
監修者
リメディ株式会社
コワルスキー 貴幹 | KOWALSKI Takami
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンに3年間在籍。大手事業会社の戦略案件やPEファンドのデューデリジェンスを中心に担当し、面接官として国内外の新卒採用、国内の中途採用にも参画。東京オフィス及びアトランタオフィスで勤務。リメディではコンサルへの転職サポート(ケース面接対策など)に専念している。ブリガムヤング大学工学部卒業。
本記事のポイント
フェルミ推定とは?
フェルミ推定は、論理的思考能力に基づいて、一見すると予測が難しい数字を短時間で推定する手法です。主に、コンサルティングファーム、FAS、投資銀行、総合商社のような業界の採用試験で出題されることがあります。
例えば、「日本に存在するカフェの店舗数を推定してください」というような課題が出題されます。この時、国土面積や身近に存在するカフェの数など、試験時に自身が把握している情報をベースとして、推定に必要な要素を整理して推定を行います。正解があるわけではなく、どれだけ論理的に考えられるかが評価のポイントになります。
ビジネスの現場でも、経営企画や事業企画など戦略策定を行う業務の際には、必ずしも全てのデータが利用できないことがあります。新規市場への参入検討や競合分析など、完璧な情報が揃わない状況は日常的に発生します。
そのようなシチュエーションにおいて、フェルミ推定のアプローチは効果的です。概算した数字から妥当性のありそうな戦略を立案していきます。特にコンサルタントにとっては、クライアントとの初回ミーティングで市場機会を素早く見積もったり、プロジェクトの方向性を決める際の必須スキルといえるでしょう。
限られた情報から的確な判断を下す能力は、コンサル業界だけでなく、あらゆるビジネスパーソンにとって価値の高いスキルです。
フェルミ推定とケース面接の違いは?
フェルミ推定は、ビジネスケースや特殊ケースと並んでケース面接の3つの主要パターンの1つです。

ケース面接の種類 | 詳細 | 具体例 |
---|---|---|
フェルミ推定 | 特定の市場規模や個数等の計算を問う問題です。回答も重要ですが、計算のプロセスが問われている問題です。 | ・日本の病院の数は? ・日本の腕時計の市場規模は? |
ビジネスケース | 企業の戦略を問う問題が出題され、利益率改善、売上増加、M&A、新規事業開発等のテーマの問題が出題されます。 | ・自動車メーカーA社の利益改善にはどのような施策が必要だと思うか? ・大手化学メーカーA社が新規事業開発をするとすれば、どのような事業が良いか? |
異質なケース | ビジネスとは関係無いテーマの問題も稀に思考力を確認するために出題されることがあります。 | ・動物園の意義は? ・科学研究費の意義は? |
フェルミ推定の解き方は?
フェルミ推定は下記の流れで行われます。
1. お題が出題される
2. 3〜10分程度、お題について自分で考える
3. 自分の考えを元に、面接官にプレゼンテーションを行う
4. 面接官と議論しながら、考えを修正する
2.でお題について自分で考える時間が与えられますが、制限時間に対してあまり余裕がない状況が多く見られるため、しっかり対策を行うことが重要です。
フェルミ推定を行う際には、段階的に思考を広げて行くことが重要です。下記では、4段階の思考手順を示します。
1.前提条件の確認
フェルミ推定を行う際には、前提条件の確認が非常に重要です。例えば、「スーパーの売り上げを求めてください」という問題が出された場合、具体的な条件を明確にする必要があります。
「対象は日本のスーパーなのか、海外のスーパーなのか」といった条件や、「1日の売り上げなのか、年間の売り上げなのか」といった詳細な条件を定める必要があります。従って、これらの条件を相手に確認するか、自分で設定する必要があります。
2.アプローチ方法の設定
次に、数値を求めるためのアプローチ方法を設定します。 代表的な例として、人口ベースで考える(人口×利用率など)、面積ベースで考える(単位面積あたりの個数×全体面積)などがあります。したがって、様々なアプローチ方法を事前に準備しておく必要があります。
3.仮説によるモデル化
「2. アプローチ方法の設定」で立案したアプローチに基づき、具体的な仮説を立てて、モデル化します。例えば、人口ベースで考える場合、人口を年代ごとに分割し、各年代ごとの利用率などの要素を考慮してモデルを構築していきます。これにより、数値がより具体的になります。
4.計算の実行
前のステップまででモデルが完成したら、最後に計算を実行します。時間制約があるため、概算しやすい値に設定する方が良いでしょう。
フェルミ推定の計算のコツ
フェルミ推定は1~2分での回答が求められることもあります。下記の3つの計算の工夫を知っておくと本番で有利です。

