスキル) | 学習を始めた時期と到達目標 |
30代・40代で意識したいのは、表の右端の列です。ここはリメディの見解ですが、社会人年数が長い応募者ほど、3要素を一つの成功例だけでなく複数の場面で説明できるかを見られます。日本M&Aセンターは前職の給与水準や職務経験を考慮して給与を決めると明記しており、経験年数は処遇の前提にもなるからです。
経営者層との折衝実績
M&A仲介で向き合う相手の中心は、会社の譲渡や買収を判断する経営者です。日本M&Aセンターは必須要件に「経営者折衝経験」を挙げ、M&A総合研究所は「中小企業オーナー向けの営業経験」を歓迎しています。
融資の担当先で後継者の話が出た、保険の提案で事業の引き継ぎに触れた、といった場面は、M&Aの初期相談に近い経験として説明できます。日本M&Aセンターの採用サイトでも、メガバンクで法人営業を9年担当してから入社した社員が、財務諸表を読める点に前職の経験が生きていると話しています。
自力の新規開拓量と、そのやり方
新規開拓はM&A仲介の中心業務です。日本M&Aセンターは必須要件に「新規開拓経験(テレアポ、DM等)」を挙げ、MACPは仕事内容を、アウトバウンド営業で譲渡を検討する企業を発掘し、成約まで1人のアドバイザーが担当すると説明しています。
件数とあわせて、開拓のやり方も説明できるようにしておきたい点です。中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)は、営業先から停止の意思を示されたらただちに営業を止めることなどを仲介者・FAに求めています。2026年9月1日には、停止の意思を反映せずに営業を再開した登録支援機関1社への注意が公表されました。
断られた相手への再接触をどう判断したか、接触の記録をどう残したかまで話せると、面接で開拓の実績を補足しやすくなります。経歴ごとの難易度の見方は、M&A仲介の転職難易度を解説した記事で詳しく扱っています。
成果連動の報酬への適応
3つ目は、固定給とインセンティブの組み合わせに家計ごと適応できるかです。日本M&Aセンターは月給と賞与に上限のないインセンティブを加える形、M&A総合研究所は未経験者の基本年収を一律で示してインセンティブを上乗せする形です。ストライクは、固定年収に全社一律の本社費用を加えた額を支給の基準にしています。基準を超えた売上に20〜30%の料率をかけた額が、インセンティブとして支給される仕組みです。
前職で歩合や業績連動の賞与を経験している人は、目標と達成の推移を示せば適応力の根拠になります。固定給中心で働いてきた人は、成約がない期間の生活費を何ヶ月分用意できるかを先に数字で確かめておくと、面接で報酬について聞かれても答えに詰まりません。
募集要項から見る不足しやすい経験と下振れしやすい条件
要件を比べた5社の募集要項も、三井住友銀行のFA職やストライクのM&A推進営業職の募集要項も、応募時点でM&Aの実務知識を求めてはいません。先に補いたいのは、財務の基礎知識と、成約までの収入の変動に備える準備です。
| 不足しやすい点 | 公式ソースの記載 | 応募前の補い方 |
|---|---|---|
| 財務の基礎知識 | 日本M&Aセンターは簿記2級取得を正社員登用の条件とし、三井住友銀行のFA職は日商簿記2級程度の財務分析知識を歓迎 | 簿記2級の学習を始め、決算書を使って提案した経験を書き出す |
| 成約までの期間の家計 | 日本M&Aセンターは中途入社者の初契約・初成約までの期間を採用サイトで公表 | インセンティブが少ない期間を見込んで生活費を試算する |
| インセンティブの発生条件 | ストライクは固定年収と本社費用を合わせた額を超えた売上が支給の対象 | 提示された固定給と支給基準をセットで確認する |
| 働き方の前提 | 日本M&Aセンターは月給に一定時間分の時間外手当を、M&A総合研究所は給与にみなし残業を含むと記載 | 家族との予定や学習時間との両立を事前に見積もる |
| 仲介が担う業務の範囲 | 中小M&Aガイドラインは、仲介者が企業価値評価や買収前の調査(デュー・ディリジェンス)の結論を決めないことを求める | 企業評価の専門性を深めたい人は、FAとの違いを確認する |
5つのうち、自分の数字を当てはめて応募前に試算できるのは家計とインセンティブの条件です。あらかじめ含まれる時間外労働は、日本M&Aセンターが月50時間分、M&A総合研究所が月44時間分と記載されています。月の働き方や忙しさが気になる人は、M&A業界の働き方と忙しさを解説した記事もあわせて確認してください。