市場規模計算は、大きな単位の計算になることが多いため、単位をすべて万円で揃えると計算が容易です。
例)25.6万人×0.5万円=12.8億円
万×万は、”億”です。
フェルミ推定では、同一単位に対しての掛け算が多いので、たすき掛けをして計算するのが良いです。
例)(50万人×0.6万円)+(50万人×0.8万円)+(50万人×1.2万円)+(100万人×1万円)
=50万人×(0.6万円+0.8万円+1.2万円+2×1万円)
=50万人×(4.6万円)
=230億円
人口1.2億人、世帯数5,000万世帯等、計算しやすく、違和感のない数字を仮定で置くとフェルミ推定の計算スピードが速くなります。
人口について、細かく正確な数字計算をすることは求められていません。
(人口:1億2,700万人等)
さらに説得力を増すフェルミ推定のポイント(仮定数字の置き方)
フェルミ推定では、計算をする上で数字の仮定を置きます。(例:所有率、使用金額等)その際に、根拠の無い仮定を置くと、減点対象となったり、推定の精度が下がる原因となります。
下記2つの方法で、数字の仮定に根拠を持たせるのが効果的です。

仮定数字の置き方 | 項目 | 数値 |
---|---|---|
類推パターン | 類似する事象から数字を予測するパターンです。類似する事象の数値を知っている場合に効果的です。数字の根拠付けで最も多く利用されています。 | 自動車の耐久年数の数字の仮定: 自動車業界は分からなかったとしても家電の耐久年数が10年前後と知っている場合はその数字から類推して、10年前後と考えることができる。 |
帰納パターン | 個別具体的な事象から一般的な法則を算出するパターンです。具体的な事象を知っている場合に効果的です。 | ミネラルウォーターを購入する割合の数字の仮定を置く際に、コンビニやスーパーのミネラルウォーターの売り場面積の比率から計算する。 |
フェルミ推定の例題
フェルミ推定の考え方について、「ヴァイオリンの市場規模を推定してください」という例題について、下記で解説します。
「ヴァイオリンの市場規模」に関して、まず「ヴァイオリンの販売」あるいは「レッスン・公演」なのかの前提確認をします。今回は、日本国内の「ヴァイオリンの販売における市場規模」で考えていきます。
まず、「市場が何によって一番左右されるか」を考えます。今回の場合、物販に関するお題なので「販売数量×単価」で立式できます。次に、「販売数量」と「単価」に影響を与える要素を考えていきます。
「販売数量」に着目すると、「人口」×「ヴァイオリンを弾く人の割合」×「一年に購入する人の割合」に細分化することができます。
式分解の例を下記に示します。
「販売数量 = 人口×ヴァイオリンを弾く人の割合×一年に購入する人の割合」
「単価」に着目すると、「年齢層」によって「ヴァイオリンを弾く人の区分」が変動し単価に影響を与えると考えることができそうです。
前のステップで立式した内容を基に、推定の解像度を高めるために表に情報を整理します。
ヴァイオリンを弾く人の区分 | 年齢 | 人口 | ヴァイオリンを弾く人の割合 | 単価 | 一年に購入する人の割合 |
---|---|---|---|---|---|
低価格 (習い事・趣味) | 0〜20 | 3,000万人 | 5% | 10万円 | 1/20 (20歳まで1台のヴァイオリンを使用) |
低価格 (習い事・趣味) | 21〜80 | 9,000万人 | 0% | 10万円 | 0 (購入しないと想定) |
高価格 (プロ) | 0〜20 | 3,000万人 | 0% | 100万円 | 0 (購入しないと想定) |
高価格 (プロ) | 21〜80 | 9,000万人 | 1% | 100万円 | 1/60 (60年間1台のヴァイオリンを使用) |
ヴァイオリンを弾く人の割合の推定根拠
- 低価格(習い事・趣味)セグメント:
- 0〜20歳:4人に1人が楽器をしていて、その中の5人に1人がヴァイオリンをしている
- 21〜80歳:社会人でヴァイオリンをする人が人口として少ないと想定
- 高価格(プロ)セグメント:
- 0〜20歳:学生の間でプロとしてヴァイオリンをする人が人口として少ないと想定
- 21〜80歳:20人に1人がプロの音楽家で、その中の5人に1人がヴァイオリンをしている
市場規模の計算
各セグメントの年間市場規模 = 人口 × ヴァイオリンを弾く人の割合 × 一年に購入する人の割合 × 単価
- 低価格(0〜20歳): 3,000万 × 5% × 10万円 × (1/20) = 75億円
- 低価格(21〜80歳): 9,000万 × 0% × 10万円 × 0 = 0円
- 高価格(0〜20歳): 3,000万 × 0% × 100万円 × 0 = 0円
- 高価格(21〜80歳): 9,000万 × 1% × 100万円 × (1/60) = 150億円
総市場規模 = 75億円 + 0円 + 0円 + 150億円 = 225億円