財務知識の扱いは会社によって違う
財務知識を入社後の条件にするか、歓迎要件にとどめるかは会社で分かれます。日本M&Aセンターは簿記2級取得を正社員登用の条件と明記し、ストライクは財務会計の基礎知識を「あると望ましいスキル」に挙げています。
簿記などの資格取得を応募の前提にしている会社は、今回確認した範囲にはありません。学習の開始時期と到達目標を職務経歴書に書き、応募と並行して進める選択肢もあります。
初成約までの期間と年収の下振れを先に試算する
年収は、入社直後に下がる可能性を前提に試算しておくべきです。日本M&Aセンターの採用サイトによると、中途入社者の初契約獲得までの期間は5.3ヶ月、初成約までは11.7ヶ月です(2025年3月末時点)。
MACPの応募ページは、想定初年度年収の内訳を、最低保証の部分とKPIインセンティブ、M&A成約インセンティブ、決算賞与に分けて載せています。最低保証の部分を除く3つは、保証された金額ではないという注記付きです。応募ページで最低保証の金額を確かめて自分の現年収と並べ、現年収のほうが高ければ、初成約までの間は年収が下がる前提で試算しておきましょう。住宅ローンや教育費の支払いがあるなら、固定給だけで何ヶ月暮らせるかを先に確かめてください。
固定給が高ければ安心、とも言い切れません。ストライクの支給基準は固定年収を土台に計算するため、固定年収が高いほど、インセンティブが出るまでに必要な売上も大きくなるからです。
最低保証の金額、インセンティブの支給基準、初成約までの期間は、応募先を選ぶ前に自分の家計へ当てはめておきたい条件です。候補に残した募集を見比べて絞り込む作業は、担当者と一緒に進められます。
30代・40代で狙いやすい入口と報酬の決まり方
入口は仲介会社のアドバイザー職だけではありません。全員が同じ等級から始まる会社と経験に応じて募集を分ける会社があり、提携先を開拓する職種や金融機関のFAも含めると、等級や報酬の決まり方はそれぞれ違います。
| 入口 | 公式ソースで確認できる例 | 等級・報酬の決まり方 | 先に確認すること |
|---|---|---|---|
| 同じ等級から始まるアドバイザー職 | ストライク(M&Aコンサルタント) | 入社時はアドバイザーから始まり、シニアアドバイザー、マネージャーへ昇格するとインセンティブの料率が上がる | 昇格の基準と、固定年収に連動する支給基準 |
| 経験に応じて募集を分けるアドバイザー職 | M&Aキャピタルパートナーズ | 金融業界の営業経験などを要件にするM&Aアドバイザーの募集と、M&A仲介での成約実績かIBD・FAS業界での経験を必須にする「経験者採用」(主任採用、課長〜部長採用)の募集がある。KPIや成約のインセンティブは保証されない | 応募する募集の必須要件と、固定部分とインセンティブの内訳 |
| 提携先を開拓する職種 | ストライク(M&A推進営業職) | 提携先の会計事務所を担当し、新しい提携先の開拓も行う。社内基準を満たせばM&Aコンサルタントへ職種転換できる | 職種転換の基準、担当する提携先の範囲 |
| 金融機関のFA | 三井住友銀行(企業情報部) | 仲介は行わず売手か買手の一方に就任。給与は月給制で、職務等級や階層などにより決定 | 配属後に担う工程と、グループ会社への出向の可能性 |
M&A総合研究所のM&Aアドバイザーの募集要項では、企業情報部・会計提携部・金融提携部などのどれに配属するかを、面接を通じて提示する形です。提携部に配属されても、金融提携部は入社直後はダイレクトソーシング(紹介経由ではない案件の発掘)が中心で、会計提携部もダイレクトソーシングとの並行が可能と募集要項に書かれています。経営者への直接の開拓を避けたい人は、同社の提携部への配属を前提に応募先を選ばないほうが安全です。
管理職経験がある人は募集ごとの必須要件と入社時の等級を先に確認する
部下を率いてきた人は、応募の前に募集ごとの必須要件と入社時の等級を確かめてください。MACPの応募ページでは、主任採用と課長〜部長採用が「経験者採用」として出ており、大卒以上に加えて、M&A仲介業界での成約実績かIBD・FAS業界での経験のどちらかが必須です。どちらの経験もない人は、前職で管理職だったとしても、この2つの募集には応募できません。MACPを受けるなら、金融業界の営業経験などを要件にするM&Aアドバイザーの募集が候補です。ストライクは、入社時はアドバイザーから始まると明記しています。