これらの計算に基づいて、ヴァイオリンの年間市場規模は225億円と推定されます。
次に、以上の回答を元に面接官とのディスカッションが行われます。ディスカッションでは面接官からの質問とフィードバックに対して議論を行い、さらにブラッシュアップしていきます。ディスカッションの様子を下記で解説していきます。
年齢をセグメントの要素として取り入れた一番大きな理由はなんですか?(面接官)
購入するヴァイオリンの価格帯が「何に」左右されるかを考えた時に、仮説として「年齢層」による営業が挙げられたからです。対象人口を絞るために「年齢層」でセグメントを分けて推定を行いました。(回答者)
他にセグメントとして考えられる要素はありますか?(面接官)
世帯年収でも分けることができたと考えます。世帯年収が一定以下の場合では、そもそも習い事ができない状況が考えられますし、世帯年収が著しく高い場合であれば、高価格帯のヴァイオリンを購入する割合も高いと考えられます。(回答者)
以上のような流れで、推定に対して面接官とやりとりを交わしていく上で、より正確な推定に近づいていきます。ディスカッションでは、何を根拠として推定を行ったかを面接官に伝えて議論を進めることが重要です。
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フェルミ推定の種類
フェルミ推定の種類には
- マクロ売上推定:市場規模を推定する
- ミクロ売上推定:1店舗の売上など、規模が小さい売上を推定する
- 個数推定系1:所有物
- 個数推定系2:非所有物
以上の4つがあります。1つずつ詳しく解説していきます。
フェルミ推定例題集①:マクロ売上推定
ここでは、「スキー場の市場規模」というお題を例にして、マクロ売上推定の考え方を解説いたします。
1. 前提条件
- 日本国内全体のスキー場の年間の売り上げ
- 現在のスキー場の数は500程度
2. 立式
スキー場の年間売上を計算する基本式は次のようになります。
- 年間売上 = 客数 × 客単価/日 × 年間営業日数
この基本式をさらに詳細に分解すると、より精密な計算が可能になります。客数は複数の要因から推定できます。具体的には、地域人口にスキーをする年齢層の割合、スキーに使える可処分所得がある人の割合、そしてスキーを趣味とする人の割合を掛け合わせることで算出します。これを式で表すと以下のようになります。
- 客数 = 地域人口 × スキー年齢層割合 × 可処分所得割合 × スキー趣味割合
次に、客単価は主に3つの要素から構成されます。リフト券代、スキー場内での飲食代、そしてスキー用品のレンタル代です。これらを合計することで、1日あたりの平均客単価が得られます。
- 客単価/日 = リフト券代 + 飲食代 + レンタル用品代
3. モデル化
日本のスキー場市場規模を推計するにあたり、ユーザーをライトユーザーとヘビーユーザーの2つのグループに分類します。基本的な計算式は、市場規模 = ユーザー数 × 一人当たりの支出 × 年間利用回数 です。
区分 | 地域人口 | スキー年齢割合 | 可処分所得 | スキー趣味割合 | リフト券代 | 飲食代 | レンタル代 | 日数/年 | ユーザー数 | 一人当たり支出 | 年間市場規模 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ライトユーザー | 1億2千万人 | 50% (20~60歳) | 50% (所得上位50%層) | 10% | 0.5万円 | 0.5万円 | 1万円 | 1 | 300万人 | 2万円 | 600億円 |
ヘビーユーザー | 1億2千万人 | 50% (20~60歳) | 50% (所得上位50%層) | 5% | 0.5万円 | 0.5万円 | 0円 (所有) | 5 | 150万人 | 1万円 | 750億円 |
まず、ライトユーザーの市場規模を計算します。ユーザー数は、日本の人口1億2千万人に対して、スキー年齢比率50%、可処分所得比率50%、スキー割合10%を適用し、1億2千万 × 0.5 × 0.5 × 0.1 = 300万人と算出されます。
一人当たりの支出は、リフト代0.5万円、飲食代0.5万円、レンタル代1万円の合計2万円です。年間利用回数は1回とします。したがって、ライトユーザーの市場規模は、300万人 × 2万円 × 1回 = 600億円となります。
次に、ヘビーユーザーの市場規模を計算します。ユーザー数は同様の方法で算出しますが、スキー割合が5%となるため、1億2千万 × 0.5 × 0.5 × 0.05 = 150万人です。
一人当たりの支出は、リフト代0.5万円、飲食代0.5万円の合計1万円で、レンタルは利用しないと仮定します。年間利用回数は5回とします。よって、ヘビーユーザーの市場規模は、150万人 × 1万円 × 5回 = 750億円となります。
ライトユーザーとヘビーユーザーの市場規模を合計すると、600億円 + 750億円 = 1,350億円となり、これが日本のスキー場の推定市場規模となります。

自習でこのような結果ができたあとは、実際の市場規模を検索して比較すると良いでしょう。スキー場の場合はGoogle検索で500〜1,000億円という結果が出てきますので、推定値としては大きく外れていないことが確認できます。
弊社のYouTubeチャンネルでは元戦略コンサルタントの面接官が実際にフェルミ推定やビジネスケースに取り組む動画を投稿しておりますので、FAS業界への転職をお考えの方はぜひご覧ください。
ケース面接対策の詳細が気になる方はこちらの記事をご覧ください


フェルミ推定例題集②:ミクロ売上推定
ここでは、「新宿にあるサイゼリヤの平日1日の売上額」というお題を例にして、ミクロ売上推定の考え方を解説いたします。
1. 前提条件
- コロナ禍の影響は加味しない
- 営業時間は11時〜22時とする
2. 立式
新宿にあるサイゼリヤの平日1日の売上額を推定するにあたり、基本的な計算式は以下のようになります。
- 売上額 = 席数 × 1席の収容人数 × 稼働率 × 1時間あたりの回転数 × 営業時間 × 客単価
3. モデル化
この基本式をさらに詳細に分解し、時間帯ごとの特性を考慮することで、より精密な計算が可能になります。営業時間を4つの時間帯に分け、それぞれの特徴を反映させた計算式は、各時間帯の売上 = 席数 × 1席の収容人数 × 稼働率 × 1時間あたりの回転数 × 営業時間 × 客単価です。
時間帯 | 席数 | 1席の収容人数 | 稼働率 | 1時間あたりの回転数 | 営業時間 | 客単価 | 売上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11:00〜14:00 (ランチタイム) | 20 | 4 | 30% | 1 | 3 | 1,500円 | 108,000円 |
14:00〜17:00 (午後の閑散時間) | 20 | 4 | 10% | 1 | 3 | 1,000円 | 24,000円 |
17:00〜21:00 (ディナータイム) | 20 | 4 | 40% | 2/3 | 4 | 2,000円 | 170,666円 |
21:00〜23:00 (夜の閑散時間) | 20 | 4 | 20% | 2/3 | 2 | 1,000円 | 21,333円 |
まず、ランチタイム(11:00〜14:00)の売上を計算します。テーブル数20、回転数4、稼働率30%、グループサイズ1人、営業日数3日、客単価1,500円を適用し、20 × 4 × 0.30 × 1 × 3 × 1,500 = 108,000円と算出されます。
次に、午後の閑散時間(14:00〜17:00)の売上を計算します。テーブル数20、回転数4、稼働率10%、グループサイズ1人、営業日数3日、客単価1,000円を適用し、20 × 4 × 0.10 × 1 × 3 × 1,000 = 24,000円となります。
ディナータイム(17:00〜21:00)の売上を計算します。テーブル数20、回転数4、稼働率40%、グループサイズ2/3人、営業日数4日、客単価2,000円を適用し、20 × 4 × 0.40 × (2/3) × 4 × 2,000 = 170,666円と算出されます。
最後に、夜の閑散時間(21:00〜23:00)の売上を計算します。テーブル数20、回転数4、稼働率20%、グループサイズ2/3人、営業日数2日、客単価1,000円を適用し、20 × 4 × 0.20 × (2/3) × 2 × 1,000 = 21,333円となります。
総売上 = 108,000円 + 24,000円 + 170,666円 + 21,333円 = 323,999円となるため、新宿にあるサイゼリヤ1日の総売上は323,999円と推定されます。
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フェルミ推定例題集③:個数推定系1
ここでは、「日本にテレビは何個あるか」というお題を例にして、個数推定の考え方を解説いたします。
1. 前提条件
日本に存在するテレビの総数を推定する際、構造的には、
- 誰か(世帯や企業)が所有しているもの
- 家電量販店に陳列されているもの
- 製造工場に保管されているもの
に分類できます。しかし、制限時間内で全要素を詳細に推定することは困難です。そのため、最も大きな割合を占めると考えられる「誰か(世帯や企業)の所有物」に焦点を絞って推定を行うことが効果的です。このアプローチにより、日本国内のテレビ総数の大部分をカバーしつつ、より正確な推定が可能になります。
2. 立式