ここはリメディの見解ですが、M&Aの実務経験がないまま応募する管理職経験者は、チームの成果より先に、自分で顧客を開拓した実績を見られます。チームの数字を伸ばした経緯を書くときは、自分が担当した案件と分けて示すのが基本です。直近の数年で個人の開拓実績が少ないなら、提携先の開拓職などの迂回ルートも比べてください。
仲介大手の年収水準や在籍年数ごとの実績は、M&A業界の年収を解説した記事で確認できます。
直接応募が合わない場合の迂回ルート
直接応募が合わないと感じたら、案件の入り方と報酬の決まり方が違う職種から入る方法があります。前の表は入口の種類を比べたもので、この表では同じ経歴の人が直接応募するか遠回りを選ぶかを、判断ポイントごとに比べています。
| 判断ポイント | 直接応募を検討できるケース | 迂回ルートを考えたいケース | 迂回先の例 |
|---|---|---|---|
| 経営者への新規開拓 | 自分で面談を取りにいった実績があり、その仕事を続けたい | 経営者へ直接連絡を取る開拓に強い抵抗がある | 金融機関のFA、ストライクのM&A推進営業職のように提携先を担当する職種 |
| 報酬の変動 | 初成約までインセンティブが少なくても家計が回る | 固定給で年収の見通しを立てたい | 月給制の金融機関FA |
| 財務の基礎知識 | 簿記2級程度の学習を始めている | 決算書を読む機会がほとんどなかった | 学習を先に進め、提携先の開拓職から入る |
| 専門業務への関心 | 案件全体を一人で進める仕事に魅力を感じる | 企業価値評価や買収前の調査を深めたい | 売手か買手の一方に就くFA |
| 管理職経験の生かし方 | チームの成果とは別に、直近の個人の開拓実績を示せる | 直近に個人の開拓実績がない | 提携先の開拓職で個人の実績を作る |
仲介とFAは契約の相手と担う工程が違う
仲介とFAの違いは、誰と契約するかです。中小M&Aガイドラインは、譲り渡し側と譲り受け側の双方と契約して支援する機関を仲介者、一方とだけ契約する機関をFAと定義しています。
仲介者には、利益相反を防ぐため企業価値評価やデュー・ディリジェンスの結論を決めないことが求められ、ガイドラインも仲介者とFAで提供できる業務に差が生じると明記しています。三井住友銀行の企業情報部は仲介を行わず一方のFAとして就任する体制で、社会人経験3年以上であれば、M&Aアドバイザリー業務の未経験者も応募の対象です。
銀行出身者が仲介とFASのどちらに向くかは、銀行員はM&A仲介とFASのどちらへ転職すべきかを比べた記事で詳しく比べています。
提携先の開拓職から入り、社内基準で職種転換を目指す
経営者へ直接連絡を取る開拓を主な仕事にしたくない人には、提携先を担当する職種があります。ストライクのM&A推進営業職は、提携先の会計事務所を訪問して顧問先のM&Aニーズを発掘する仕事で、定期訪問だけでなく、新しい提携先となる会計事務所の開拓も業務に含まれます。応募条件は、社会人経験3年以上で営業経験があることと、最終学歴が大学卒業以上であることです。東京オフィス以外の拠点を希望する場合は、普通自動車運転免許も求められます。社内基準を満たせばM&Aコンサルタントへの職種転換もできると募集要項に書かれています。
提携先から入る案件は少なくありません。ストライクは案件の発掘ルートの46%を提携先からの紹介とし、日本M&Aセンターは成約案件の6割が提携先経由だと説明しています。ただし職種転換には社内基準があるため、基準の中身と、実際に転換するまでの期間を面談で確認してください。
職務経歴書で前面に出す実績
職務経歴書では、社会人年数の長さより、募集要項の経験に当たる実績を上に置きます。経歴が長いと時系列の記載が長くなるため、経営者に近い場面と直近の開拓実績を冒頭の要約に出してください。
| 募集要項の経験 | 職務経歴書で書く項目 | 避けたい書き方 | 改善の方向 |
|---|---|---|---|
| 経営者折衝 | 相手の立場、話した論点、関係が続いた期間 | 「経営者と良好な関係を築いた」 | 後継者や事業承継の時期を話した場面を、提案の結果とあわせて書く |
| 新規開拓 | 接触から契約までの件数、期間、自分で作ったリスト | 「新規開拓に注力」 | 期間と件数を自分の実績に置き換えて書く |