世帯・企業の所有するテレビの数であれば、世帯・企業数と台数の2つから立式できると考えられます。基本的な計算式は以下のようになります。
- 「(世帯数+企業数)× 所有台数」
3. モデル化
例題として、世帯の方だけ計算します。日本の平均世帯人数を3人とすると、日本の世帯数は「1億2,000万人÷3人」で求められて4,000万世帯となります。次に世帯数1〜5人で分け世帯数と所有台数を仮定します。
世帯人数 | 世帯数 | 所有台数/世帯 | 総所有台数 |
---|---|---|---|
1人世帯 | 1,000万 | 1台 | 1,000万台 |
2人世帯 | 1,000万 | 1台 | 1,000万台 |
3人世帯 | 1,000万 | 1.5台 | 1,500万台 |
4人世帯 | 500万 | 2台 | 1,000万台 |
5人世帯以上 | 500万 | 2.5台 | 1,250万台 |
1人世帯は1,000万世帯と仮定し、各世帯が平均1台のテレビを所有すると仮定します。計算式は「1,000万世帯 × 1台/世帯 = 1,000万台」となります。
2人世帯も1,000万世帯と仮定し、各世帯が平均1台のテレビを所有すると仮定します。計算式は「1,000万世帯 × 1台/世帯 = 1,000万台」となります
3人世帯は1,000万世帯と仮定し、各世帯が平均1.5台のテレビを所有すると仮定します。計算式は「1,000万世帯 × 1.5台/世帯 = 1500万台」となります。
4人世帯は500万世帯と仮定し、各世帯が平均2台のテレビを所有すると仮定します。計算式は「500万世帯 × 2台/世帯 = 1,000万台」となります。
5人世帯も500万世帯と仮定し、各世帯が平均2.5台のテレビを所有すると仮定します。計算式は「500万世帯 × 2.5台/世帯 = 1,250万台」となります。
以上のようにセグメントに分けて計算すると、日本全体でのテレビ総所有台数の計算式は「1,000万台 + 1,000万台 + 1,500万台 + 1,000万台 + 1,250万台 = 5,750万台」と推定されます。
フェルミ推定例題集④:個数推定系2
ここでは、「日本にコンビニはいくつあるか」というお題を例にして、個数推定の考え方を解説いたします。
1. 前提条件
- 今回は20〇〇年の日本のコンビニの数
2. 立式
非所有物系の推定では、「面積ベース」と「需要÷供給」の2つの立式アプローチが挙げられます。
「面積ベース」の立式では、求めたい物体1つが、平均どれくらいの面積間隔に存在するか予測を立て、日本の面積をその予測を立てた面積で割る、といった方法です。「需要÷供給」の立式では需要と供給量が推定しやすい場合に使用されます。
今回はコンビニの数なので、需要と供給量が推定しやすいと考えられるため、「需要÷供給」による立式を考えていきます。式分解の例を下記に示します。
- 「日本全国のコンビニののべ来客数÷1店舗あたりのコンビニの来客数」
3. モデル化
上述した式の中で、日本全国のコンビニの来客数は「人口×コンビニに行く頻度」で求めることができます。今回は月に何回コンビニに行くかという観点で進めていきます。月にコンビニに行く回数は年代別で分けることができると考えられるので、以下のように表にまとめることができます。
年代 | 頻度/月 | 人口 | のべ来客数 |
---|---|---|---|
〜10代 | 1回 | 1,200万人 | 0.12億 |
10代 | 12回 | 1,200万人 | 1.44億 |
20〜50代 | 20回 | 6,000万人 | 12億 |
60代 | 12回 | 1,200万人 | 1.44億 |
70代〜 | 4回 | 1,200万人 | 0.48億 |
- 全国の月間来客数合計 = 0.12億 + 1.44億 + 12億 + 1.44億 + 0.48億 = 15.4億人
また、1店舗あたりのコンビニの来客数は、「レジの台数×稼働率×回転数/時間×営業時間×営業日数」で求めることができ、以下のように表にまとめることができます。
項目 | 値 |
---|---|
レジの台数 | 3台 |
稼働率 | 40% |
回転数/時間 | 30(2分に1回) |
営業時間 | 24時間 |
営業日数 | 30日 |
- 1店舗あたりの月間来客数 = 3 × 0.4 × 30 × 24 × 30 = 25,900人 (四捨五入)
以上より、日本全国のコンビニの数は、全国の月間来客数合計 ÷ 1店舗あたりの月間来客数= 15.4億 ÷ 25,900 = 約59,000店舗と推定できます。



数値を表現する際は、過度に正確な数字にこだわるよりも、概算値を使うことをおすすめします。例えば「59,459」という具体的な数字ではなく、「約6万」や「約59,000」といった表現を使うのが効果的です。正確さと伝わりやすさ、スピードのバランスを考えて、適切な数値表現を選ぶようにしましょう。
現役コンサルタントに選ばれる
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企業選考でのフェルミ推定の出題例
大手口コミサイトの口コミをもとに、実際の企業の選考で出題された例題をご紹介します。
企業選考でのフェルミ推定の出題例①:デロイトトーマツコンサルティング
この課題では、レンタカー業界およびカーシェアリングサービスの市場規模を概算することが目的です。厳密な数値を出すことよりも、推論プロセスを展開することに重点が置かれています。
デロイトトーマツコンサルティングの年収情報の詳細が気になる方はこちらの記事もご覧ください


企業選考でのフェルミ推定の出題例②:PwCコンサルティング
この課題では、例えば国の総人口、自動車普及率、一般的な車両の入れ替えサイクルなどの情報を活用し、年間の中古車取引量を割り出します。
PwCコンサルティングの年収情報の詳細が気になる方はこちらの記事もご覧ください


企業選考でのフェルミ推定の出題例③:EYストラテジー・アンド・コンサルティング
この課題では、一店舗のコンビニエンスストアで1日に販売される飲料水の本数を推定します。
店舗の位置、顧客層、1日の来店者数などの要因を考慮しながら、概算値を導き出していきます。この推定プロセスを通じて、市場動向や消費者行動に関する洞察を得ることも期待されます。
この課題では、ディズニーランドの年間来園者数、ポップコーン購入率、営業日数などの要素を考慮し、ポップコーンの年間販売個数を推定します。来園者をアトラクション利用者と非利用者に分類し、さらに面積基準と人数基準の二つのアプローチを組み合わせることで、より精度の高い推計を目指します。
EYストラテジー・アンド・コンサルティングの年収情報の詳細が気になる方はこちらの記事もご覧ください


弊社のYouTubeチャンネルでは、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)の魅力を徹底解説した動画を投稿しております。EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)について詳細を知りたい方、転職をお考えの方はぜひご覧ください。
企業選考でのフェルミ推定の出題例④:KPMGコンサルティング
この課題では、国内旅行の市場規模を推定します。まず、国内旅行者数、旅行の平均回数、旅行の平均費用などの要素を考慮します。さらに、旅行者をビジネス目的とレジャー目的に分類し、地域ごとの観光資源や宿泊施設のキャパシティを考慮したアプローチを組み合わせることで、より精度の高い推計を目指します。
この課題では、ナイキのスポーツシューズの国内市場規模を推定します。市場規模を推定するために、国内のスポーツシューズの年間販売数、ナイキの市場シェア、平均単価などの要素を考慮します。さらに、都市部と地方の購買力の違いや、スポーツイベントの影響を考慮に入れることで、より精度の高い推計を目指します。
KPMGコンサルティングの年収情報の詳細が気になる方はこちらの記事もご覧ください