| 成果連動への適応 | 目標、達成の推移、変動した報酬 | 「目標を毎年達成」とだけ書く | 未達の年にどう立て直したかも1行添える |
| 財務の基礎知識 | 決算書を使った提案、資格の学習状況 | 「財務に強い」 | どの決算書で何を読み取り、何を提案したかを書く |
| マネジメント経験 | チームの成果と、自分が担当した成果 | チームの数字だけを書く | 個人で担当した案件を分けて記載する |
法人営業の経歴なら、次のように書き換えられます。件数や期間は、自分の実績に置き換えて書いてください。
- 書き換える前:「法人営業として新規開拓に注力し、売上拡大に貢献した」
- 書き換えた後:「自分で作成したリストから中堅企業の経営者に接触し、半期ごとの面談件数と契約件数を記載。事業承継を控えた経営者との面談では、後継者と資金繰りの論点を聞き取り、提案につなげた」
書き換えた後の例は、折衝と開拓の2要素を一つの経歴で示しています。面接で深掘りされる場面を先に書いておくと、書類と面接の説明がずれません。項目ごとの書き方とNG例は、M&A仲介の職務経歴書の書き方を解説した記事で詳しく扱っています。
面接で伝える転職理由の組み立て方
転職理由は、過去の経験、M&A仲介で生きる経験、足りない経験の補い方、なぜ今動くのか、の4つに分けて組み立てると、年代に関する質問にも経験の話で答えられます。
| 伝える要素 | 伝える内容 | 避けたい言い方 |
|---|---|---|
| 過去の経験 | 経営者と向き合った場面、開拓してきた顧客 | 前職への不満から話し始める |
| M&A仲介で生きる経験 | 募集要項の必須・歓迎要件に当たる実績 | 「営業力には自信がある」だけで終える |
| 足りない経験の補い方 | 簿記2級などの学習状況、成約までの家計の準備 | 「入社してから学ぶ」とだけ答える |
| なぜ今動くのか | 担当先で承継の相談に触れた経験など、今の職務で得た動機 | 「年齢的に最後のチャンス」と年齢を理由にする |
「なぜ今か」を年齢で説明すると、話が経験から離れてしまうのが難点です。今の職務で何を見て、M&Aで何をしたいと考えたのかを、担当した場面に沿って語るほうが伝わります。
選考の流れは会社ごとに違う
面接の回数や適性検査の有無は会社ごとに異なり、公式に示されている流れは次のとおりです。
- 日本M&Aセンター:書類選考、複数回の面接、適性検査
- M&A総合研究所:面接2〜3回、SPIの筆記試験、履歴書・職務経歴書の提出
- M&Aキャピタルパートナーズ:部長面接、社長面接、会食面接の3回(応募ページには、回数が変わる可能性もあると書かれている)
- ストライク(M&Aコンサルタント):書類選考、一次面接、WEBの適性検査と最終面接
- fundbook:書類選考、一次選考、社長・役員による最終選考(面接回数が増えることもある)
MACPは応募から内定まで1ヶ月程度を想定しています。現職の繁忙期と重ならない時期に応募を始めるのも、準備の一つです。
今動くべき人・準備してから動くべき人
今応募するか準備を先にするかは、3要素のうちいくつを実績で説明できるかと、成約までの家計を試算できているかで決まります。
前述のとおり、日本M&Aセンターの中途入社者が初成約に至るまでの期間は11.7ヶ月です。ここはリメディの見解ですが、経営者折衝と新規開拓の両方を実績で語れて、この期間の家計に見通しがあるなら、応募を始めて面接で条件を確かめるほうが判断は早く進みます。どちらか一方しか説明できない場合や試算がまだの場合は、学習と家計の試算を済ませてから動くほうが、年収が下がる期間を落ち着いて迎えられます。
| 今の状態 | おすすめの動き方 | 先にやること |
|---|---|---|
| 折衝と開拓の両方を実績で説明でき、家計の試算も済んでいる | 今応募する | 応募先の採用区分と支給基準を比べて絞る |
| 経営者との折衝はあるが、自分で開拓した実績が少ない | 準備しながら応募先を広げる | 提携先の開拓職も候補に入れ、開拓の実績を書き出す |
| 開拓の実績はあるが、経営者本人と話した経験が少ない | 準備してから動く | 決裁者と話した場面を洗い出し、オーナー向けの提案経験を増やす |
| 管理職経験があり、現年収が高い | 条件を確かめてから動く | 応募する募集の必須要件と入社時の等級を確かめ、固定部分とインセンティブの内訳から現年収との差を試算する |