企業選考でのフェルミ推定の出題例⑤:アクセンチュア
この課題では、スマートウォッチ業界の市場規模を概算することが目的です。厳密な数値を出すことよりも、推論プロセスを展開することに重点が置かれています。フェルミ推定の手法を用いて、合理的な仮定と段階的な計算を行い、市場の大きさを推測します。
アクセンチュアの年収情報の詳細が気になる方はこちらの記事もご覧ください


弊社のYouTubeチャンネルでは、アクセンチュアの魅力を徹底解説を解説した動画を投稿しております。コンサル業界への転職をお考えの方はぜひご覧ください。アクセンチュアについて詳細を知りたい方、転職をお考えの方はぜひご覧ください。
企業選考でのフェルミ推定の出題例⑥:ベイカレント・コンサルティング
本課題では、全国の人口、花屋の普及率、年間の花の購入頻度などの要素を考慮し、花屋の市場規模を推定します。人口を都市部と地方部に分類し、さらに世帯数基準と購入頻度基準の二つのアプローチを組み合わせることで、より精度の高い推計を目指します
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フェルミ推定で覚えておくべき数字


面接や現場ではゆっくりと考える時間がないため、事前に有名な数値を覚えておく必要があります。最後に、フェルミ推定を行うにあたり、覚えておくべき基本的な情報を下記に示します。
項目 | 数値 |
---|---|
日本のGDP | 600兆円 |
日本の人口 | 1.2億人 |
東京の人口 | 1,400万人 |
日本の平均年収 | 約500万円 |
日本人の平均寿命 | 80歳(計算を簡単化するためにキリの良い 数値に設定) |
世帯数 | 5,000万世帯 |
独身世帯数 | 1,500万世帯 |
家族世帯数 | 3,500万世帯 |
平均世帯人数 | 2.5人 |
日本の国土面積 | 38万平方キロメートル |
東京の面積 | 3,200平方キロメートル |
大企業の数 | 1.1万社 |
中企業の数 | 55万社 |
小企業の数 | 330万社 |
小学校の数 | 20,000校 |
中学校の数 | 10,000校 |
高校の数 | 5,000校 |
大学の数 | 750校 |
フェルミ推定で求められる場合分け


フェルミ推定では、場合分けが非常に重要です。
- 適切な場合分けをすると、推定の合理性や正確性が増すこと
- 自身の計算力に応じて、場合分けの粒度を調整することで、確実に回答できること
から、頻出の場合分けについては、覚えることが非常に有効です。
場合分け | 内容 | 利用場面例 | 使用頻度 |
---|---|---|---|
年収 | ジュエリー等の高価格帯の消費財の計算では年収で場合分けを行う。 | ジュエリー、高級自動車、ブランド品等の趣向品等 | 高 |
地域 | 地域(特に都会と田舎)によって、推定に大きな差が出るサービス、消費財等で使用する。 | タクシーの数、コンビニの数、自動車利用率等 | 高 |
性別 | 男女で利用率が大きく異なるサービス、消費財の際に利用する。 | 化粧品、ラーメン、エナジードリンク、ゴルフ等 | 中 |
年齢 | 年齢によって利用率、使用金額が大きく異なるサービスや、消費財等に利用する。 | 漫画、アミューズメントパーク、医療費等 | 高 |
ヘビー/ライト | ユーザーに毎に利用頻度、使用額が大きく異なるサービス、消費財等に利用する。 | アウトドア製品、ゲーム、旅行、スポーツ等 | 高 |
時間 | 時間帯、曜日によって利用率が大きく異なるサービス、商品等に利用する。 | タクシー、電車、飲食店等 | 中 |
単身/家族 | 独身か家庭かによって使用額、利用量が大きく異なるサービス、商品等に利用する。 | 電球、冷蔵庫、キッチン用品等 | 中 |
コンサル業界への転職を成功させるためには
コンサルティング業界へ転職を成功させるには、上記で解説したような面接以外にも様々な対策を行う必要があります。そのため、どれだけ現職で優秀な成果を収められていたとしても、企業理解、業界理解、そして選考準備をせず内定を獲得することは厳しいでしょう。
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