| 財務の基礎知識に不安がある | 学習と並行して動く | 簿記2級程度の学習を始め、職務経歴書に学習状況を書く |
| 経営者への新規開拓を主な仕事にしたくない | 別の入口を比べる | 金融機関のFAや、ストライクのM&A推進営業職のように提携先を担当する職種の要件を確認する |
仲介会社のアドバイザー職に直接応募してよいのは、経営者との折衝と開拓を自分の実績として語れ、成約までの期間を家計で支えられる人です。年収の見通しを固定給で立てたい人や、経営者への新規開拓を主な仕事にしたくない人は、報酬と案件の入り方が違う入口を先に比べたほうが、入社後のずれを小さくできます。
応募前の面談で確認したい質問
募集要項だけでは分からない条件は、面談の場で次のように聞くと確かめられます。
- 最低保証の年収などの対象期間が終わった後、年収はどの基準で決まりますか
- 中途入社した人の初成約までの期間は、配属先によってどのくらい差がありますか
- 入社時の等級は、前職での管理職経験によって変わりますか
- 担当する案件のうち、提携先から紹介される分はどのくらいの割合ですか
- 不採用だった場合、どのくらい期間を空ければ再応募できますか
日本M&Aセンターはよくある質問で、以前応募した人も再度応募できると説明しています。ほかの会社の扱いは募集要項からは読み取れないため、面談で確かめておくと安心です。
30代・40代からM&A仲介を目指す人の相談ポイント
相談が役に立つのは、募集ごとの要件や報酬条件を複数社で比べるときです。自分で進めてよいケースもあるため、次の表で分けてから決めてください。
| 自分で進めてよいケース | 相談したほうが早いケース |
|---|---|
| 応募先が1〜2社に絞れていて、募集要項の要件と自分の実績が一致している | 管理職経験をどの会社のどの募集で生かせるか判断がつかない |
| 成約までの家計を試算し、年収が下がる期間を受け入れている | 固定給・年収保証・支給基準を複数社で並べて比べたい |
| 職務経歴書で3要素の実績を場面と件数で書けている | 折衝と開拓のどちらの実績を前に出すか決められない |
| 仲介会社のアドバイザー職だけを受けると決めている | FAや提携先の開拓職も含めて入口を比べたい |
リメディはM&A仲介とコンサルティングファームへの転職支援を専門にしており、相談先の特徴はリメディの紹介ページで確認できます。
「相談したほうが早いケース」の列に当てはまる項目が一つでもあれば、下のM&A仲介領域のエージェントが相談相手の候補です。面談ではその項目から話すと、自分に合う募集や入口の比べ方に時間を割けます。
30代・40代からのM&A仲介転職でよくある質問
40代で業界未経験でも、M&A仲介に応募できますか?
応募できます。確認した5社には、いずれもM&A業務の経験を必須にしない中途募集があり、ストライクは未経験者を歓迎しています。ただしMACPの主任採用や課長〜部長採用のように、M&A仲介での成約実績などを必須にする募集もあるため、応募する募集の必須要件を確かめてください。業界経験より先に見られるのは、経営者との折衝と自分で開拓した実績です。
30代と40代で、応募前に準備する内容は変わりますか?
募集要項が求める経験は、年代によって変わりません。ただ、社会人年数が長く、管理職経験があって現年収も高い人ほど、応募前に確かめる点は増えます。応募する募集の必須要件と入社時の等級を確かめ、直近の自分自身の開拓実績の整理と、現年収との差の試算を先に済ませておきましょう。
M&A仲介に転職すると、年収は下がりますか?
下がる可能性はあります。日本M&Aセンターは前職の給与水準を考慮して給与を決めると説明していますが、固定給を一律で示す会社もあります。成約インセンティブは成約して初めて支給されるため、入社から初成約までの家計を先に試算してください。
簿記2級を持っていない状態で、応募を始めてもよいですか?
始めてかまいません。簿記の学習状況は、職務経歴書に書いて伝えられます。
仲介会社とFAは、どちらを先に受けるべきですか?
経営者への新規開拓を続けたいなら仲介会社、売手か買手の一方に立って企業評価などの工程を深めたいならFAが候補になります。両方に関心がある場合は、時期をずらさず並行して受ける方法もあります。
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